元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
親と子
2021/10/27(水)
皆様、こんにちは!最近はなかなか外出をすることも無くなりましたが、緊急事態宣言等の解除により、人が少ない時間帯を狙って久しぶりにラーメン屋へと行ってきました。騎手をやっていた時はラーメンなんて食べたら体重が!と心配していた反動か、今ではインスタントも含め、ラーメンが大好きになってしまいました。
行ったのは栗東トレセンの近くにある豚人㊥(なかまる)というお店で、色々なとんこつラーメンが楽しめるお店です。久しぶりでしたが本当に美味しかったですよ。お店は替玉が無料なんですが、毎回ひとつしか食べられないので、なぜか損した気持ちになりながら今回も帰ってきました(笑)。栗東に来られることがあれば是非!
それでは競馬の話をしましょう。先週は阪神競馬場で菊花賞が行われました。まさにドラマを超えたドラマがそこにはありました。同日に菊沢調教師の息子、一樹君騎乗で200勝を飾り、義理家族の横山家が何かやってくれるかもしれないとふと思っていました。1番人気には前哨戦で素晴らしい走りを見せたステラヴェローチェ、そしてレッドジェネシスが続く形となりました。40数年ぶりとなる京都ではなく阪神での開催ということもあり、どのようなレースが行われるか楽しみにしていました。
スタート後、期待していたモンテディオと横山和君にテレビの前から「ここが勝負だ!びびらずに行ったほうがいい!」と言ったタイミングで、内から弟の武史君とタイトルホルダーが腹をくくり飛び出していきました。これはと思わされながら観ていたのですが、非常に良いラップで刻んでいっているのが分かりました。タイトルホルダーの逃げ切りもあるぞと思いながら迎えた4コーナー。抜群の手応えで引き離しにかかると、外からオーソクレース、ステラヴェローチェが迫る中、5馬身の差をつけて勝利を挙げました。圧巻のパフォーマンスに観ていた全員が脅かされましたね。
逃げさせたら本当に強いなと思えるレースで、戦術の幅は狭まったかもしれませんが今後も結果を出してくれると思います。この勝利で管理する栗田徹調教師は初のJRA G1勝利となりました。義父の厩舎で管理されたタイトルホルダーの母メーヴェから受け継がれたバトンを結果に結びつけることができました。そして、タイトルホルダーの父ドゥラメンテにとっては産駒の初G1制覇ともなりました。現役時代に2冠を制し、故障。菊花賞を走ることができず、無念の中で種馬になり、今年亡くなった彼の思いを、見事に息子が忘れ物を届けてくれた勝利だったと思います。
ましてや2着にはドゥラメンテの引退レースとなった宝塚記念で負けたマリアライトの子オーソクレースだったというのも感動です。父の無念を、雪辱を息子が果たしたのです。そして、勝利した武史君が生まれた年に典ちゃんがセイウンスカイで逃げ切ったレースがフラッシュバックしました。息子が自分をリスペクトしたようなレースで結果を出し、父としても嬉しかったと思います。1鞍乗りで阪神にいたのもどこか必然に感じた、家族の絆の強さが生んだ勝利でした。
2021年クラシックレースが終了しました。こうなると今週からは古馬との混合戦になります。その中で早速、最強馬決定戦のひとつである天皇賞(秋)が行われます。注目は何と言ってもグランアレグリア、3冠馬コントレイル、今年の皐月賞馬エフフォーリアの対決になるのではないでしょうか。奇しくも菊花賞上位3頭の騎手ということもありますね。
本当に楽しみな戦いになりますが、グランアレグリアにとっては距離が少し長いのかなという気持ちもあります。ルメールのことですから必ず5着以内には来るでしょうけどね。この3強に割って入りたいのは相手なりに走ってくるカレンブーケドールやポタジェ、ヒシイグアスになると思います。眞子様の結婚やヤクルト優勝のどこかにサインが潜んでいる気がする天皇賞(秋)。今年はどんな感動があるのか、日曜日の東京競馬場で会いましょう!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。