元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
新たな伝説のスタート
2022/2/9(水)
皆様、こんにちは!冬季オリンピックが始まりましたね。いつの間に?という印象でスタートしましたが始まれば楽しみが沢山になり本当に毎日楽しんでいます。その中のスキージャンプではチーム戦で行う試合があったのですが、高梨沙羅選手がスーツの規定違反で反則となり日本は4位で終了しました。152cmの小さな体で、ここまで日本をけん引してきた彼女の「私のせいで台無しにした」という言葉には涙を流しました。それだけ大きなものを背負い、戦ってくれているのだと改めて感謝を感じました。
ルールはルールなので今回ばかりはどうしようもありませんが、このスポーツを純粋に楽しむためには、規定があるのであれば飛ぶ前に確認し、みんな記録で勝負することを望みます。競馬でも騎手は前検量という鞍を合わせた斤量を乗る前に計り、鞍なしの体の重さだけでも計ります。乗る前には再度体のみを計り、ゴール後には鞍と合わせた斤量を確認します。それだけに、スキージャンプも前検量制度を入れればこのような疑惑は無くなるのではと思います。
それでは競馬の話をしましょう。先週の東京新聞杯では圧巻の走りでイルーシヴパンサーが勝利しました。内容や4連勝の中身といい、これは新たな伝説の始まりになるのではないかと思わされるほどの走りでした。騎乗した田辺君がこの馬のことを理解して馬が走りたいように走らせていること、さらに仕掛けるタイミングを馬自身が理解していることは今後が楽しみになるポイントです。これから更に強い相手とやっていくことになりますが、仕掛けのタイミングを急かさないようにしていけばG1制覇も夢ではない走りでした。
2着にはファインルージュが入りましたね。増加した体重は成長分でしょうし、次は更に良くなる気がしました。しかし、あまりにもイルーシヴパンサーの走りが圧巻だったことから目標はヴィクトリアマイルになるのかな?と思わされました。3着には仕上がりが抜群だったカラテが入りました。先の2頭のような強い相手がいた中でよく走ってくれたという印象を受けました。しかし、G1では少し厳しいのかな?とも感じたので、今後のレース選びは慎重に確実にやってもらいたいです。
今年に入って1番人気馬が重賞ではまだ勝っていません。オリンピックでもスキージャンプの小林選手以外は1番人気がことごとく負けていることからも、今はそういう時期なのかな?と感じています。しかし、それを打ち破りたいのが今週開幕する阪神競馬場で行われる京都記念に出馬してくるユーバーレーベンではないでしょうか。今回のメンバーでは実績が1枚も2枚も上にいるだけに、ここで負けるわけにはいかないだろうと思っています。調教師からは「今までで一番良い」というコメントも出ているだけに、期待されているのでしょう。
ここに待ったをかけたいのが少しずつ力をつけてきたジェラルディーナ。怪物女王ジェンティルドンナの娘が53キロと開幕馬場をどこまで味方につけられるかですが、1本取ってもらいたい気持ちもあります。その他にも侮れないサンレイポケットやこの距離ベストのレッドジェネシスらがいます。楽勝まで考えられるユーバーレーベンに一矢報いる馬が出てくるのか楽しみなレースになります。阪神競馬場にはお客様が騎手の検量を見ることができる場所も用意されていますので、前検量なども見ながら競馬を楽しんでくださいね!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。