元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
積み上げてきたもの
2022/2/24(木)
皆様、こんにちは!楽しませてもらった冬季オリンピックが閉会しました。沢山の感動を見せてもらい、本当に素晴らしかったなと思っています。見る側からすればたった数日の出来事ですが、彼らにとっては幼少期から長年の月日を努力で積み重ね、掴んだ舞台での数日ですから重みも感動も出ている方は想像を絶するものでしょう。
競馬もそうです。見る側からすれば、1レースが全てになりがち。しかし、そこまで辿り着くために毎朝真っ暗な中からスタッフが調教を考え、作り上げてきます。そこに騎手が乗り、オリンピックのような舞台で走らせてもらいます。そこまでには多くの課題や挑戦があり、それを試合で試す。そうして重賞など大舞台の勝利へと繋がっていくのです。競馬好きの皆様もそんな過程を楽しんでもらえたらと思います。
さて、G1の話に行く前に、幼少期から馬と歩み、乗馬を習い、期待されてデビューし、積み重ねた勝利はすでに200を超えていた岩田望来君が初めての重賞制覇を京都牝馬Sで成し遂げました。不思議と重賞には手が届かずでしたが、幼少期から磨いた腕は確かで、その上で藤原先生に基本を常に教えられ、競馬でも学び、とうとうロータスランドで制覇しました。
レースは1コーナーで外から来る川田君を見ても動じず、最高のポジションを取りました。少し緩くなった馬場も味方し、直線では着差以上に余裕があったという勝利でした。焦らずとも重賞制覇は近いと思っていましたが、本人からすれば幼少期からトップへ行くためのポイントとして置いていたでしょうし、これで次のステップへと進めるという安堵感も出たと思います。更なる成長へと繋げてくれる勝利になったと思います。
日曜日には2022年最初のG1フェブラリーSが行われ見事カフェファラオが連覇を達成しました。レース前は内枠となった場合、スタートが決まらなければ勝つことはないと思っていました。しかし、新しく迎えた鞍上の福永君はスタートを見事に決め、内枠からキックバックが来ない位置へと誘導しました。この時点で最高の仕事をしたと思いますし1コーナーまでで決めたレースといっても過言ではないほど巧みでした。ケガを乗り越え、沢山の経験をして今まで積み上げた全てがここに詰まっていたような技術でした。
レースはインティの逃げが予想されていましたが、スタートで後手を踏んだことによりサンライズホープが行く形となりました。2番手にはソダシ、外にテイエムサウスダンがつけました。この時、テイエムサウスダンの岩田康君はインティが行けないことを見るとすぐさまスローになる展開を読み解き、馬を迷いなく動かしハナを奪いました。この判断力をG1で迷いなく実行できたのは岩田君のセンスであり、調教にずっと関わることでこそできる信頼感だったと思います。
一流騎手がここまで関わりながら馬を作り上げることは本当にレースで必要なものを積み重ねてきた結果だと思いました。だからこその2着で素晴らしい騎乗でした。勿論、陣営からすれば勝ちたかったでしょうが、それでも素晴らしいと私は思います。岩田康君・岩田望君が横山親子に負けない活躍を見せてくれた嬉しい週にもなりました。
今週から東京開催が中山に替わり、中山・阪神・小倉の開催となります。ルメール、松山、坂井騎手はサウジアラビア遠征のため不在になりますから乗り替わりがどうなるかも注目してみたいと思います。そんな中、中山では中山記念、阪神では阪急杯が行われます。1800mと1400mのG1がない日本ですが、特に今回の中山記念はG1にしても面白いと思うくらいのレースです。
その中でも注目は川田君とのコンビ、ダノンザキッドになります。前走のマイルCSで才能を見せつけてくれた1頭で、ここで圧巻のパフォーマンスを見せてくれた上で次のG1でも期待したいくらいです。アドマイヤハダルももう一皮剥けたいレースとなるでしょうし、中山といえばマルターズディオサも侮れません。私としては藤沢和調教師オーラスのゴーフォザサミットを応援したいと思います。名伯楽達の引退週。最後の雄姿を皆様の目に刻んでください!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。