元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
馬と会話のできる男
2022/3/24(木)
皆様、こんにちは!季節外れの雪が降ったりと不思議な天気になっている最近ですが、桜の開花予想が発表されましたね。栗東トレセンに向かうシンザン像の前にも桜が咲き誇り、毎年そこの景色を見るのが楽しみになっています。昔は厩舎で花見やBBQなどが行われ、きれいな景色と美味しそうな匂いがセットだったんですが、コロナもありそういったものは無くなってきてるんでしょうね。新時代になり色々なことが変化してきましたが、厩舎メンバーで「あーだこーだ」と言いながら食べるお肉の味を懐かしく感じました。
先週は3日間開催となり沢山の注目レースが行われました。その中でも岩田康君のインタビューが話題になっていましたね。競馬はお客様あってのものであり、それを伝えるのも騎手の仕事となっています。少しでも分かりやすく話をするように騎手も心がけますが、インタビューをする人によっては何を聞いているんだ!?となることがあります。まさに今回の若葉Sで「権利を獲れましたね!」を一言目に持ってこられたのは、腹が立つ気持ちもわかります。厩舎や騎手、関係するみんなが朝から調教し、どんなに寒くても馬の体を洗い、ケアをして勝つための準備をしてきます。勝利するために全力を注ぐんです。負けるためにレースに出す陣営はいません。
権利が目的だったような質問は、日ごろから厩舎を手伝い、調教に跨っている岩田康君だからこそ、勝つためにやっているチームに対して腹が立ったのだと思います。インタビューの後には謝罪もしたようですが、レース後すぐには騎手も興奮状態ですから、あの対応もわかります。勿論、対応が正しかったとは思いませんが気持ちも理解できました。その次の日にもスプリングSを勝利し、改めて謝罪をした岩田康君。どこまでも真っすぐな男だなと思ってしまいました。まさに先週書いた馬の気持ちを理解し、会話をしながらの騎乗は非常に素晴らしかったです。
そして、阪神大賞典ではディープボンドが圧勝と呼べる走りで勝利しました。着差としてはそこまでついていないように見えましたが、4コーナーからマクるように走れたのは安心感がありました。今回の走りを見て、今から天皇賞(春)では本命印を打って良いなと思えましたね。2着にはアイアンバローズが入りました。やっと本格化してきたかなというタイミングで、この距離も合っていましたね。先週推奨した2頭が結果を出してくれて良かったです。和田竜君のG1制覇にも期待して本番を待ちたいと思います。諦めずに過去の成績をハナにかけることなく追い続ける彼に勝利が訪れることを願っています。
今週は再度3場開催となります。その他ドバイワールドカップデイということもあり、大盛り上がりになるのではないでしょうか。その中でも注目は何といっても高松宮記念になるでしょうね。土曜日が雨予報だけに、下が荒れることは確定と考えて私の穴本命はロータスランドにしたいと思っています。重賞制覇からリーディング2位まで登りつめてきた岩田望君の一気のG1制覇があり得るのではないでしょうか。
その他にもグレナディアガーズは力通りに走ることができればと思いますし、武史君が乗るレシステンシアも楽しみです。そして、勝負強い謙一君とメイケイエールが今回はどんな走りをするのか、ここが大きなポイントになりそうです。ドバイに高松宮記念と桜満開の前にG1満開の今週。しっかりと当てて、笑顔満開になるように楽しみましょう!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。