元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
手前みそと戦略家・丸田
2022/3/31(木)
皆様、こんにちは!先週はドバイに高松宮記念と多くのG1や重賞レースが組まれていました。ドバイでは日本馬が5つの重賞を制覇するという結果に大興奮で眠れなくなりました。特に我が家の長男(全史)が調教をつけているクラウンプライドのUAEダービー勝利には家で大きな声で応援すると共に涙が止まらなくなりました。手前みそで申し訳ございませんが、本当に息子も良くやったなと思いました。
彼にとっては、ドバイへの参戦はヴィクトワールピサ以来でした。角居先生が引退し、新谷先生と馬を作っていきたいと新しい厩舎で挑戦を始めました。今までとの違いは多くあると思います。その中で自分自身が得た経験を活かしながら、松田メソッドを彼なりに作りあげてきた成果だと思いました。馬の作り方、関わり方、考え方と祖父から引き継がれた技術が世界で結果を出してくれたことで、間違えてなかったんだと証明された気がしました。
特に1コーナーの入り方で、引くか出すかのタイミングでレーンは出すことを選びました。そこでクラウンプライドがスっと反応しハミも噛まずにポジションを取れた時、いい調教をしている!と感じ勝利を確信しました。異国でもこういったことを教えながら仕上げてきた技術は息子ながら本当に素晴らしいなと思えました。勿論、沢山の関係者の皆様の努力の結果ですが、今回ばかりは息子を褒めさせてください。その他にも素晴らしいレースが沢山で勇気を貰えました。
さて、親バカを見せてしまった後ですが、日本でもG1レース高松宮記念が行われ、丸田君とナランフレグが勝利しました。レース前に次男がふらっと横で「ナランフレグ絞って仕上げてきてるから、ここで結果出すよ。丸ちゃんの教えてきたことずっと見てる。水分量と中京のエアレーションの関係から馬場は緩いからロータスランドもくるで」と言ってきました。その時は見る目がないなと聞き流していたのですが、こちらの見る目がなかったと思うほどドンピシャの結果にビックリしました。
やはり単発のレースを見るのではなく、線としてどういう経緯で競馬を教え、本番までを迎えることがいかに大事かと再度考えさせられました。特にナランフレグの4コーナーでの手応えを見た時、これは外か内か悩むなというポイントがありました。しかし、そこで丸田君は迷わず内を選択しました。外を回せば差し切れず善戦で終わってしまう。だからこそ勝つための賭けに出ました。ジャンダルムと荻野極君が左ムチを打つことを確認しトゥラヴェスーラに入られるもこじ開け、師匠への最高の恩返しの勝利を挙げました。
丸田君にとっても宗像先生にとっても初のG1勝利は格別のものだったと思います。いつもいつも丸田君はどうにか勝てそうなレースを狙い、平場の人気のない馬でも挑戦を繰り返しています。なかなか勝ち星を上げられず悩むこともあると思います。しかし、彼ほど競馬と向き合い、レースでも常に挑戦と仮説を作りながら実行している騎手はいないのではというほど真面目と聞いています。そんな彼が掴んだ挑戦の結果は見ているこちらも嬉しくなりました。
今週は阪神競馬場で大阪杯が行われます。なんといっても大本命はエフフォーリアになります。盤石のレース運びで王者の圧巻的な走りを期待しつつ、大阪杯は天候も含め荒れることも予想されるだけに、挑戦者ジャックドールの走りが気になってしまいます。絶対王者と超新星、そこに昨年王者レイパパレがどこまで食らいつくのか、ウインマリリンも調子を上げていれば見逃せない一頭だと思っています。さぁ、今週も感動を味わいましょう!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。