元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
星座決着
2022/5/12(木)
皆様、こんにちは!芸能界では悲しい出来事が続き、非常にショックを受けています。特にダチョウ倶楽部の上島竜兵さんの死は、衝撃が走りました。もう「やー」や「くるりんぱ」といった伝統芸に近いギャグが見れないのかと思うと寂しくて仕方ありません。心よりお悔やみ申し上げます。
気を引き締めて競馬の話をしていきましょう。まずは、アメリカで行われたケンタッキーダービー。スポーツの中でもっとも偉大な2分間、クラウンプライドは13着。今回はドバイから直接アメリカへと息子が帯同していきましたが残念な結果となりました。しかし、負けたとはいえ、すごく感動しました。特に1コーナーの入り方を見た時には武者震いがおきました。息子としてもアメリカのダートは1コーナーまでの入り方が非常に重要になると思っていたはず。それをアメリカで教え込んできたんだなとすぐにレースを観て感じました。
スタート、1コーナーの入り方、そして日本馬が2番手を楽に回るシーンは感動すらありました。道中はハイペースのレースとなり、内から馬が出てきたところで息が入らなくなり、最後は下がってしまいましたが、勝ちにいくための仕上げと勝負を見れたような気がしました。歴史を作ることはできませんでした。しかし、その挑戦でここまで仕上げ、作り上げてきたことを誇りに思います。コロナで難しい中でしたが、本当にワクワクする素晴らしいチャレンジでした。
日本ではNHKマイルCが行われダノンスコーピオンと川田君が見事な勝利を挙げました。勝利後のコメントでは、最高のデキで走らせてくれた自分の師匠でもある安田隆師や陣営へのコメントを残したのは、すごく嬉しかったです。しかし、今回の勝利は騎手の腕もあったのではないかと思います。大外枠からレースの運びは完璧でしたし、剛腕の追いっぷりは見応えがありました。もう川田君は完全に日本人騎手の中で豊ちゃんとはまた違う形で世界レベルに到達したと改めて思わされる内容でした。まだまだ伸びしろが期待できるだけに、秋のマイルCSでも楽しみになる1頭です。しかし、川田君は超一流のお手馬が多いため、嬉しい悩みにもなったと思います。
2着には前走で典ちゃんが脚を計れたと書いたマテンロウオリオンが入りました。自身が勝った9レースで完全に馬場を理解し計った脚で計算されたレースだったと思います。計算外としては勝ち切れなかったことだけだなと思いましたが、力を存分に見せつけてくれたと思います。長男の和生君に続くG1制覇を見たかったですが、次回に期待と言いうことですね。これにてスコーピオンとオリオンの星座決着と言うレースとなりました。
1番人気に推されたセリフォスは4着に入りました。こちらは福永君が得意とするタイプではなく、手が合わなかったという結果になりました。人と馬でもやはり相性がありますからね。レーンとのコンビなんかは面白いのではと思ってしまいます。次走(安田記念を予定)はどんなコンビでどんな走りをするのか。まだまだ見捨てるには早い実力馬です。
今週はヴィクトリアマイルが東京競馬場で行われます。雨がどこまで影響を出すのかもポイントですが、圧倒的に気になる1頭はソングラインになります。ここにきて本格化し、調教でも素晴らしい走りをしているだけに勝ってもらいたいと思います。グランアレグリアに近いイメージを持てるようになってきましたので、勝ち上がって名牝ロードを歩んでもらいたいと大いに期待しています。
しかし、そんな簡単に勝利させないぞとライバルたちもマイル女王の座を狙っています。なんといってもデアリングタクトは復帰戦となり、3冠馬の走りに期待しています。レイパパレやレシステンシアといった他の路線から来る2頭に関しても、現状の適性がどちらに出るのか楽しみです。そこにソダシの激走もあるでしょうし、とにかく強い牝馬が集まりました。本物のウマ娘の熱いマイル頂上決定戦は今週日曜日です!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。