元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
理性を超えた豊コール
2022/6/1(水)
皆様、こんにちは!早いもので2022年も半分の6月を迎えました。一気に夏が来たように感じる気候の中、最近は自家製のイチゴフラペチーノという飲み物にハマっています。牛乳とイチゴミルクの素を氷と一緒にミキサーで混ぜることでサッパリと冷たい飲むアイスのようになるんです。まだまだこの歳でも、飲んだことや食べたことがない物が多いのだなと感じています。騎手という夢が終わり、今は子や孫の健康を願うのが夢になっていますが、食べたことのない物を食べて歩くという新たな夢も持ってみようかなと思いました。
先週の競馬の話をしましょう。車屋さんとして大成功をしているキーファーズの松島オーナー。仕事の夢をどんどんと叶え、次の夢は「武豊と凱旋門賞を勝つ」というテーマを元に馬主さんとしてスタートされました。会社をM&Aするように、まずは近道である現地に近いイギリスで馬を買ったり、日本のセリでも購入したりと夢を叶えるために失敗を恐れず挑戦してきました。そして今回、武豊の悲願でもあった朝日杯FSを制覇したドウデュースで日本ダービーを制覇することに成功しました。
豊ちゃんにとってもこれ以上ないフォローをしてもらう中で、自分に夢を乗せてくれるオーナーに最高の恩返しができたレースになったと思います。これで6回目のダービー制覇ですが、それぞれのダービーで違った最高の想い出があると思います。管理する友道厩舎にとっては3回目のダービー制覇となりました。今回もマカヒキと同じように凱旋門賞に挑む形となると思います。今回は直前輸送でレースに出すイメージのお話しをされていましたし、チーム友道としてもマカヒキの経験を最大限に活かせる挑戦になると思います。
それではレースを振り返りましょう。スタートして1コーナーでは外からデシエルトがハナを主張し、内のアスクビクターモアが控える形となりました。1000m通過が58秒台と速くなってしまいましたが、前残りが目立った上にデシエルトの走りとしてはこの逃げで勝ちに行くしかないといったレースだったと思います。しかし、4コーナーで手応えが怪しくなり、アスクビクターモアも皐月賞での反省点を活かし、一気に引き離す形を選択しました。これなら!と思った矢先、外からドウデュースがすさまじい脚で追い込むと、内を狙った4角から一気に外へ回したイクイノックスを凌ぎ切り、2分21秒9という破格のダービーレコードで勝利しました。
松島オーナーの応援と豊ちゃんの感謝の気持ち、あくなき向上心全てが背中を押したような勝利でした。そして、さすがは友道厩舎という仕上げも最高でした。担当の前川助手は角居厩舎からの移籍で、息子と働いていたスタッフだけに非常に嬉しかったです。元角居メンバーとしてUAEダービーに日本ダービーとふたつのダービーを制しましたからね。コロナ対策のために声を出すことを禁止されていたと思いますが、自然と出た豊コールは本当の興奮は止めることができない、それだけの感動がこのレースにはあったのだと思わせてくれました。素晴らしい日本ダービーでした。
感動のダービーが終了すると、2歳新馬戦も始まります。来年はどの馬が感動を呼んでくれるのか非常に楽しみになりますし、POGなどで今から皆様のイチオシを見つけることをお勧めします。そんな今週もまだG1は続きます!東京競馬場で安田記念が行われます。注目を集めるのはドバイでは結果が出ずも、調子を戻してきたシュネルマイスターだと思います。外差しが決まる馬場になってきていますし、展開としても向くのではないでしょうか。
そこに私の本命イルーシヴパンサーがどこまでG1という舞台で戦えるのかになると思っています。まだまだ挑戦者ですが、前走を見てから安田記念はこの馬!と思っていたので、最後まで応援するつもりです。その他にもソングラインや連勝中のソウルラッシュ、G1馬サリオスにダノンザキッド、3歳馬セリフォスと注目馬が多いだけに、どんなレースになるのかワクワクしてしまいます。さぁ来年のダービー馬を探す旅に、お楽しみのマイル王決定戦は競馬場で!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。