元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
思い出した楽しみ
2022/11/10(木)
皆様、こんにちは!とうとう日本の天才レフティー中村俊輔選手が引退しました。桐光学園時代から注目を集めたフリーキックで楽しませてくれました。しかし、それは元からあった技術ではなく、高校時代にインタビューされた動画が未だに頭の中で再生されるほど覚えています。彼は学校の練習が終わると毎日一人、フリーキックの練習も続けました。その中で武器を磨き、帰ってすることはサッカーゲームでイメトレとサッカー漬け。ここまで努力する人間が成功しないことはないと思って見ていましたが、まさに日本の天才レフティー、魔法のフリーキックという異名がピッタリな選手だったと思います。
レフティーというと馬にもそれぞれ左回り、右回りが得意な馬がいます。回りによって手前が換わることから、その得意不得意があるんです。その他にも色々な理由があるのですが、そういった癖も馬を見る上で楽しいポイントになりますので、是非どっち回りで結果を出しているのかも競馬を見る上で確認してみてください。
先週はたくさんの重賞競走が行われました。その中でも振り返りたいのがみやこSになります。勝利したのは久しぶりの重賞勝利となったサンライズホープと幸君のコンビでした。スタートで後手を踏んでしまい、いつもの競馬ができなくなりました。しかし、1コーナーを入る時に幸君は馬のリズムを何よりも大事に乗ろうとすぐに切り替えてレースを行いました。すると、景色が変わったことで走る楽しさを思い出し、大外を回りながら素晴らしい走りで抜け出してきたハギノアレグリアスを凌ぎ切りました。
この勝利を見た時に、ルメールが話していた有馬記念を思い出しました。ハーツクライがディープインパクトを倒した伝説のレースです。それまで出遅れや後ろから行っていた馬でしたが、ルメールはレースに少し飽きていると感じたようで、スタートを出たら逃げて景色を変えよう、ディープインパクトに勝つにはそれしかないとトライした結果、巨大な王者を倒したという話です。
今回のサンライズホープはそれに近い勝利だったように感じました。次はもう見たことあるよと飽きてヤメてしまうか、それとも走る楽しさを思い出して更に強いレースを見せてくれるのか、どちらかになると思いますから注目したいです。
3着に入ったオメガパフュームはやはり走りますね。今回は叩き+斤量59キロもありながらあのレースをするんですからね。馬に対して厩舎側が完全に掴んでいる仕上げにも流石!と思わされるレースでした。引退を回避し、挑んでいるだけのことはあります。次はどのレースになるか分かりませんが、大井で更なる記録を作ってほしいなと思います。
今週からライアン・ムーアが来日します。エリザベス女王杯といえばスノーフェアリーとのコンビで勝っています。海外からマジカルラグーンも出走するということで、国際G1として非常に楽しみになっています。その中でも注目を集めるのはスタニングローズではないでしょうか。前走でG1秋華賞を勝利し、今回もチャンスは十分だと見ています。
そこに待ったをかけたいのが女王デアリングタクト。ケガから徐々に自分らしいレースをできるようになってきましたし、陣営は牝馬同士なら負けられないという意気込みでしょう。ナミュールや鞍上が変わってしまいますがイズジョーノキセキもチャンス十分だと思います。今年も阪神開催になりますし、宝塚記念はよくピンク帽が勝っているイメージがあります。同じコースだけにピンク帽を入れるのもひとつの馬券戦略になるかもしれません!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。