元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
経験+技術の勝利
2022/11/16(水)
皆様、こんにちは!大相撲がまたまた始まりましたね。今回は横綱不在で、誰が優勝するか非常に難しい場所になっています。関取達もあの大きな体を酷使し戦い続けるためケガをしていても休めないなど、苦しいことが多い職業だなと思います。その中でも横綱が休むというのは非常に大きなケガではないのかなと感じさせられました。照ノ富士関の一人横綱という状況だけに責任は重く、彼が背負うものの凄さを休んでなお気づかされます。武豊がいたからこそ、盛り上がってきた競馬界。そんなレジェンドもいつの日か休場や引退がくるのかと相撲を見ながら感じてしまいました。
それでは競馬の話をしましょう。先週は阪神競馬場でエリザベス女王杯が行われジェラルディーナとクリスチャンが初コンビで勝利を挙げました。担当厩務員は騎手の団野君のお父さんだったこともあり非常に盛り上がりましたね。戦前より阪神2200mのG1は外が有利と書いたのですが、そのままの結果になったなという印象です。では、なぜ阪神2200mは外が有利になってくるのかというと、それは阪神コースと芝の関係があると思っています。そこに雨が芝を緩ませたことで、さらに外有利なコースへと変わっていきました。
しかし、それだけで今回の勝利があったとは言えません。手綱が外れるハプニングやうるさかった馬を、粘り強く色々な騎手が競馬を教えることに徹し、今回はクリスチャンの技術あってこその勝利だったと思います。特に外から前に馬を置き、しっかりとコントロールできたところは技術が詰まった騎乗だったと思います。雨の多いヨーロッパで緩い馬場に慣れていることもプラスだったでしょうね。次に狙うタイミイングが悩ましい馬ですが、ここでの勝利は母ジェンティルドンナ、母父ディープインパクトの3冠コンビへの素晴らしい孝行になったのではないかと思います。
2着には同着でウインマリリンとライラックが入りました。ウインマリリンは馬場が味方しなかったなという印象で、もし雨が降っていなければ、勝っていたのはこの馬だったかも知れません。ライラックに関しては馬場適性がマッチした印象を受けました。前走が不完全燃焼だっただけに、今回はハマったという言葉がピッタリだったように思えます。どこかでまた、このような馬場や展開で重賞を制すことがありそうです。
桜花賞以来の兄弟でG1ワンツーフィニッシュにジェンティルドンナよりも名牝はデムーロ母だったのかなと思わされたレースになりました。マーカンドといい、クリスチャンといい、ヨーロッパの若手の実力は本当に素晴らしいものがありますね。
今週は土曜に東京競馬場で名馬の登竜門・東スポ杯2歳Sが、日曜日にはマイルCSが阪神競馬場で行われます。阪神の芝の痛みがどこまで回復しているかですが、枠順が大事になるレースになるかもしれません。そんなG1で私が一番注目しているのはソウルラッシュになります。今の馬場は力のある同馬にとってチャンスになるはずで、前走で脚を計れた鞍上としても万全のレースをしてくれると思っています。
マイルに戻ればソダシにも注目が集まると思います。ただ、レースに対しての気持ちの部分が少し心配になっています。当日のパドックや返し馬でしっかりとチェックしたい一頭です。前走1200mを経験したことで追走が楽になりそうなシュネルマイスターに前走圧勝のセリフォスやダノン2騎、ロータスランドあたりも馬券に絡めそうかなと見ています。横綱不在で力が拮抗しているレースになりますが、大相撲同様に楽しみで仕方ありません。前が残ったー残ったーとなるのかは皆様の目でご確認ください!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。