![松田幸春](/img/column/judge/tit_judge.jpg?=v1)
元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
受け継がれる意志
2023/2/23(木)
皆様、こんにちは!2月も最終週となり、今年も定年を迎える人達の最後となりました。その中には池添兼雄君もいます。彼とは兄弟弟子として競馬界で育ってきただけに、そんな年になったのかと寂しく感じています。思えば幼少期の謙一君や学君が栗東の空手道場から歩いて帰っていくのを見ていたのをふと思い出しました。そんな彼らも競馬界を引っ張る存在へとなり、兼雄君も引退を迎えられるのは幸せなことかなと思っています。最後に勝利を挙げてもらえたらなと願っています。
今週はサウジアラビアでもレースが行われます。我が家の長男も現地に入り、入念に調整を行っているようです。詳細は同じ競馬ラボ内のクラウンプライドの中東遠征記をご覧ください。歴史はいつでも挑戦する人達にしか変えられません。先人たちが積み重ねてきた経験と歴史、そこに新たな意志を受け継ぎ挑戦する息子をはじめ日本勢を応援します。今回も相手は強いと思いますが、サウジアラビアでも日本馬での新しい歴史を作ってくれることを願っています。
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先週のフェブラリーSを振り返りましょう。勝利したのはレモンポップとチャンスを活かした坂井君のコンビでした。今回のレース展開では距離不安があったレモンポップには最高の展開となりましたね。相手関係のポジションひとつにしてもこの馬が楽になる展開でした。それを作りだした坂井君の技術というのは素晴らしいものがありましたね。田中博調教師にとっては初めてのG1勝利となりました。若き時から栗東に来るなど早くから世界に目線をやり、海外で勉強してきた知識が開花していますね。どの馬を見ても馬の作りが素晴らしく、本当によく勉強しているなと感心させられるほどです。ですから彼のG1勝利というのは必然の結果だと思います。
一方、期待していたドライスタウトですが、戸崎君が調教に駆けつけて勝つために全力を注いでいただけに期待していましたが、残念な結果となりました。いつもと走り方が違うようにも見え、調教後の調整が噛み合わなかったように感じたのと、モレイラにこすられヒートアップしたように若さも見せる結果となりました。枠順に関しても勝利したレモンポップと逆であればまた違ったと思いますが、こればかりは仕方ありませんね。しかし、ここでレースが終わりではありませんし、戸崎君もリベンジしてくれると思っています。
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今週から中山、阪神、小倉の3場開催になります。トップジョッキーたちがこぞってサウジアラビアに行くため展開が少し読みにくくなるところはあると思いますが、穴を狙うには持ってこいの週となりそうです。
それでも阪神で行われる阪急杯はグレナディアガーズを推したいと思います。1週前の調教では少し動きが重いかなと感じていましたが、今週の動きは素晴らしく、阪神1400mでは負けられない一戦になります。岩田望君もライバルであり先輩の坂井君の勝利に燃えていないわけがないと思いますし、結果にこだわる騎乗に期待しています。そこに待ったをかけたいのがアグリと横山和君ではないでしょうか。横山一家の逃げは芸術的でもありますからね。内枠が当たれば間違いなくいい勝負をしてくれると思います。
引退を迎える兼雄君の意志を受け継いだ池添兄弟、横山家の意志を継ぐ長男和男君、岩田家の意志を受け継ぎ成長を続ける望来君と、競馬界で育ってきた彼らが見せるドラマは見逃せません。是非、競馬場で雄姿を観てください!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。