元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
戸崎騎手の臨機応変さ
2023/5/18(木)
皆様、こんにちは!今朝ニュースでモレイラ騎手が引退の噂を否定し、今年のみならず来年も日本での短期免許取得を目指していると流れましたね。彼ほどの腕を持った騎手が来てくれることは本当に有意義だと思います。他の騎手からすれば、いい馬が持っていかれてしまうという恐怖もあるでしょうが、それ以上に彼から日本人にはない競馬に対しての感性や野生的なフィーリングを学んでほしいと私は思っています。
馬の扱いひとつにしても乗る技術だけでなく、馬にどう関わっているのか、コミュニケーションをとっているのかなど、日本の当たり前という概念を捨て、聞き、学んでほしいと思います。モレイラ旋風を楽しみに待ちましょう。私は急なこの暑さに旋風ではなく扇風機を楽しみます!
先週は東京競馬場でヴィクトリアマイルが行われました。まずはこのレースで気になったのはサブライムアンセムと三浦君です。この馬は調教からも行きたがる素振りを見せ、非常に扱いが難しいです。私としてはスプリントの道が合っているんじゃないかと思っています。しかし、前走は岩田望君が騎乗し、内ラチでビッシリと馬を抑え込むと、最後はあわや勝利のところまで持ってきました。そのため今回の乗り替わりでどうなるかと思って見ていましたが、正直がっかりするレースでした。
スタートから引っ掛かることを恐れ控えると最後は外を回り、脚がなくなるというレースでした。人気がなくても勝負する、勝ちにいく挑戦をしてほしかったです。前走の岩田望君のように勇気と技術を持って勝ちにいくような競馬を。G1という舞台に上がってくることは容易なことではありません。スタッフや関係する人々が色々な思いで出走させてきます。相手が強いから無理だなと思っていても何が起こるか分からない、だから自分たちの馬を信じようと願っています。そんな中で騎手がスタートから勝負をかけてくれないというのは残念で仕方ありません。そんなレースになっていたと思います。
残念なこともあれば、素晴らしい騎乗もありました。勝利した戸崎君は素晴らしかったと思います。道中では少し内にカットインする場面がありイズジョーノキセキの邪魔をしてしまったことは反省すべきところですが、先々週から同じコースを狙って走っていたことやソングラインが馬場をこなしてくれたこと、レースのペースから使える他馬の末脚と全てが戸崎君の導きと噛み合いました。最後も外と決めていたのに外には出さず、その場の判断で内を選んで勝負を懸けたのがまさに大正解の勝利でした。
2着に入ったソダシとレーンのコンビですが、こちらも素晴らしかったと思います。スタート後の進路で5万円の罰金を取られましたが、動き自体はそこまで大きくなく、確認しながら入っていたことや距離感からも内の馬が動きすぎたのではないかと感じました。しかし、裁決は理由を作ったレーン騎手の過失になっていましたので、悪いといえば悪いのだと思います。しかし、それでもあの馬を大外から折り合わせて2着に持ってくるのだから素晴らしいの一言でした。
今週は牝馬クラシック第2弾のオークスが東京競馬場で行われます。何と言っても注目は怪物リバティアイランドになります。調教でも驚くタイムを出していましたし、まだまだ底が見えないだけに楽しみで仕方ありません。唯一心配と言えば、距離になります。しかし、これはレースのペースにもよりますし、3歳牝馬同士ならカバーできる範疇ではないでしょうか。
そこに続くのは明らかにここを狙ってきているハーパー、桜花賞組以外からはミッキークイーンの娘ミッキーゴージャスにも注目が集まると思っています。ソダシで技術を見せつけてくれたレーンとのコンビになるコナコーストも楽しみです。一生に一度の大舞台。悔いの残らない、素晴らしい騎乗とレースを期待します!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。