元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
追うだけが競馬じゃない
2023/6/15(木)
皆様、こんにちは!世間ではスシローがSNSで被害をもたらせた少年に6700万円の請求をかけ話題になっていますね。行為自体、許されたものではありませんし、次のお客様への信頼を減らさせたというのは業務妨害とみなされても間違いないものになると思っています。時代が進み、情報がいとも簡単に取得でき発信できる時代に変わってきています。しかし、その中でも世界の中で共存していることを忘れた行為だけはダメだと教えていくことが今の時代でも必要だなとこの事件を見ていて感じました。
競馬界でも若者の一部が今までJRAや先輩騎手たちが積み上げてきたものを軽率な行動で一気に崩したスマホ使用がありました。本人たちからすれば競馬を見て情報を入れていただけと思っているかもしれません。他の騎手と電話をしていたという事例もありますが、プロとして事前に騎乗馬やレースの情報をインプットすることが必要であるのに便利さに負けていたとしか思えません。
その対象となった6人が今週から復帰します。各々反省のコメントを出したようですが、騎手は結果でしかモノを語れません。騎乗馬があるだけでもありがたいということに再度気づいてもらい、厩舎に自分たちが行く何時間も前から馬を作り上げる人達に対してリスペクトを持ち、改めて仕事に取り組んでもらいたいと思います。
先週は開幕した函館競馬場にて函館スプリントSが開催されましたが、勝利したのは横山武君とキミワクイーンのコンビでした。私の期待していたブトンドールは思った以上に成長しておらず、5着という結果に終わってしまいました。レースはスタートから行く馬が多いと見るや馬の呼吸を第一に、しかしのんびりしすぎないようにリズムを整えると、開幕馬場だけに少し速くなったペースの中、4コーナー手前から馬にGOサインを出す準備を整え、一気に加速させ勝利へと導きました。
本当に武史君は北海道のカーブの使い方が上手だなと思わされますね。それも度胸や早めに仕掛けても残す技術、脚を知っているからこそ使うまでにどのような準備が必要かを理解しているからこその勝利でした。レースでも「騎手はなぜポジションを取らないんだ、後ろからの一気で届くわけがない」と思われるレースもありますが、それはGOサインを出すまでの馬に対してのアプローチができきれなかったというのが多くの敗因になっているのです。
だからこそ、今回下げながらも馬のバランスを整え、リズムに乗せ、しかし行くのはまだだよとコントロールし、ギアを1,2,3,4,5と丁寧に上げていったからこそ、あの切れ味が出せたと思います。もちろんペース、馬の能力によりますが、それでも武史君のスタートから最後までのギアの入れ方や準備は素晴らしいものがありました。脚を出させるためには追い方やハミやリズムを馬任せにするだけでなく、コントロールしてあげることができる騎手こそが良い騎手だと私は考えます。
今週は東京で名馬誕生を期待したいユニコーンS、阪神ではハンデ重賞のマーメイドSが行われます。とりわけユニコーンSには楽しみな馬が出走してきます。今年の3歳ダート路線は非常に面子が濃く、横綱と思っているユティタムにどこまで迫れるかを確認するレースになると思います。その筆頭がペリエールになるのではないでしょうか。前回はUAEダービー4着という結果でしたが、東京コースに替わるのは良いですし、ルメールとのコンビという点も非常に魅力です。
そこに対抗してくるのはグレートサンドシーでしょうね。前走は鬼脚を使いましたが、直線の長い東京コースも合うのではないでしょうか。他ではブライアンセンスが面白い走りをしますし、血統も魅力的なワールズコライドや東京に戻って本領発揮のサンライズジークもいます。個人的にはカレンアルカンタラに頑張ってもらいたいと思っていますが、果たして。今週は特にルメールのレースの組み立て方や、馬を走らせるための準備に注目してみてください!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。