元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
モレイラ“じゃなければ“
2023/11/9(木)
皆様、こんにちは!今週末からは2023年最後の大相撲が始まります。残念ながら横綱・照ノ富士関の休場が決まってしまいましたが、力と力のぶつかり合いを楽しみにしています。特に琴の若関に期待しています。安定して勝ち星を挙げていることから大関へのチャンスでもありますし、ここで思い切った結果を出してほしいと思っています。
競馬でも先週は力と力のぶつかり合いJBCが行われました。JRAの馬場のようなスピードよりもタフさがいる砂に変わっていたことで、適性がある馬達が結果を残したように見えました。しかし、この馬場で戦えることが世界のダートに通用する馬だとも思いますし、ジャパンブリーダーズカップという名に恥じないレースだったと思います。
スプリントでは応援していたリメイクが2着という結果に肩を落としましたが、勝利したイグナイターは素晴らしい走りだったと思います。負けても負けても勝利するために積み上げてきた陣営の努力が形になった瞬間でした。逆にリメイクにとってはスタート直後に落馬したダンシングプリンスの走り、それに深い砂が敵になってしまったと思います。負けても尚、ダートスプリント界の日本最強はこちらだと思っていますので、リベンジマッチに期待しています。
熱い戦いは中央競馬でも行われ、マジックマン・モレイラ圧巻の技術ショーがアルゼンチン共和国杯でも見せつけられました。モレイラじゃなければ勝っていないように感じるほどのレースでした。ルメール、川田君、モレイラにも共通している「彼らじゃなければここまで走れていない」という表現は最高の誉め言葉だと思っています。レースは内の4列目を走っていたゼッフィーロとモレイラ。ここで、チョイスとしては2つあります。
1つ目は外への進路を選択し、安全にコースの確保をすること。2つ目は間を縫い、内からロスを減らしながら走り抜ける方法。外の芝の方がきれいということもありますが、今の東京競馬場ではそこまで差がないことからも勝つための選択としては2つ目を選ぶ必要があります。それをいとも簡単に選択し、やり切るのですから本当に恐ろしい騎手です。昔から重賞を勝つと多くの人が言っていたゼッフィーロですが、まさに彼自身の走りも素晴らしく、素晴らしい+素晴らしいのアメイジング!なレースでした。次も無理をせず適鞍を狙い、着実に勝利を積み上げてほしいです。
モレイラに加えて今週からはマーカンドとドイル夫妻に、世界一のライアン・ムーアが来日します。3人とも素晴らしい技術を持ったトップ騎手だけに、本当に楽しみしています。特にマーカンドは昨年も日本競馬に適応していましたし、今年は更に楽しみだと思っています。ドイルも技術は高いものがあるだけに、まずは福島で彼女の競馬ができれば結果は必ずついてくると思っています。
そんなトップ騎手が集まる中、京都競馬場ではエリザベス女王杯が行われます。マスクトディーヴァがいれば間違いなく本命にしたかったのですが、疲労からも出てこないということで、ローズSで同馬に迫ったブレイディヴェーグの走りに注目しています。続いて力は本物のはずで前走は夏負けがあったサリエラもここでの逆襲に期待したいです。
秋華賞で素晴らしい走りをしたハーパーも舞台が合う気がしますし、ルージュエヴァイユはどこか足りないと思わされるレースが多くなってきている中、松山君が思いきった勝負をしてくれるのではと思っています。天候次第ではジェラルディーナにもまだまだチャンスがありそう。力と力のぶつかり合い、そこに世界のトップたちの技術が融合した時、どのようなドラマが生まれるのか。淀競馬場で生観戦を!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。