元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
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2023/12/1(金)
皆様、こんにちは!衝撃のニュースで目が覚めました。最強馬イクイノックスが引退を発表しました。前回の天皇賞(秋)でも書きましたが、どこからでも競馬ができる上に速いタイムにも対応できるため、歴代でも最強と認めていいほどの馬。しかし、これはいい引き際だったのかもしれません。最強の間に引退するというのはヨーロッパでは当たり前のように行われており、今年凱旋門賞を制したエースインパクトも次の世代へ繋げるために引退を選択しました。
良い状態で子供を作っていくことは競馬にとって大事なことで、イクイノックスといえばキングカメハメハの血が入っていないため、何百億という価値があると思います。欲を言えばドバイまで見たかったですが、これは次の世代へ、日本競馬のさらなる進化には必要な引退だったと思います。
そのイクイノックスのラストランとなったジャパンカップが東京競馬場で行われました。レースはパンサラッサがまたまた大逃げを打つ中、2番手にタイトルホルダー、3番手にイクイノックス、4番手にリバティアイランドという配列の中、1000m通過は驚きの57秒台。それでもパンサラッサが逃げながら直線に入り、追走していたイクイノックスに騎乗のルメールがGoサインを出すと、一気に加速しノーウィップで有終の美を飾りました。
2着にはリバティアイランドが入りましたが、4キロのハンデで3歳の女の子が世界王者にくらいついた見事なレースだったと思います。勝利後はルメールの目に涙が浮かび、彼との旅路の終わりを感じさせていました。これほどの馬に出会えたこと、彼と走れた景色、悔しかったダービー、全ての想い出が次々と蘇ったかもしれません。そして、最強を見事に証明できたことで涙が溢れ出たのでしょう。
木村調教師も我慢できずに涙を流していました。これほどまでの馬を預かるというのは並大抵のプレッシャーではありません。このチームでなければ、ここまで走れなかったかもしれません。まさにプロの仕事をやり遂げたと思います。前述したようにイクイノックスのレースはこれで終了になります。しかし、彼の子供がまた我々を驚かすようなレースをしてくれると信じています。まさに最強のままの引退。名残惜しさは次の世代で取り返しましょう。チーム・イクイノックスの皆様、本当にお疲れ様でした。
今週からは開催が阪神・中山・中京へと変わります。日曜の中京競馬場ではG1チャンピオンズカップが行われます。非常に豪華なメンバーが揃ったことからも、ジャパンカップダートと呼んでもおかしくないメンバー構成となります。本命に選ばれそうなのは前走、1600mの南部杯を圧勝したレモンポップになります。こちらは距離やコーナー4つが心配される上に大外枠になったことからも非常に難しいレースになるでしょう。しかし、この200mの延長とコーナーすらも本当の強さがあれば克服してくれるのではと思っています。
2番人気にはセラフィックコールが推されそうです。全レースのスタートで後手を踏み、ズブいながらも最後は全てを飲み込む走りをしてきただけに今回も!というワクワクがあるのではないでしょうか。才能も素晴らしく、客観的に見ても一番チャンスがあると思います。しかし、G1はひとつのミスが命とりになる勝負で、今回は楽なレースをさせてもらえないでしょう。
だからこそ、他の馬にもつけいる隙があるのではと考えています。そのチャンスのある馬としてはテーオーケインズやアイコンテーラー、ハギノアレグリアスにも勝機はあるでしょうし、クラウンプライドは川田君が全てを掴んでいるはずで彼なら見逃さないと思っています。最強のダート馬達が揃った一戦。どの馬が王者に輝くのか。決戦は日曜日です!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。