元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
競馬の楽しみ方 プロ騎手編
2024/3/14(木)
皆様、こんにちは!鼻水が止まらなかったり目が痛かったりと突然のTHE花粉症に悩まされています。皆様は大丈夫ですか?よく目をまるごと洗いたいって言葉を聞いていましたが、まさか自分も同じようになるとは思ってもいませんでした。これも季節の象徴と諦めるしかないのかもしれませんが、ここまでしんどいとは驚きでした。色々な治療法があるみたいですし、薬もとって自分なりの改善方法を見つけてみます。
ここ数週間を見ていると、ルメールの乗り方が寒さのせいか少し硬いなという印象を受けていて、さらに川田君もいつもの骨盤のキレイな入り方が少し硬いなとトップジョッキーらしくないことが気になっていましたが、中京競馬場で行われた金鯱賞ではさすがのトップレベルを見せてくれましたね。先々週の2人を見ていてもトライアルらしくない激しいポジション争いが面白かったですが、先週もまた面白かったです。
スタートからそっとルメール騎乗のドゥレッツァの後ろにつけると向正面で一度川田君は外の進路を探っていました。しかし、前にルメール、外にも一頭、その前にも一頭いることを確認すると、そっと内のスペースへとルートを変更させました。ここに入れたことによってスペースがなくなる可能性が上がったと思います。しかし、迎えた4コーナーの手応えでこれだと詰まらずにコースを探せるという感覚に変わったと思います。
その手応えを見ながらドゥレッツアは逆に前走で長い距離を走っていたこともあり、エンジンがかかるまで少し時間を要してしまいました。その瞬間を川田君が見逃すはずも無く、一気に4角から主張すると、内が空いた瞬間に潜り込み、ドンドンと後続を引き離し勝利を収めました。外を回したルメールとドゥレッツアは2着でしたが、これは進路の問題ではなく、ここに向かうまでの工程の違いだったと思います。
どちらもが素晴らしい競馬をしつつも、勝利したプログノーシスが全てを理解していたという感じでしょうか。勿論、2人のようなレースをするためには走る馬に乗るというのも前提条件になりますが、それ以上に馬の気持ちをリスペクトしながらも、行くときは行くという心の強さや馬とのコンタクト力があるからこそだと感じました。他の騎手たちは、彼らの乗り方だけでなく、普段からどのように馬に接し、返し馬では何を意識し、どう馬の気持ちを作り、そして指1本までの動きに意味があると見て勉強すべきだと思います。
ふとした行動ですらひとつひとつ彼らは馬とのコンタクトのためにやっていますから。そういったことの積み重ねを見せてもらったレースだと思います。競馬の醍醐味は直線の激しい争いにあるかもしれません。しかし、彼らがパドックや返し馬でクセを見抜き、レースをどう作り上げているかにも注目してみてください。
今週も多くの重賞競走が行われます。その中でも注目を集めるのが阪神大賞典ではないでしょうか。長距離砲テーオーロイヤルが1番人気に選ばれるかなと思っています。ただし、この路線で前走のメンバーを考えると、私はサヴォーナに注目しています。菊花賞でも距離が保つことが分かっていますし、レベルを不安視されている4歳馬ですがここで再度、世代の評価を上げる走りを見せてほしいなと願っています。
そこに中山牝馬Sで2024年の初重賞制覇をした岩田望君とのコンビのディープボンドも楽しみのひとつです。ズブさがあり和田君がずっと追っているイメージがありますが、岩田望君も最後まで諦めずに追うことを評価されていますし、何よりも馬のリズムを大事に動かせる騎手ですから新たな起爆剤になればと思っています。そこにユーキャンスマイルなどの人気薄でも一発がある馬にも注目しながら万馬券狙いを楽しむのもいいかもしれません。騎手の腕が活きると言われる長距離戦を制するのは誰か?今週も競馬を楽しみましょう!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。