元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
言葉がありません
2024/4/11(木)
皆様、こんにちは!まずは先週、阪神競馬場で行われたレースで落馬負傷した藤岡康太騎手が亡くなりました。謹んでお悔やみ申し上げます。子を持つ親として、康太君を亡くしたお父様や家族の気持ちを考えると、苦しくて言葉がありません。嫌な顔せず色々な厩舎の調教に跨り、ピンクのアウターを着て乗っている姿が今でも脳裏に焼き付いています。
現状に文句を言って自分が行動せずに結果を出せない騎手もいる中、諦めずに積み上げてきた努力が今まさに再度開いた矢先だっただけに悔しくも感じます。競馬はそれでも続きます。どうかこれからは人馬安全に行われることを祈ります。
それでは先週行われた桜花賞を振り返りましょう。今年JRAでGIを2勝しないと来年の短期免許が取れないモレイラ騎手が見事な手綱捌きでステレンボッシュと共に勝利しました。前走を見ていた時から切れ味がすごいイメージがありましたし、牝馬クラシックとなれば国枝厩舎に期待していましたが、まさにその仕上げとモレイラ騎手の技術がかみ合った勝利でした。
2着には2歳女王アスコリピチェーノが入りました。こちらも素晴らしいレースをしましたが、勝負の分かれ目は3~4コーナーにありました。内の馬場が悪かったことで北村宏司騎手は、一頭分外へ出しました。この判断は間違いではなかったと思います。しかし、モレイラ騎手はそこを見逃さずスっと内へ入れると、4角でワンタイミング先に仕掛けました。まさにここが勝負の分かれ目。桜が咲き誇る、見応えある桜花賞でした。
今週は皐月賞が行われます。非常に難しいレースになると思いますが、私はメイショウタバルを応援したいです。石橋守厩舎の初重賞制覇となった馬で、康太君と本当に仲が良かった同期の浜中君が騎乗します。康太君に「こっちの世界で頑張るから、見ててくれよな!」という勝利を期待したいです。
もちろんGIですからレガレイラやシンエンペラー、ジャスティンミラノにジャンタルマンタルと相当なメンバーは揃っていますがね。今週は全ての騎手が喪章をつけて騎乗することでしょう。精一杯に頑張る騎手や馬の安全を願いながら応援していただければと思います。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。