元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
見えない力
2024/4/16(火)
皆様、こんにちは!競馬には度々、見えない力のような奇跡が起こります。それは、ドラマの脚本では書き表せないようなものです。有馬記念のドウドゥースと豊ちゃんの怪我からの復活劇も感動したのを覚えています。そのドラマを陰ながら支えていたのも亡くなった藤岡康太君と友道厩舎でした。そんなコンビで最後に仕上げたのがジャスティンミラノ。そのジャスティンミラノが見事に皐月賞を制しました。
激しい調教にも負けず体を増やし、ダービーを見据えつつも完璧な仕上げだったと思います。観ていた人の多くは康太君が背中を押してくれたように映ったと思います。偶然かもしれませんし、たまたまかもしれません。でも、間違いなく見えない力を感じる奇跡のような勝利でした。
レースではスタートからメイショウタバルが前半57秒5の逃げを打ちました。浜中君としてはどうしても勝ちたい1戦だったのでしょう。だからこそ、勝負を懸けたハイラップだったのだと思います。早過ぎるかもしれないペースでも2頭目の動き次第では勝利の可能性があがる勝負だったんです。残念ながら早めに追いつかれたことで負けましたが、康太君の親友として、勝負師の心意気を見せてくれました。
そして、4コーナーでジャンタルマンタルと川田君が捕まえにいきました。こちらも結果論としては早かったとなるでしょう。しかし、1600mがベストな馬にとって、浜中君が作ったペースは折り合い面でも最高の展開でしたし、コーナーを活かして早めに他馬を引き離すことがジャンタルマンタルにとって勝つための最大の懸けだったと思います。それを大一番でもやれる川田君はやはり日本一の騎手だと確信できる騎乗でした。
コスモキュランダとモレイラ騎手も圧巻でした。道中の運びから直線まで、他の騎手ならここまで走れていない最高のレースをしましたから。それでも交わさせなかった戸崎君の捌き、4角のコーナーリングは康太君の思いの分で勝利した差だったかもしれません。各騎手の技術に勝負師としてのやりとりが激しく詰まった1戦でした。改めて、勝利した関係者の皆様、おめでとうございます!そして康太君、お疲れ様でした。
今週からは東京、京都、福島に開催場が替わります。日曜の京都競馬場ではマイラーズカップが行われます。注目はセリフォスになると思います。ここ2走、思ったようなレースになっていませんが、どこまで持ち直しているか楽しみです。そこに開幕馬場がどうかのソウルラッシュやコーナーの使い方次第のセッションに、侮れないコレペティトールもいます。本当なら小倉で行われる中京記念で狙いたかったニホンピロキーフはマイルを走らせることが次走に影響なければ、前走により運びが難しくなりそうなエエヤンとの2頭はどんな競馬をするのかという意味で注目しています。
ホースマンはいつでも命懸けで勝負をしています。自分達が燃え上がるため、ファンの皆様に馬の力強さや華麗さを見せるためでもあります。表でも裏でも命懸けです。全てを理解してレースを観てくださいとは言えませんが、少しでもそういった志でレースを作っていることを感じながら楽しんでもらえたらと思います。皆様の声援も見えない力となりますから!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。