'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
人気コーナー!トップジョッキーならではの本音、レースへの意気込みをお届けします!
12月23日時点1569勝
さあ天皇賞!名パートナー・ルージュバックと悲願成就へ!
2016/10/28(金)
ジョッキーにとって、この秋の大一番かもしれない。ルージュバックとエプソムC、毎日王冠を連勝し、天皇賞(秋)へ名乗りを挙げた戸崎騎手。デビュー3連勝できさらぎ賞を制した実力を思えば、ようやく結果が伴ってきたとも言えるが、昨年の桜花賞では惨敗を喫するなど、このコンビで苦難も味わってきただけに思い入れはひとしお。故にG1奪取へ懸ける思いも自ずと強いはずだ。通算5勝中3勝を東京でマークしているように、舞台に不足はなし。時は満ちた今、その手応えに迫った。
待望のG1制覇へ!期は熟したルージュバック&戸崎圭太
-:さあ、いよいよ天皇賞(秋)(G1)ですね!本日、枠順も発表されまして、ルージュバック(牝4、美浦・大竹厩舎)は5枠9番となりました。率直にこの枠はどう見られますか?
圭太:ええ、内過ぎず、外過ぎず、いいんじゃないかと思います。
-:今回、気になるのは、逃げ馬もおり、他馬との並び方でペースも変化しそうだと思いましたが、目下の逃げ馬エイシンヒカリは最内となりましたね。この枠を見た上での流れはどう読まれますか?
圭太:そうですね。この並び方だと、ペースは落ち着きやすいかもしれません。他も競りかけていくとは考えづらいですから。
▲エプソムCではルージュバックが久々の勝利!「G1を勝ったくらい嬉しい」
とレース後に戸崎騎手 珍しくガッツポーズが飛び出た
-:その上でルージュバックは比較的、超ハイペースのキツイ流れを経験してきたわけではないと思います。エプソムC、毎日王冠と同じような流れでした。この馬にとって、理想的な流れはありますか?
圭太:おそらくそういう激流になっても対応出来るのではないかと思いますが、遅かろうが、速かろうが、前を差せるような展開ならば心配ないと思いますよ。そこは心配していません。
-:確かに前崩れになったらなったで、飛んで来そうですものね。しかも、今週からBコース替わりで、一般的にはイン有利になりそうなものですが、気象庁の予報によれば、土曜日が雨で日曜は晴れのよう。毎日王冠の時と似たような外差しの馬場もありえそうです。
圭太:今なら少し渋った馬場にも対応出来ることは証明しましたし、そうなったら歓迎ですよね。
-:ちなみに、先週までの馬場傾向も参考までに教えていただけますか?
圭太:3~4コーナーを中心に馬場は荒れていましたね。直線も荒れてはいるのですが、何とか食い下がれるというか……。
-:確かにジョッキー自身もインを突いて勝っていましたね。そして、ルージュバックは2000m以上の距離での出走が昨年の有馬記念以来ですね。僕は気にしてもいませんが(苦笑)、距離を懸念するような声もあります。いかがでしょうか?
圭太:まあ、全く問題ないですよ。
-:振り返れば、キャリア2走目の百日草特別はそれこそ東京の2000m戦を2歳コースレコード勝ち。しかも、ベルーフやミュゼエイリアンら後の重賞ウィナーを一蹴しましたものね。ただ、デビュー3連勝以降、なかなか芳しい結果を残せませんでした。ここへ来て2連勝できた要因など考えられるポイントはありますか?
「僕も気負わずに挑めるというか。今までは僕も何とか勝たせてやりたい、という思いもあったりしたのですが、ここへ来て走ってきてくれていることもあってか、ルージュバックのことを信じられるといいますか、自信を持たせてくれますよね」
圭太:まあ、距離だったり、状態だったり、気性。いろいろなものが噛み合わなかったと思います。当初から素質の高さは感じていましたが、ようやくそれが順当に出せるようになってきたというか……。厩務員さんも「落ち着いてきた」と言っていましたが、精神面も多少なりとも良くなってきたのかと思いますよ。
-:精神面の成長もあってか、今回の立ち写真も以前よりもいいゆとりがあるように感じました。もともとこの馬の追い切りには乗られていませんし、今週は栗東に行かれていたとのことで、トレセンでの気配は目で確かめていられないかと思いますが、陣営に状態などは耳にしていますか?
圭太:そうですね。詳しくは聞いていませんが、聞くところによれば、いい状態だと聞いていますよ。
-:お話を伺う前からも楽しみにしていましたが、今回もいい勝負になりそうですね!個人的にデータも調べましたが、1986年以降の東京芝1800mの重賞で18番枠の馬が勝ったのはルージュバックだけです。それに、毎日王冠だって、あそこからあれだけのアクションで差し切るのですからね。
圭太:(データに対して)ホントですか?もちろん結果も勝ち負けしたいですし、最善を尽くしたいですよね。ただ、僕も気負わずに挑めるというか。今までは僕も何とか勝たせてやりたい、という思いもあったりしたのですが、ここへ来て走ってきてくれていることもあってか、ルージュバックのことを信じられるといいますか、自信を持たせてくれますよね。
-:自然体で臨めると。
圭太:ハイ。なかなか噛み合わない時期もありましたが、このコンビでまたG1の舞台に立てる幸せ……。それをひしひしと感じています。ファンも多い馬だと思いますし、周りの後押しに対して、最高の形で応えられたらいいですね。
▲ルージュバックの通算11戦中10戦で騎乗している戸崎騎手(写真は百日草特別時)
マイル路線はフィエロとのコンビ 秋の始動戦へ
-:一方、土曜日のスワンS(G2)にはフィエロ(牡7、栗東・藤原英厩舎)との再タッグで挑まれますね。
圭太:今週、追い切りに乗りにいったのですが、馬もしっかりしてきましたね。年齢が年齢だけに、疑ってみられるかもしれませんが、戦歴から見ても力の衰えはないと思いますからね。楽しみですよ。
-:京都といえば、今週から短期免許を取得したライアン・ムーア騎手も同じく騎乗。敬愛していることは何度もココで口にしていただきましたが、天皇賞(秋)もモーリスに騎乗しますし、注目しつつも、ライバルにはなるわけですね。
圭太:そうですね。一緒に乗れるのが楽しみです。モーリスもマイルで連勝しているように、コース適性には死角があるのではないかと思っています。ライアンがどう乗ってくるのか、そこは純粋に楽しみですし、もちろん僕も負けない騎乗をみせたいですね。
-:名手の争いをみせつつ、是非勝ってほしいところです。日曜のプリンセスロック(牝4、美浦・大和田厩舎)、クインズサターン(牡3、栗東・野中厩舎)といかがでしょうか?
圭太:プリンセスロックは当初乗せてもらったことは気負って走るところもあって、距離の融通性に課題がありましたね。ただ、前走は一段上の競馬が出来た気がします。引き続きチャンスだと思いますよ。クインズサターンは僕が乗せてもらった時は楽勝でしたよね。重賞でも5着ですか。チャンスはあるんじゃないかと思っています。
スプリント&レディスC JBCは2戦に騎乗
-:今週は珍しくテン乗りが多かったので、こんなところで、先週の話題もよろしくお願いします!富士ステークス(G3)のヤングマンパワー(牡4、美浦・手塚厩舎)は3連勝!止まりませんねえ。
圭太:ねえ。本当にいいタイミングで乗せてもらえたと思いますよ。今回もどんな競馬でも出来る強みが活きたと思います。正直、G1級を相手にどうかと思っていましたが、レース巧者ぶりで克服しましたからね。
-:レース前は「クビの使い方が課題だ」とのお話。そこは見た目どおり、さすがに大きな変化はないですよね?
圭太:まあ、そこはね。変わりはないです。周りからも「よくあれで走るな」なんて言われましたよ。
-:でも、それで重賞3勝ですから、立派というか、引き続き楽しみですね。コウソクストレート(牡2、美浦・中舘厩舎)はどうでしたか?
圭太:新馬で感じたポテンシャルが高かったので楽しみでしたね。ただ、返し馬から気負っているところはありましたし、コーナーまではなかなか収まらなかったです。直線を向いてからは落ち着きましたが、テンションは課題になりそうですね。
-:アーチキング(牡3、美浦・木村厩舎)はインから上手く抜け出しましたね。
圭太:直線も上手く開いてくれましたよ。距離延長も良かったと思います。
-:そして、次週はG1の谷間になりますが、木曜には川崎でJBC競走。スプリント、レディスクラシックと騎乗されます。こちらも簡単によろしいですか?
圭太:ベストウォーリア(牡6、栗東・石坂厩舎)の前走は相手が強かったですからね。ただ、盛岡までの長距離遠征の中、いい状態で走ってくれました。今回もチャンス十分だと思いますよ。トロワボヌールは川崎でも結果が出ているのでね。レースの上手さは持ち味ですから楽しみです。
-:最後に、天皇賞当日はストレイトガール(牝7、栗東・藤原英厩舎)の引退式もありますから、ジョッキーにもいい形で臨んでほしいです。
圭太:ああ、そうですね。何とかそうなれば。
-:それと、アルゼンチン共和国杯(G2)ではアルバート(牡5、美浦・堀厩舎)に騎乗とのこと。また、次週もよろしくお願いします!
圭太:頑張ります。
(聞き手:競馬ラボ・小野田学)
※次回は11月4日(金)に更新予定です!
▲最終レース後は盟友・ストレイトガールの引退式が予定されている
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。