'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
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【特別号】3年連続リーディング!2016年の真相をすべて明かす!
2017/1/11(水)
クリストフ・ルメール騎手と空前のリーディング争いの末、見事に3年連続JRA最多勝利騎手に輝いた戸崎圭太騎手。一時は大きなリードをひっくり返されながらも、最終週で逆転してみせたあたりはまさに劇的だった。その勝負の舞台裏で何を思い、何を感じたのか。そして、2016年の中でみせた進歩とは?改めて激動と歓喜の一年を振り返ってもらった。
(取材日:2016年12月29日 取材・構成=競馬ラボ・小野田)
激闘を演じたルメールと健闘を誓いながらのリーディング争い
-:無事に2016年もリーディング獲得、おめでとうございます!この(2016年)1年、非常の良い結果で終えることが出来たと思いますが、今のお気持ちはいかがですか?
戸崎圭太騎手:地方時代を含め、例年だと少し余裕がありながらリーディングのですが、こんな接戦というのも初めてですし、良い経験をさせていただきながら、結果もトップを守ったということで、とても嬉しく思いますし、ホッとしています。
-:おそらく過去の歴史においても、こんなに接戦というのはなかったんじゃないかなと思います。
圭太:本当に、最後の日までもつれましたからね。まあ、周りの方やファンの方もそうですが、すごく盛り上がってくれて、その注目度の高さも感じていました。盛り上がるのは良いことなのでね。それは胸を張れます。
-:お客さんあっての商売なので、絶対に盛り上がった方が良いですからね。
圭太:そうですね。それで、獲れたから余裕を持って言えているのかもしれないですが、良かったと思います。
▲新年1月7日(土)、中山競馬場で行われた表彰式に出席した戸崎騎手
-:この前にお話を伺った時では「楽しめている」ということだったと思いますが、実際に終わってみての心境はいかがでしたか?
圭太:やっぱり夏が終わって随分勢いがあって、差もちょっと広げていましたので、あの頃はすごく自分も楽だったのですが、その後の10月の半ばから11月の1カ月半はちょっと攻められても来て不安もあり、自分を見失っていた時期がありましたね。それを過ぎ、12月に入ってからは開き直りじゃないですが、一つ自分が成長出来ながらレースに臨めていたので、それは良かったですね。最後の3日間、集中力はかなり高まっていましたね。
-:それも良い結果に繋がったということで。
圭太:これも勝ったから、またそういう風に思えるのかもしれませんが、負けていても、あの経験はすごく良かったとは言えますね。
-:どんな競技でもそうかもしれないですが、場数を踏むということはすごく大事ですよね。
圭太:そうですね。こういう接戦を出来たというのも、本当にクリストフ(ルメール)がいてこうなりましたから、こんな経験をさせてもらったのもクリストフのお陰というのもありますし、クリストフは有馬記念も勝ちましたしね。
▲互いにエールを送りあいながらリーディング争いを繰り広げたルメール騎手
-:すごいですよね。本人にどれだけリーディングに意識があったのか、僕は全く伺ったことがないので分からないですが、タイトルをフイにしても重賞連勝でちゃんと結果を残してくるというのは。
圭太:だから、やっぱりすごいですよ。僕なんかは、そういう面でも比べ物にならないところもありますし、結果はこうなりましたが、この1年、自分もまだまだだなと感じましたからね。技術的にもそうですけど、“人間・戸崎圭太”をもっともっと成長していきたいなと思いますね。
-:ちなみに、最終週の個別のレースを伺うと、(有馬記念の)アルバート(牡6、美浦・堀厩舎)はけっこう思い切ったレースでしたね。
圭太:そうですね。ライアン・ムーアが凱旋門賞を勝った、遅れて内に入り込むという作戦にしたのですが、なかなか……。もう1つ前に入れれば良かったのですが、後ろの馬が動き出して、結局一番後ろの形になっちゃって。それでも、僕ももう少しジッとしておけば良かったですけど、動き出してしまって、外を回ったので。それで、僕の前にいたヤマカツエースは4着ですからね。やっぱりその差を比べると、もう少し我慢だったかなと。
-:確かに、結果的には内にスペースが出来ていた訳ですよね。
圭太:だから、そこは精神的な部分もあるのですが、僕としての今後の課題ですね。
-:ああいうインを突く考えは、いつ頃からそういう考えだったのですか?
圭太:馬場を見ても内有利ですし、状態も良かったのでね。枠順が出て、ユックリ考えたのは前の日ですよね。ライアンの凱旋門賞の乗り方がイメージに出てきましたから、あれで上手くインに入り込めたら良いなと思っていたのです。
-:でも、戸崎騎手としては、奇襲を打ってきた印象でした。3日目1R(2歳未勝利)のセイウンストリーム(牡3、美浦・水野厩舎)はどうでしたか?
圭太:相手関係的に落とせないレースでしたね。3日間の最終日に臨む自分の精神面がすごく良かったんですよね。そういうのも感じられて、少しずつ成長してきているとは思えましたね。やっぱり昔だったら、もっと平常心を保てなかったと思うんです。それがすごく良い状態で、本当に集中力が高まりましたし、あの1レースは落とせないレースだったので、それこそ集中力は高まっていましたね。すごく良い経験をさせてもらいましたね。
-:3日目は2レースも勝たれた訳じゃないですか。その時に“行けるな”という手応えは。
圭太:(キッパリと)全然思わなかったです。
-:やっぱり後半の乗り馬の差を見ていると。
圭太:それもありますし、ルメールはすごいですから。1日8勝する男ですからね。
▲最後の三日間開催は「これまでに感じたことのない集中力が出た」と振り返る
-:ちなみに、その日はルメールさんとしゃべったりしましたか。
圭太:もちろんしますよ。
-:俺が勝っているぞとか、そういう話は。
圭太:そういうのはないですけど、それこそ毎週会うたび「お互いに頑張ろうね」と言い合っていました。そんな振る舞い全てを引っくるめて、すごく良い騎手ですね。リーディングが確定した時に、最初に「オメデトウ」と言ってきましたしね。
-:へぇ~、それはなかなか素晴らしいことですよね。普通なら、自分のことを考えてしまいますものね。
圭太:ちょうど有馬記念を勝って、抱き合った時の写真がすごく良かったですね。クリストフからやってきてくれたし、お互いに良い戦いをしながら来たのでね。
-:結局、片やリーディングを獲られて、片やホープフルSと有馬記念を勝って、見せ場は大いにあった訳ですね。
圭太:まあ、その御蔭で少し僕が薄れちゃいましたけど、ヘヘヘ。
-:ちなみに三日間開催の土曜日を終えられて、調整ルームとかでも会う訳ですよね。その時もそういう会話とかもする訳ですか。
圭太:そうですね。「お互い頑張ろう」って。
「毎週会うたび『お互いに頑張ろうね』と言い合っていました。そんな振る舞い全てを引っくるめて、すごく良い騎手ですね。リーディングが確定した時に、最初に『オメデトウ』と言ってきましたしね」
-:じゃあ、お互いに健闘を誓って。
圭太:そうです、そうです。良い雰囲気でしたよ。そういう風にしてくれたのはクリストフなんだけど、僕もそういう気持ちになれたし、やっぱり素晴らしいジョッキーだと思いましたよ。
-:いくらお2人に、来年以降もチャンスがあるとは言え、なかなか1年の結果で私情を挟まないというのは難しいことですよね。そんなお話を聞いて、ますます良い闘いだったのだなと思います。そして、JRAに移籍して、4年間、着実に変化されている印象は受けます。
圭太:そうですね。それは言えますね。
-:何か顔つきも、風格というか。
圭太:そうですかね?ハハハ(笑)。
-:前よりも「カッコイイ」というファンの声も増えた気がしますよ。
圭太:そうですか。ひとっつも!僕の耳には入らないですね。今日も南関で乗って、森(泰斗)騎手から「あの(私服の際の)眼鏡は何だ」という、そういう話があったくらいで……(笑)。
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。