'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
人気コーナー!トップジョッキーならではの本音、レースへの意気込みをお届けします!
11月4日時点1555勝
土日ともに重賞制覇のチャンス在り!流れを変える一週間に!
2017/2/10(金)
今週は久しぶりの土日重賞。そして、戸崎騎手はクイーンC&共同通信杯、いずれも大手サンデーレーシングの人気馬に騎乗と否応なく期待が高まるところだが、いまの流れを思えば、結果次第で弾みがつく可能性も大だ。また、不可解な敗戦もあった先週の騎乗馬についても敗因を探ってもらった。競馬は展望だけではなく、回顧も重要。一頭一頭の個性をはかる上でも、是非ご参考にいただきたい。
今年JRA重賞初勝利のチャンス大!目指せ土日連日のV
-:今週は土日で東京の重賞。まず、共同通信杯(G3)のムーヴザワールド(牡3、栗東・石坂厩舎)は調教を含めても、まったくのテン乗り。印象としてはいかがですか?
圭太:見たイメージではキレるよりも、脚を長く使うタイプなのかなと。
-:そういう点でいえば、お姉さん(タッチングスピーチ)と似ているかもしれませんね。
圭太:あぁ、そうかもしれませんね。この勝負服と厩舎といえば、過去にもいい馬に乗せてもらっているので、なんとか依頼に応えたいというところです。
-:ちなみに、いまの東京の芝の具合はどうですか?
圭太:決して馬場が硬いわけじゃないし、なぜあんなに上がりが速いんですかね。スローになりやすいのもあるとは思いますが、馬場もいいとはいえ、少し意外ですね。
▲フローレスマジックの追い切りに騎乗する戸崎騎手
-:レースについては後ほど伺いますが、東京新聞杯などでも超抜の上がりには驚かされました。クイーンC(G3)のフローレスマジック(牝3、美浦・木村厩舎)は追い切りに騎乗されたそうですね。
圭太:流石に血統馬。素質は感じますね。なおかつ元気がいいといいますか、ヤンチャなところもありますね。乗る前から楽しみにはしていましたが、トビも軽いし、瞬発力がありそうですよ。
-:コース適性も問題ないでしょうし、こちらも桜花賞へ向けて、楽しみな前哨戦ですね。重賞以外の話題も伺いたいのですが、土曜6R(3歳500万下)のボーダーオブライフ(牡3、美浦・金成厩舎)は昇級初戦となります。
圭太:前回は枠や展開を考慮して、ハナに行きましたが、本来は控えたほうがいいタイプだと思っています。500万でもやれる馬だと思いますからね。あとは多少、若さもあるので、教えながら、というほどではありませんが、徐々にそこはクリアしていってほしいですね。
-:銀蹄ステークスにはワンダーサジェス(牝4、栗東・石橋厩舎)が遠征してきますが、500万下勝ちの際に乗られていましたね。
圭太:センスのいい走りをしますよね。昇級初戦で相手関係がどうか、ですが、決して前々のレースだけというよりも、追って伸びるタイプだと思います。いい印象を持っていますよ。
▲G1で活躍したエイジアンウインズ、エバーブロッサムらが姉にいるボーダーオブライフ
-:日曜の騎乗馬からは3R(3歳未勝利)のショウブニデル(牡3、美浦・高橋祥厩舎)は再び東京の1600に戻りますね。
圭太:幾らかワンペースなところがありますよね。それを考慮して乗っていきたいです。
-:6R(4歳上500万下)のデナリ(牡4、美浦・田村厩舎)は前走がテン乗りでしたが、大接戦の2着でしたね。
圭太:理想をいえば、レースに集中してほしいですね。距離が延びることは気にならないのですが、そこが今回も課題になりそうです。
-:そういう課題がありながらも、僅差の走りをしているわけですから、能力はクラス上位ですよね。雲雀ステークスのダイワダッチェス(牝4、美浦・菊沢厩舎)はお馴染みの存在になってきました。
圭太:僕が初めて乗せていただいた頃はもっとカリカリしていたのですが、精神的にもずいぶん落ち着きが出てきましたよね。そういうところもあって、今回は千四に使ってもらいますが、どんな走りをしてくれるか楽しみです。
-:左回りも問いませんし、そろそろオープン入りといきたいですね。
圭太:ええ、むしろ左回りのほうがいいかもしれませんから。
-:バレンタインSのソルティコメント(牡5、美浦・藤沢和厩舎)は久々の騎乗。個人的な印象になってしまいますが、戸崎騎手が乗られた当時を思えば、オープン入りしてからの成績が案外な気もします。
圭太:ねえ、僕もそう思いますよ。ここでもやれて不思議ではないですからね。
-:ともかく、今週は土日重賞制覇のチャンスもあるでしょうし、楽しみです。
圭太:ええ、僕もそうなればいいなと願っています。
超久々の制裁・人気馬での敗退も マイペースに一戦を大事に
-:レース回顧も今後のためにしっかり伺いたいと思います。東京新聞杯(G3)のヤングマンパワー(牡5、美浦・手塚厩舎)は休み明けの為か、最後の伸びが今一歩でしたね。
圭太:そうです。普通なら、あそこから差し切っておかしくないですからね。
-:そうですよね。スローでもハイペースでも対応出来ていますし、富士Sでもあんな展開を押し切っていたので、不思議に思っていたので。ラヴィエベール(牡4、美浦・藤沢和厩舎)はいかがでしたか?
圭太:う~ん、これは勝たなくてはいけない馬。能力を信じてはいましたし、どんな展開でも走ってくれると思っていたのですが、結果的に位置取りの差が出てしまいましたね。
-:僕もこの馬のことはかなり評価していて、2走前は負けて強しのレースぶりに驚かされたほどです。ただ、今回のレースについてはちょっと伺いづらかったですね(苦笑)。
圭太:いやいや、これだけの人気馬ですし、避けては通れませんよ。結果を出せず、申し訳ない思いですが、馬は本当にいい馬です。
-:アウェイク(牝4、美浦・斎藤誠厩舎)は不利も大きかったと思いますが……。
圭太:いや、被害を受ける位置にいた僕のミスですね。もうワンテンポ、ツーテンポ、追い出しを遅らせるくらいのところにいれば良かったと思います。
-:馬そのものは周囲を気にするような特性もあるそうで、序盤に多少位置をとらないといけない枠や展開もあったのかと思います。
圭太:まあ、それもあります。道中の展開一つでガラっと結果が変わってくるのも競馬ですから。それでも、今回はもう少し待てれば良かったと反省しなくてはいけません。
-:ちなみに、スムーズな競馬でしたら、どんな結果でしたか?
圭太:普通に乗れていれば、いい勝負をしていたはずです。申し訳ないですね。
-:これは私感ですが、相手が悪かったと思うのがワンブレスアウェイ(牝4、美浦・古賀慎厩舎)です。
圭太:「勝ち馬が強いからしょうがない」とは言えないのですが……もともと重賞でも好走していた馬ですからね。
-:ただ、交わされてからも食い下がっていましたし、昇級初戦ですからね。
圭太:折り合いも問題なかったのですが、強いていうならば、前走のほうが元気はあったかもしれません。
-:それでも、着実に力をつけてきていますね。コルコバード(牝4、美浦・木村厩舎)ですが、このレースで1年4ヶ月ぶりの制裁。こちらは驚かされました。
圭太:う~ん、なんとか守りたかったところなんですけどね。
-:ただ、逆にスタートで前をカットされるような形。あれがなければ、という結果だったと思います。
圭太:そうです。あれは痛かったです。最後はいい脚をつかってくれていますし、あと一歩だったので。
-:上がりの速い今の馬場も克服しますし、昨年は除外続きだったり、もう少しツキさえ回ってくれば……という存在ですね。モクレレ(牡3、美浦・国枝厩舎)は骨折とのこと。驚きました。
圭太:そうだったんですか?初耳です。
-:全治3カ月とのことで、重傷ではなかったのが何よりです。
圭太:「調教で落とされそうになった」というお話はしたと思いますが、馬場入りもゴネたりするくらい、気性面の課題を残している馬でした。厩舎スタッフの皆さんの努力もあって、なんとかここまでたどり着いたといった印象だったと思います。コースでも調教が出来ていないほどですからね。そんな中でも、素質の高さは感じていたので、能力でカバーしてくれたら、と思っていたのですが、そうは甘くなかったですね。
-:良血馬の多いレースでしたが、フラフラしながらもジワジワとは追い込んでくれましたね。
圭太:そうですね。何とか無事にターフに戻ってきてくれればと思います。
-:勝ったレースの話題もしなくてはいけませんね。オリエント(牡3、栗東・藤岡健厩舎)は併せ馬を凌ぎきりました。
圭太:返し馬からドッシリしていましたね。追ってからもしっかりしていて、まだ良くなってきそうです。
-:ダノンキングダム(牡3、栗東・安田隆厩舎)はテン乗りでしたが、最後まで辛抱してくれましたね。
圭太:今回はスタートも決まりましたし、しぶとさを出してくれたと思います。道中もマイペースでいけたのが大きいですね。
「物足りないですね。いや、リーディングをとっても物足りることはないのですが、今の結果は関係者やファンにも申し訳なく思います。これだけ一番人気に乗せていただいて、勝たせていられないわけですから」
-:レース回顧についてありがとうございました!そして、昨年と同じ時期を思えば、たしかに勝ち星は減っています。他のトップジョッキーも同じことはいえるのですが、「不調」という声をよく耳にします。なかなか聞きづらいお話ではありますが、正直な戸崎騎手なので、あえて伺わないと、ということで質問させてもらいます。ご自身の印象として、ここまでの今年の成績についてはいかがですか?
圭太:物足りないですね。いや、リーディングをとっても物足りることはないのですが、今の結果は関係者やファンにも申し訳なく思います。これだけ一番人気に乗せていただいて、勝たせていられないわけですから。
-:ただ、今回もこうしてレース回顧の時間を割いていただきましたが、額面通りの人気を見るのではなく、馬の個性やレース展開なども加味した上で評価してくれたらなあと思います。
圭太:いえいえ、でも、いい馬に乗せていただいていますから。ただ、何勝とか星勘定ではなく、今年は一つ一つのレースをミスなく、キッチリ乗っていければと思っているので。マイペースに徹して、尚且ついい結果が出ればということが理想です。
-:僕は決して不調、スランプだと思っていませんし、雑音を振り払うような結果を残してほしいところですが、そろそろ流れは変わってくると思います。先週土曜だって、決して悪いレースをしていたとは思わないので。
圭太:僕もあまり周囲の声を気にせず、しっかり乗っていきたいですね。改めて頑張ります。
(聞き手:競馬ラボ・小野田学)
※次回は2月17日(金)に更新予定です!プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。