'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
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スプリンターズSはメラグラーナと頂点へ!今年未勝利・G1に対する思いは?
2017/9/29(金)
いよいよ始まるG1シリーズ。我らが戸崎騎手はご存知の通り8度もコンビを組んできたメラグラーナとスプリント界の頂に挑むことになるが、ファンとしては、ジョッキー自身にとっても久々のG1制覇の期待が懸かるだけに、是が非でも勝ってほしいところだろう(コラム担当者も同じく……)。当欄では、パートナーについて幾度となく紹介させていただいたこともあるだけに、今回はジョッキーの大舞台に臨む心構え、注目度の高まる秋シーズンの展望も踏まえ伺った。
「外枠に入ってもらいたいなと思っていた馬たちが内に入ってしまい、その中でやっていかないといけないので、色々とプランは立てたいと思います。いい意味で言えば、外から被されない展開にはなるかと思います」
-:本日もよろしくお願いします!まず、スプリンターズS(G1)を明後日に控え、手綱を執られるメラグラーナ(牝5、栗東・池添学厩舎)は5枠9番に入られましたね。
圭太:ハイ、まずまず良いところかと思います。
-:気になる点は先週までの傾向を見ると、前が残る印象。先週はCコース替わりだったとはいえ、ひと昔前の秋の中山みたいだなと。実際に乗られていての感触としてはいかがですか?
圭太:うん……そういうイメージですね。スプリンターズ自体は去年、一昨年と差しは利いているので、今年もそうなってくれれば良いなと思います。
-:しかし、この枠、馬の並びだと、比較的ペースは落ち着きそうじゃないですか?
圭太:そうですね~。外枠に入ってもらいたいなと思っていた馬たちが内に入ってしまい、その中でやっていかないといけないので、色々とプランは立てたいと思います。いい意味で言えば、外から被されない展開にはなるかと思います。
-:この馬に関しては、これまで色々伺ってきて、まあ特性などは過去の記事を読んでほしいのですが(笑)、ジョッキーとしても手の内に入れられているということですよね?
圭太:まあ……。どうですかね(笑)。そんな偉そうなことは言えないです(笑)。
-:あと一点。前回のレースは池添学先生も「内にモタれるようなところがあった」と言っていましたが、そういったところはありましたか?
圭太:ありましたね。もともとそんなところはあるのですが、前回はコーナーからモタれだしていました。なぜかと言われたら、原因はわかりませんが、今まではそんなこともなかったですし、今回もそんなことはないでしょう。あまり心配してはいません。状態も平均的というか悪く感じることの少ない馬ですが、もっと良くなってくるでしょうし。
-:中京(高松宮記念)も走る馬だと思っていますが、今回はチャンスじゃないかと思っているんです。
圭太:チャンスですよね。陣営もここを狙っていたでしょうし。馬としてもね。いい仕事をしたいですね。
-:この馬のことは今まで色々伺っているので、圭太さん自身についての考え方も教えてください。というのも、G1に対しての思いはどうですか?僕なんかは“だから何だ”としか思いませんが、リーディングなのにG1を勝ってない、という意見もあると思います。
圭太:特には……。以前も今も変わらないです。それはどれも勝ちたいという思いしかありませんから。G1だから勝ちたい?いや、一つのレースとして一緒ですよね。やることも同じですし。
-:レース前の心境はここ最近、変化はなかったりしませんか?
圭太:前よりも落ち着いて臨めている感じはしますけどね。昔は慌てたり、ソワソワしていることもあったと思いますが、最近はそんなこともなく。でも、いい緊張感を持って臨めていると思うんです。
-:最近、緊張するとすれば、G1だけになりましたか?
圭太:いや~そんなことはないです。未勝利でもイッテン何倍ともなれば緊張しますし、勝てたら“あぁ~良かった”とホっとする。やっぱり緊張しますよね。人それぞれだとは思いますが、勝って当たり前の馬を勝たせるのが難しいと思っているので、そういうプレッシャーは今もありますね。
-:しょっちゅう聞いていることで恐縮ですが、“いい緊張感”になったのはいつ頃からですか?
圭太:いつくらいだろう……。去年かな。まあまあ徐々に、です。“あっ!今日から違うな”なんてことはないですから(笑)。
-:最近の中で一番緊張したといえば、どのレースですか?
圭太:先週のオールカマー。緊張といっても大体はしますからね。イギリスなんかは緊張というより、色々な感情があったり、また違った感じですが。
-:特に緊張している時の気配が違うということもないですよね。
戸崎騎手マネージャー:ん~ナイですよね。昔はあったのかもしれんけど、自分を見失うようなことはね。
圭太:そういうのも減っているというか、自分としても昔よりは普通だなと思いますし。でも、前はありましたよ。舞い上がっちゃうような。移籍後もそんなことはあったくらいだし。“緊張”は常にあります。今はそれを冷静に、影響なく乗れているなとは思いますよね。ただ、もっと上手くコントロールして乗れるようになるのかもしれないし。
-:声を大にしては言えませんが、僕も予想を出すような身としては、結果的にG1を勝てるような馬にバンバン乗れていないことも事実なのかなと。
圭太:いやいや、結果がすべての世界ですから。結果は結果として残ってしまうけど、その中で自分がどう乗るか……。余談ですが、新聞の記事で(体操の)内村航平さんが「連覇とかじゃなく、自分を高めることだ」とカッコいいこと言っていましたよ。そういう精神的な強さは素晴らしいと思いますね。でも、僕らって結果がすぐに出てしまう世界なので、なぜ負けたのかとすぐに考えなくちゃいけないのですが、僕としては、その中で自分を高めるのが一番なのかなと。
-:競馬の場合だと、ジョッキーとしては個人成績に終始できない辛さはありますよね。
圭太:そうですね。その中で自分を高めていくのが大事なのかなと。
-:成長できている実感というのは最近ありますか?
圭太:徐々にですが、それは感じます。だからこそ、まだまだだなと思えます。
-:僕も競馬をわからない中でも色々観させてもらって、変化は感じるのですが、まだまだ伸びる余地があるということですね。
圭太:(力強く)まだまだですよ。それは気持ち次第じゃないですか?幾つになっても成長は出来ると思うので。
-:色々聞かせてもらいましたが、今週で中山も終わり、東京・京都と移ります。そこへ向けての意気込みも聞かせてもらえますか?
圭太:3カ月……。長いですね(笑)。「自分を高める」と言いつつ、リーディング争いとは矛盾していますけどね(笑)。僕としては連覇したいところなので、この順位を維持出来ればと思っています。
-:この秋は関東にフランスのシュミノー騎手が来ますし、ムーア騎手も来るでしょう。所属は別でも、他にもボウマン騎手やクリスチャン・デムーロ騎手なども来られますよね。昨年の秋は外国人騎手が来た辺りから、東京で勝ちあぐねていたので、そこが気になります。
圭太:それはもう……俺にはどうしようもないですし、毎年のことですから。でも、やるべきことは一つ。これは矛盾しない話ですよ。頼んでもらった馬で結果を出すしか無い。一つ一つのレースを大事に乗って、勝利を掴むにはどうか、というね。
-:でも、勝つペースは落ちていたわけですからね。
圭太:そうですね。落ちると思いますよ、今年も。いや、落ちないかもしれない(笑)。ただ、そこまで星勘定なんてしていませんからね。僕の立場が気にしていちゃダメですよ。
「応援してくれる人が沢山いることをひしひしと感じています。でも、そういう人たちのほうが喜怒哀楽があり、敏感かもしれない。だからこそ、結果を出して、「良かったね」と笑って終えられることが一番でしょうから」
-:去年、ルメールさんの1日8勝を現場で見ると、リーディング争いを応援している身としては“こりゃダメか”と思うワケです(笑)。
圭太:そうなんですよね。偉そうなことを言っていますが、応援してくれる人が沢山いることをひしひしと感じています。でも、そういう人たちのほうが喜怒哀楽があり、敏感かもしれない。だからこそ、結果を出して、「良かったね」と笑って終えられることが一番でしょうから。だから、狙わないといけないし、やるべきことをやらないといけない。そういう思いはあります。
-:ありがとうございます。僕も残りの争いを陰ながら応援しております。さて、通常というか、騎乗馬の話題を伺うと、土曜中山3R(3歳未勝利)のライバーバード、6R(3歳上500万下)のコルコバード、7R(〃)のダノンアイリスとどうですか?
圭太:ライバーバード(牡3、美浦・手塚厩舎)はモマれ弱いところはあるので、上手くいい位置を運べれば。このコースは合っていますね。コルコバード(牝4、美浦・木村厩舎)は久しぶりなので、状態はわからないですが、力は通用しますから。ちょっとモタつくところはあるので、そういうところを影響しないような乗り方が出来れば。前回、馬体重が増えていたのは良かったですね。ダノンアイリス(牝4、美浦・尾関厩舎)は前回よく頑張ってくれましたね。スピードを活かした競馬が出来ればいいですね。前回は砂を被らないよう意識させました。
-:習志野特別のミッシングリンク、秋風ステークスのヴェネトも騎乗経験がありますね。
圭太:ミッシングリンク(牝3、美浦・斎藤誠厩舎)は先行力があるので、先週までの馬場ならいいですね。ヴェネト(牡5、栗東・藤原英厩舎)は新馬の時も能力は感じていました。すぐには結果が出ませんでしたが、ここ最近は充実してきたようで楽しみです。
-:日曜に替わって、3R(3歳未勝利)のリフトトゥヘヴン、8R(3歳上1000万下)のタケルラグーン、勝浦特別のサレンティーナも気になります。
圭太:リフトトゥヘヴン(牡3、美浦・加藤征厩舎)は(3歳未勝利が)最後なのでね。どうこう言わず、結果を残せたら。タケルラグーン(牡5、美浦・池上弘厩舎)はいい末脚の持ち主。終いが活きる競馬になってほしいですね。サレンティーナ(牡3、美浦・萩原厩舎)は前走も惜しい競馬でしたし、千二になってから安定して走ってくれているので、しっかり結果を出したいです。
-:来週は東京盃(Jpn2)でショコラブラン(牡5、栗東・浅見厩舎)に騎乗されます。前回の競馬を見ると、巻き返せる余地はあるように思うのですが。
圭太:僕も前走乗せてもらった門別は、外枠で展開も向かなかった感を受けました。この馬も能力を感じますし、このクラスでもいい競馬は出来る馬なので決めたいところです。
-:今週はG1に始まり、色々とありがとうございました。
圭太:ハイ、ありがとうございました。
(聞き手:競馬ラボ・小野田)
※次回は10月1日(日)に更新予定です!
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。