'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
人気コーナー!トップジョッキーならではの本音、レースへの意気込みをお届けします!
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祝・JRA通算1000勝達成!七夕賞はストロングタイタンに騎乗!
2019/7/5(金)
先週の福島競馬では、晴れてJRA通算1000勝のメモリアルVを達成した戸崎圭太騎手。JRA&NAR双方での4桁の勝利は史上4人目という偉業となったが、栄光もつかの間、週末の福島競馬、次週の交流Jpn1・ジャパンダートダービーがやってきた。節目の勝利を挙げても尚、目前のレースを丁寧に乗ることが目標というジョッキー。夏競馬は注目度が下がってしまうシーズンであることは否めないが、当コラムを通じて引き続き戸崎騎手の奮闘に注目いただきたい。(聞き手:競馬ラボ・小野田)
-:改めて、先週はJRA通算1000勝という大きな節目を決められました。おめでとうございます!数日経たれ、気分はどうですか?
圭太:ありがとうございます!残り1勝で足踏みせず良かったなと思います。これがもっと持ち越し、持ち越しになると、段々とプレッシャーも掛かってきたでしょうし、あと一つを残して長引くケースはよく聞くのでね。そうならなくてよかったなと。また、やっぱり1000勝だと、周りからのお祝いの声もたくさん聞けるので、ありがたく思いますね。
-:地方出身じゃないと出来ないことだと思いますけど、JRA、NARでのダブル1000勝はアンカツさん、内田博幸騎手、岩田康誠騎手と今まで4人しかいない訳ですから、すごいことですよね。こうなったらやっぱり地方出身騎手での最多勝も狙いたいところですよね。
圭太:まあ、そうですね。ただ、狙うには次の1勝、目の前のレースが大事だと思います。その積み重ねだと思いますからね。次のレースを丁寧に乗ること。そこを重視したいです。
-:先週土曜日の福島は、あくまで僕が見ている限り、馬券を買う目線で予想すると、勝てそうかなというところもありましたが、これは致し方ないな、という思いもありながら見ていました。心境的にはいかがでしたか。
圭太:土曜日は雨も降っていて、馬場も馬場だったので、どんなレースになるのか、未知数なところが大きかったですからね。前半戦は人気もしていたので、本当は前半で決められれば良かったのかもしれないですけどね。
-:土曜日の福島は、終盤にかけて強い霧雨のような状態でした。雨が降りだしていない7レースで決まったことは良かったですね。
圭太:ああいう状態になると、やっぱり得意、不得意が出てきてしまいますからね。
-:根本的に、人気は良馬場での成績を前提に作られている訳でしょうから、人気馬に乗っている場合は、逆に分が悪くなることもあるのかなと。特に東京最終週は土曜の雨の影響もあったと思います。焦りはなかったですか?
圭太:でも、前半は人気していたので、それを落としているのは気になりましたね。早く勝てれば良かったですし、人気もしていたので、それを裏切っていたので…。そこが気になっていたわけで、1000勝を決めることに限っては、特別、焦りはなかったですけどね。
-:その中で、先週土曜の(2歳未勝利4着の)ゴールデンエポックは、距離が長かったのではないでしょうか。他のジョッキーが乗っていた前回はステッキを入れると、尻尾を振ったり、気性の難しさも感じさせました。実際に追い切りに乗られてから、レースに乗っての癖やテンションは印象と違った感じでしたか?
圭太:ちょっとムキになって走っていて、なだめられなかったですね。追い切りと違ってテンションが高くなるというか、真面目になり過ぎるのかもしれないですね。一生懸命になっている感じはありましたね。
-:(3歳未勝利牝馬限定3着の)アルジェンタータはフットワークを見てもモサモサしている印象を受けたのですが、いかがだったでしょうか。
圭太:前走の映像を見ても、テンは行けないだろうなと思っていましたし、他力本願的なところがあるかもしれませんね。2走前に好走した際も展開は向いていたようですからね。
-:(3歳未勝利3着の)ストームリッパーは開幕週の1800m戦で外枠だったので、人気はするだろうけど、乗りづらいんじゃないかと思いました。
圭太:スタートで接触して、勢いが付かず、後ろからになったのですが、道中で上がっていけたので、圏内に入れられたので良かったかと思いましたが…そこから伸びあぐねてしまいましたね。ちょっとワンペースなところがあるかもしれません。
-:(2歳新馬3着の)テリオスヒメは追い切りにも乗られていましたが、いかがでしたか。
圭太:ハミ受けが心配だったんですけど、良いスピードを見せてくれて、ハミ受けを気にするような展開にはならなかったですね。もう少しでしたね。
-:そして、1000勝目となった(3歳未勝利1着の)エクリリストワールにはこれまで何度か乗られていましたが、快勝でしたね。
圭太:馬はとても良くなっていましたね。精神的にもそうでしたし、操縦性も良くなっていましたし、走りのバランスもすごく良くなっていたので、そこに感動したといいますか、嬉しくなりましたね。大変な気性の馬だったので、手掛けてくれたスタッフのお陰だと思いますよね。
-:1000勝についての話題はまた伺う場もあるのでは…ということで、こんな程度にしておきます(笑)。
-:今週ですが、七夕賞(G3)にはストロングタイタンと挑みます。一昨年の秋以来という久々の騎乗ですね。
圭太:その後に重賞を勝っている馬ですから、能力を上手く引き出せればと思いますね。一度、乗せていただいた際は一旦、交わされながらも、盛り返すしぶとい競馬でした。このところ成績が安定していないようですが、当時は3着以下を引き離していましたし、いいイメージはあるので。
-:日曜日は先週ほどの雨ではなさそうな予報ですね。
圭太:降る量にも寄りますけどね。前回、乗せていただいた時は降っていましたが、レコード勝ちしているくらいですから、良馬場の方がいいんじゃないかと思っています。
▲重賞2勝目がかかるストロングタイタン(3日撮影)
-:土曜日の(3歳未勝利の)シゲルグリンダイヤは2戦連続2着と来ています。
圭太:勝ちに等しい競馬をしているんですけどね…。競馬は乗りやすいですし、チャンスは十分なのかとみています。
-:(3歳未勝利の)小島茂之厩舎のソーシックという馬はこの時季ながら初出走。しかし、追い切りには乗られていましたね。
圭太:前向きさはありましたね。初出走ですけど、その気性面を活かして、気持ち良く、リズム良く行ければと思いますけどね。
-:8R(3歳以上1勝クラス)のトゥーフラッシーは昇級初戦、古馬とも初対戦ですね。
圭太:器用な馬でローカルのコースも合っていますからね。引き続き楽しみです。
-:阿武隈Sのサトノキングダムに乗るのは久々ですね。
圭太:能力は高いものを持っている馬なので。僕が乗っていたレースではありませんが、昇級初戦の前走も好走していましたからね。
-:(3歳以上1勝クラスの)クリップスプリンガは東京の1400mで乗られて、2・2・3着。もともともっと長い距離を走っていたとはいえ、距離延長となります。
圭太:1400がベストかなと思いますけど、1700も悪くないかな、こなせるんじゃないでしょうか。
-:日曜日から福島4Rの(3歳未勝利の)スマートエリスは追い切りに乗られたようですね。
圭太:力はある馬ですね。他の馬に乗った際でも、同じレースでみていましたけど、未勝利を勝っていい馬だと思います。
-:織姫賞のシングフォーユーは昇級しても好走していましたね。
圭太:500万(1勝クラス)では上位の存在でしょう。競馬も上手ですし、立ち回りも運びやすい印象ですね。コースも合いそうなイメージです。
-:その他のレース回顧もよろしくお願いします。(郡山特別1着の)レッドアネラは厳しいペースでしたが、押し切りました。
圭太:スピードを活かした競馬が出来ればと考えていました。正直、最後は止まってしまいましたけど、勝ち切れて良かったなと思いますね。
-:(テレビユー福島賞の)モアナは僅差の4着でした。戦前から話していた通り、コース適性の差でしょうか。
圭太:久し振りの1200mということもあって、コーナーで促すような形になってしまいました。そこで持っていければ、また違う結果だったと思いますからね。懸念していた通り、1200mの流れに戸惑っている感じは受けましたね。
-:(2歳新馬13着の)ネージュフォレストはちょっと意外な結果でした。
圭太:追い切りではすごく乗りやすかったですし、動きも良かったです。ただ、調教はあまりしっかりやっていなかったと思うのですが、表現が難しいところですが…その分、気性の悪さを出してしまいましたね。
-:馬場が敗因という訳ではないと。
圭太:馬場もあるとは思うんですけど…。逆に賢過ぎるのか、攻め馬とは違いましたね。初めてのレースに戸惑っているのではなく、遊ばれているような感触でした。普通に走りさえすれば、いい勝負になる馬なのですが。
-:(さくらんぼ特別7着の)ヴェルスパーはどうだったでしょうか。
圭太:ゲートの中が煩くて、(スタートが)遅れましたけど、もう少し伸びても良かったのは本音。これは馬場かなという気はしますね。
-:似たような場ところから来た馬もいましたからね。
圭太:はい。その日の最終レースのフィルムフェストも同じ敗因です。
-:(猪苗代特別1着の)ビルジキールはレコードを更新する快勝でしたね。
圭太:地方の交流で勝って、強い勝ち方をしていましたが、中央場所でもこれだけ強い勝ち方を出来るとは驚きでした。先が楽しみな馬だと思いますね。
-:ラジオNIKKEI賞(G3)のブレイブメジャーはいかがだったでしょうか。
圭太:前半は良い感じで走っていたのですが、最後は一杯になってしまいましたね。やっぱり本来は距離がもう少し短くてもいい感じはしますね。馬場は大丈夫だったのですが。
-:そして、次週ですが、大井競馬場ではジャパンダートダービー(Jpn1)が行われます。デルマルーヴルは今回が初コンビ。追い切りに乗られたようですね。
圭太:最初に乗ったのが2週前くらいだったのかな。「追い切りではもともとそんなに動く訳ではない」と聞いていたのですけど、その時はスイッチが入っていなかったのでしょうね。モタモタしていて、大丈夫かなと思ったほど…。ただ、今週乗ったら、全然違いましたね。やっぱり良い馬だなと思いました。2週前も跨った感じ自体は良いモノがあったので。
-:早い段階から成績が良かった分、逆に底があまり分からないといいますか、能力の限界値がどのくらいなのか、未知数な面も感じました。ただ、UAEダービーも後手を踏みながら、最後まで伸びていましたし、そう伺うと楽しみですね。
圭太:立派な馬ですよ。競馬では前半に付いていけなかったり、そういうところは気をつけないといけませんが。距離も3歳同士なら問題ないはずです。
-:相手(クリソベリル)は強いですね。
圭太:あの馬「も」強いですね。楽しみを持って挑みたいです。
-:1000勝を達成されて、次のメモリアルに向かって、というわけではないですが、勝ち星を重ねられています。1000という数字は目標にされていたと思いますけど、次の目標は出てきたのでしょうか?
圭太:いや、意識はしていたのですが、目標にしていた訳ではないんですけどね。だから、変わらずに次のレースを、明日のレースを丁寧に乗っていくという意識です。
-:あくまで節目に到達したということで、何か次に向けて、これがというのはない訳ですね。
圭太:そうですね。特別にはありません。もちろんどのレースも勝てるにこしたことはないですし、勝ちたいですよ。
-:ちなみに、夏の遠征予定はありますか?
圭太:今のところは札幌記念(G2)のクロコスミアですね。
-:最後に、読者からの質問で「もらって嬉しい誕生日プレゼントはありますか?」とのことです。来週で39歳になられるということで、タイムリーな話題ですね。
圭太:いやぁ…特には(笑)。もらえるだけ幸せですよ。色々、モノを選ぶのだって、何がいいかなど、その人の時間を割いてくれているわけですからね。最近では僕が食事も気をつけてくれていることを考えた上で美味しいものを選んでくれる方もいるようですから。そうじゃないパターンもありますけど、それはそれで嬉しい限りです。
-:一足先に、誕生日(7月8日)おめでとうございます。メモリアル勝利に続き、晴れやかな話題が続きますが、競馬でも更にそんな結果を残していただけることを祈ります。今週もありがとうございました!
圭太:ありがとうございます。
※次回は7月12日(金)に更新予定です!
戸崎圭太騎手への質問にご投稿いただいた皆様、ありがとうございました!「質問をいただいた方」から抽選で3名様にJRA通算1000勝のレース写真をプレゼントいたします。
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。