'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
人気コーナー!トップジョッキーならではの本音、レースへの意気込みをお届けします!
11月18日時点1558勝
今週は2本立て!天皇賞・秋は3着で勝利ならず&7年連続年間100勝を達成!!
2019/11/1(金)
またしてもG1制覇ならず。先週は土曜に3勝をマークしたものの、アエロリットとの再コンビで天皇賞・秋に騎乗し3着。今年はG1レースでの上位入線は多いとはいえ、残念ながら久々の勝利とはならなかった。G1谷間週の今週は、通常通り週末の騎乗と月曜に行われるJBC競走や古巣・南関東競馬にまつわる話題の二部構成でお届けしたい(聞き手:競馬ラボ・小野田)。
-:まず、アエロリットと挑んだ天皇賞・秋(G1)は3着という結果でしたが、いかがでしたか。
戸崎圭太騎手:騎乗したのは安田記念以来でしたけど、当時よりも、さらに馬は良くなっている雰囲気でしたね。その良くなっている部分というのは、バランス面もありますし、収縮して走れていましたし、全体的な走りですね。枠順(5番)も良かったですし、スタートを決めて逃げる頭でいましたので、あとはペースをどれくらい落ち着かせて行けるかというのが鍵。作戦としては(1000mを)59秒辺りで行ければ良いかなと感じでしたので、結果、ちょうど良かったですし、それは計った訳ではなく、感覚的なものですけどね。馬もリズム良く行けて、いつも交わされてから差し返す競馬が続いていたので、早めにトップギアに入れておくために、早めに仕掛けるというイメージだったのですが、結局そうしているんですけど、やっぱり一度サートゥルナーリアに交わされて、また差し返してという同じような形にはなりましたね。ただ、馬としてはスゴく頑張ってくれました。レースは思い通りに行けましたし、負けてしまいましたが…。
-:今回は距離の課題もありましたし、先週も「前半から飛ばしていくというよりは、リズム良くいって、長く脚を使えるようなペースに持ち込めれば…」という感じで伺っていたのですが、展開としては理想通りだったということですね。
圭太:もっと良くしようと思えば、出来たところもあると思いますけど、馬はよく頑張ってくれましたね。
-:盛り返すのは、フットワークが大きい分、いつも坂で鈍るのですか。
圭太:いや、そういう訳ではなく、僕のイメージとしては、1ハロンだけで言えば、いくら気合いを入れても速い時計が出ないですかね。結局、一番速くなるところでサートゥルナーリアに交わされているので、こっちが伸びているというよりも、同じ時計で走れているといえばいいのか。
-:失速しない感じですね。スピードの落ち込みがなく、逆に速まらず。一定スピードでずっと行く感じですね。レースの展開が速くなっているところでちょっと置かれて、周りが踏んでいって、バテたところを。
圭太:最後の1Fは大概、時計が掛かりますからね。そこで追い付いているという。
-:直線でインが空いていたことを不思議に感じる人もいたと思います。もともと右に張る面があったと思うのですが、そこはどうでしたか。以前に比べたら、パトロールビデオを観ても、目立ったほどではなかったのかなと感じましたが。
圭太:先程と重複するところで、その辺はバランスが良くなっていて解消されていましたね。まだ多少はありますけど、乗り辛さレベルではなかったです。
-:レース時の馬場に関してはどうでしょう。金曜日にあれだけ雨が降っても、土曜日にレコードが出ていましたからね。アエロリットにとっては良かったのでしょうが。
圭太:週中に雨は降っていましたけど、時計は速いですね。それは今週に限ってではないですけど、ちょっとイメージとは違うといいますか、乾きが早いですよね。
-:馬自身は初の距離もこなして、自分から意見させてもらうと、総じて頑張った内容かなと思います。どうでしたか。
圭太:そこは周りの方が判断することなので…。僕は僕で他に出来ることがなかったのかとか、今後に活かせる材料があれば、それを見つけなきゃいけないなと思いますしね。
-:ちなみに、レース映像を観ていた人は、入線後、笑っていたことが気になった人が多いと思うのですが、あれはアーモンドアイに驚いたことへの笑いでしたか。
圭太:スゴいですね。ちょっとした隙をあの脚で抜いているんですからね。あとはクリストフ(ルメール)の落ち着きも、改めてスゴさを感じましたね。あの位置で進路を見つけるのに、どこを抜こうかというところで一つも慌てていないですから。なかなか出来る芸当ではないかなと。
-:今年のGⅠは複勝率50%という高い数字を残しています。ダートグレード競走のJpn1を含めても半分以上、馬券になっています。
圭太:複雑な思いですね。応援してくれているファンの方には、馬券的に貢献出来ている部分もあるのかなとも思うし、やっぱりこの世界は勝利しないと、1着じゃないと意味がないというのもありますから。
-:応援する人も間違いなくいるので、そういう人たちからすると、今年のヴィクトリアマイルみたいに人気薄でも持ってきてくれると、やっぱりそこは嬉しいと思いますからね。人気と比例すれば、それでも満足してくれるファンもいるでしょうから。
圭太:そうですね。まあ、でも、勝ちたいですよ。
-:続いて、今週末の話題ではファンタジーS(G3)のマジックキャッスルですが、福島で新馬勝ちを収め、距離延長の中山で2着惜敗でした。
圭太:新馬は本当にポテンシャルの高さを見せてくれる強い競馬でした。距離ももう少しあっても良いなという感じだったので、前走(サフラン賞)は1600mになりましたけど、距離が長くなって負けてしまったという敗因ではなかったですね。少しフットワーク的に硬さが感じられたのですけど、水曜のトレセンでも「良くなって解消している」という話を聞きましたので、この馬のポテンシャルだったら、良い走りをしてくれるんじゃないかと思いますね。
-:厩舎的にも、前回は硬さについて課題は挙げられていたのですね。
圭太:そうですね。「新馬の時よりは」とは。他は、繊細なところがある馬で、輸送が気になりますね。小柄な馬でもありますし、あまり体重が減ってもらいたくないという懸念はありますね。
-:前回でも432キロでしたからね。
圭太:そこはポイントかなと思いますね。
-:今回は1400mになりますけど、マイルでも大丈夫なら、問題なさそうですね。
圭太:1200mで勝っているくらいなので、問題ないなと思います。輸送やテンションの課題はありますが、ディープインパクト産駒らしい、フットワークの良さを持っているのでそこを活かして頑張ってほしいですね。
-:今後牝馬のクラシック路線でやっていく上では、輸送も経験というか、慣れないといけないですからね。土曜京都1R(2歳未勝利)のヴァーユ、貴船Sのクライシスは騎乗経験がある馬でしたね。
圭太:ヴァーユは気難しさなのか、手応えほど伸びないイメージですね。乗り味はいいものがあると思うのですが。クライシスは押したり、引っ張ったりすると駄目なタイプ。繊細なところがあるのでジッと構えて、この馬のリズムで運んで、流れが向いてほしいタイプですね。
-:日曜東京2R(2歳未勝利)のサトノグリアンはダート替わりになります。3R(2歳未勝利)のプラットフォーマーも前回は良いペースで粘り込んでいる感じがしたのですが。
圭太:サトノグリアンは前走もスタートと前半はセンスを見せてくれたので、ダート替わりで変わり身を見せてくれればと思いますね。プラットフォーマーはテンションがちょっと高く、鍵にはなると思いますが、良いリズムで走れれば引き続きいいですね。
-:7R(3歳上1勝クラス)のオーバーディリバーは、他のジョッキーが乗られていた未勝利戦が強い勝ち方だなと思っていました。追い切りには乗られたそうですね。
圭太:はい。前走もレースで乗せていただく予定だったのですけど、僕が(追い切りで)乗った時はまだちょっと重たい感じがあり、1週延ばして、レースに乗れなくなったのですけど、能力はその時から感じていましたね。まだ若さがあって、気性面で気になる部分はありますが、ポテンシャル的には高いですね。
-:休み明けはどうですか。
圭太:特に問題ないなと思いますけどね。追い切りも素軽さがありましたし、気性面だけですね。
-:9R(3歳上2勝クラス)のキングリッドは引き続き1600m戦ですね。
圭太:ベストは1400mというイメージはありますけど、上手く道中リラックスさせて、最後の切れ味に懸けたいですね。枠順も内が良いですね。
-:錦秋Sのアームズレングスは東京コースの相性がいいですね。
圭太:前回は僕が乗っていなかったレースですが、同じレースに乗っていて、このクラスでもやれるものを感じました。コース適性の高さをみせたいですね。
-:アルゼンチン共和国杯(G2)のタイセイトレイルのイメージはありますか。
圭太:「スゴく乗りやすい」とは聞いていますので、長い距離ですし、その辺はプラスになりそうですね。
-:続いて、ここからはレース回顧もお願いします。紅葉Sで2着のモズダディーはいかがだったでしょうか。
圭太:「揉まれ弱さがある」とは聞いていました。1番枠でしたし、ハナでも良いかなと思っていました。外が主張してきて(ペースも)速くなりましたので、控えたのですけどね。昇級戦ながら通用する力は感じましたし、渋太い馬だと思います。
-:2歳新馬のシチリアフレイバーは新馬戦らしくペースがちょっと遅かったですけど、上がり勝負にも対応しましたね。
圭太:追い切りに乗った時から、とてもフットワークが良い印象でした。ただ、使って良くなる感じもありましたし、新馬ではどうか、使ってからかなという感じでしたけど、よく走ってくれました。馬主さんには地方の時からスゴくお世話になっていて、今でも地方に行くと、依頼をしてくれる方です。負けてしまいましたが、走ってくれて嬉しかったところは本音です。
-:いま注目の大井の生え抜き、モジアナフレイバーと同じオーナーですね。3歳上1勝クラスを快勝したのはアンダープロミスでしたね。
圭太:これは、前回が自分のミスで負けているので、今回は責任重大だなと思っていました。大外(13番)でしたけど、力は上だと思ったので、ある程度、自信を持って、強気な競馬をしました。それに応えてくれましたし、期待以上の強さを見せてくれましたね。
-:ロマンティコの除外で発走を待たされたことはあまり問題なかったですか。
圭太:ちょっとテンションは高かったので、この先、落ち着いてくれれば良いなと思いますが、待たされたのも我慢してくれていましたね。
-:神無月Sで2着のブルベアイリーデは休み明け2走目で巻き返してくれましたね。
圭太:馬も良くなっていましたね。レース振りも切れ味が増して、もう1列前で競馬が出来ればという感じでしたけど、そこに行ったらちょっと良い脚が削がれるかなとも思いながら…。強いて言えば、もうちょっと早めに踏んでいければ良かったというのもありますし、色々ポイントはありますけど、このクラスでも通用する馬ですね。
-:神奈川新聞杯で3着のアフランシールはプラス体重(26キロ)でしたが、問題なかったですか。
圭太:どうなのかなぁ。跳びの大きな、フットワークのユッタリした馬なので、そんなに器用さがあるタイプでもない感じ。切れ負けという結果ですね。
-:上がりが掛かった方が良いタイプですね。
圭太:そうですね。逆に、もう少し距離があっても良い感じはしますし、もともと洋芝でいい血統らしいところはありましたね。
-:3歳上1勝クラスのエトワールは接戦でしたが、休み明けをモノにしました。
圭太:久々に乗りましたけど、馬も成長して力強くなっていました。その分、ゲートもシッカリ出てくれて、良いところで競馬が出来ましたね。もともと乗りやすい馬なので、良いところを抜け出せて、勝てて良かったです。
-:これは年間100勝目。場内用のインタビューがなぜかなかったようですね。
圭太:タイミングが悪かったみたいですね。「今回は写真だけで」とのことでした。
-:年間100勝はもちろん達成して良いことだと思いますけど、通算のメモリアルとはちょっと違いますよね。そこはどうでしょう。
圭太:でも、年間100勝というのは一つの最低限の目標というか、達成したい数字ではありますよね。
-:7年連続ですから、スゴいですね。
圭太:ありがたい話ですよね。最近は1000勝の達成もそうですし、続けられているということがスゴく嬉しいし、何か自分の中で頑張ってやってきた成果がそこに表れているので、まだまだですけど、一つずつクリアしていっているのかなという感じはしますけどね。
-:今年はインフルエンザでお休みがありましたけど、JRA移籍以降、騎乗停止もほぼなく、怪我での長期の戦線離脱もなく、来ている訳ですからね。日々の節制の賜物ですね。
圭太:少しは役立っているというか、成果は出ているのかなという感じはしますよね(笑)。
-:先週の土曜日はけっこう相手が強いレースが多かったと思いますが、3歳以上1勝クラスで3着のボヘミアラプソディはいかがでしたか。
圭太:あそこもちょっと2頭が強かったでしたね。馬自体は一度叩いて、反応も良くなっていましたけど、ああいう形でしか競馬が出来ないと思っているところもあり、良くなっている中で走ってくれたなと。
-:2歳新馬のサトノレガリアは5着でした。
圭太:前半嵌まりが悪くて、ちょっと付いていけなくて、追走が厳しかったのですけど、勝負所から温まってきましたね。フットワークも良くなってきて、長く良い脚は使ってくれましたけど、良くなるのはまだ先かなという感じですね。
-:2歳新馬のアオイクレアトールは押し切りましたね。
圭太:追い切りから良い動きをしていましたし、初戦にしては上手な競馬をしていましたね。まだ頭が高いところがあるので、そこが解消されるともっと良いかなと思いますね。
-:2歳未勝利で2着のレットミーアウトは時計的にも未勝利としては速い決着だったのかなと思います。
圭太:まだちょっとモタモタして、気持ちが入っていない、スイッチが入っていない感じで、能力だけで走ってきているような感じなので。未勝利クラスはすぐに卒業出来ると思いますけどね。
-:もう11月ですけど、年内は残り2カ月となりましたが、何か気持ちの変化はありますか。
圭太:いや~、早いですね。
-:来週から外国人ジョッキーも増えてきますね。
圭太:そうですね。凄まじい戦いになりますね。
-:しかも、今まで以上にスゴい人ばっかりですからね。
圭太:そうですね。そういう中で刺激を受けながら、結果も出さなきゃいけないなと思っています。本当に厳しい戦いというか、甘くないと思っていますので、一つ一つのレースを、より一層大事にしていかないといけないなという思いですね。
※次回は11月3日(日)に更新予定です!
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。