'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
人気コーナー!トップジョッキーならではの本音、レースへの意気込みをお届けします!
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さあダノンキングリーと安田記念へ!度重なる騎乗依頼に「結果で応える」
2020/6/5(金)
目標と決意の一戦へ。ご存知の通り、昨年11月の落馬負傷による長期戦線離脱から復帰を果たした戸崎騎手。最長でも全治9カ月とも診断された大怪我の中で、リハビリ中の一つのモチベーションがダノンキングリー陣営からの騎乗依頼だったという。今回は晴れて再コンビ結成となるが、いつになくダノンキングリーに期する思いと陣営への感謝を包み隠さず、言葉にしてくれた。
昨年の毎日王冠以来、238日ぶりに騎乗 相棒の成長を実感
——復帰2週目の先週は残念ながら初勝利となりませんでしたが、今週は土曜が6鞍、日曜が2鞍の予定。乗り鞍も増えてきましたね。腕のコンディションも週ごとに上がってきましたか?
着実に上がっていることは確かですが、状態も何も、何度も乗せてもらっているわけですし、しっかり乗らないといけませんからね。レースに乗っている以上、言い訳になりませんから、早く結果を残したいです。
——今週はそろそろ復帰後、初勝利といきたいですね。一番の注目は安田記念(G1)だと思います。先週の段階ではダノンキングリーの1週前追い切りに乗られていなかったようですが、金曜日の調教に乗られて、今週の追い切りにも騎乗されましたね。てっきり1週前には乗らないんだなと思っていましたし、意外な騎乗スケジュールですね。
▲今週の美浦トレセンでダノンキングリーの追い切りに騎乗する戸崎騎手
すべて萩原(清)先生の依頼で動いた形ですが、先週の段階では、最終追い切りに乗る予定がありませんでした。久々の騎乗でもあるので、感覚を掴んでほしいということで金曜の調教に乗せてもらいましたね。そこから最終追い切りは厩舎スタッフの方が乗る予定だったところ、もう少し攻めたいということで、結果的には乗ることになりました。当初から高いレベルにあった馬でもありますし、デビューから大きく馬体重も変わっていませんが、先週の段階で力をつけているのがわかりましたし、体の幅も出てドッシリした印象でしたね。
——以前は精神的に元気のいいところがあり、追い切り以外の運動では乗らないようにしていると言っていたと思います。それだけに金曜日に乗っていたことは意外でした。
まあ、その辺りも相変わらずやんちゃな面はありますよ。そういう側面も含め、精神的にも大人になってきた感覚は受けました。今週の追い切りは本来ならばもう少し徐々に加速させていかないといけないところですが、行きっぷりが良すぎて併せ馬になっていなかったですね(苦笑)。動きやリズムは良かったし、反応も良く、状態自体は良い具合に来ていると思います。
——リハビリ期間中もダノンキングリーについてはコメントしていただきましたが、客観的に見られていて、どう感じましたか?前走の大阪杯は僕としては、ちょっと気になる負け方でした。
総じてダノンキングリーが気持ちよく走っていると感じました。そこはさすが(横山)ノリさんだなと。マイルCSなんかはもともと体幹がもう少ししっかりして欲しいと思っていた分、京都の下り坂が良くなかったのかもしれないですし、京都、阪神での結果を見ると、長距離輸送が得意じゃなかったのかもしれませんね。前走もペースこそ速くはありませんが、今までと違う競馬の形でマークもされて、負担の掛かる競馬になってしまったのかもしれません。体幹の面も今回、乗せてもらって良くなったと感じましたし、東京のマイルという舞台は常々合うと思ってきたので。
——クラシックの時も距離が本来の適性よりは長い可能性を感じつつ、克服していきましたよね。今週の東京の芝はCコース替わりの2週目。先週、乗られて芝の状態はどうですか。
時計は速いのですが、硬いわけでもなく、走りやすい馬場状態だと思いますね。ただ、馬にとって時計が出るということはそれなりに負担も掛かっていると思うので、そこは歓迎し辛いところではありますよね。傾向的には前残りもありますが、差しが届かないわけではないですよね。ただ、ある程度、位置はとっている方がいいでしょうね。今回も外枠よりは内枠の方が理想です。
——僕も観ていて、全く差せない馬場ではないとは感じました。ダノンキングリーにとって日曜に傘マークがついていることは歓迎できない材料ではあると思います。もちろん天気「予報」なので変わる可能性はあるでしょうけど。
天気は気にはしていましたけど、それは知らなかったですね。ただ、今の東京なら多少の雨量なら、すぐに乾きますからね。
ダノンキングリー陣営の期待に応えるため 結果で恩返しを
——今年はフルゲートに達しなかったものの、10頭のG1馬が揃い、素晴らしいメンバーが揃いましたね。注目している存在はいますか。
凄いメンバーになりましたし、是非お客さんの前でレースができれば良かったですね。その中でもペースが速くならなさそうな印象は受けます。力量的にはアーモンドアイが中心だと思いますし、ハッキリと目標にしていかないといけない相手だと思います。
——ここを毎週読んでくれている方なら、今回のレースに期する思いは大方おわかりいただいていると思いますが、今回の騎乗にあたっての意気込み、気持ちの程を改めてお願いします。
▲東京芝1600m戦で行われた2018年10月8日の新馬戦を勝利
またダノンキングリーに乗せていただけることには感慨深いものがあります。怪我をしてからも、レースの度に何度も声を掛けていただいて、その中でようやく安田記念に乗せてもらえることになりましたからね。復帰のタイミングもハッキリしておらず、自分も復帰したてで、どんな状態かも未知数な中で騎乗依頼もいただきましたからね。またコンビを組めることが嬉しいですし、関係者には感謝しかありません。この馬とG1を勝ちたいとは常々思ってきましたし、実現しないといけないと思います。チャンスの有る馬だと思っています。
——以前の記事でも安田記念の騎乗依頼に対して「やってやるぞという思いになった」と珍しく強気なコメントが出たことが印象的でした。
まあ、レース直前になると、いつもと近い心境になってきますが(笑)、今回のリハビリ、復帰においてもダノンキングリーに乗ることは一つの目標でもありましたからね。ダノンキングリーにも感謝ですし、リハビリの間にも目指すものができたことは大きなモチベーションでしたから。馬と関係者の方々に報いるには、結果を残すしかない、結果で喜んでもらうことが一番ですからね。
土曜は復帰後最多となる1日6鞍 初勝利なるか
——ありがとうございます。先週の回顧と、今週のその他のレースについてもお願いします。
日曜のスパイラルダイブは本来、広々としたところで走らせてあげたかったですが、スローペースでもあり、最後は団子状態。狭いところを割って入っていけましたし、もう少し展開が向いてくれれば、という結果でした。それにスタートこそ出てくれましたが、そこからの行きっぷりがもう一つでしたね。それでも以前乗せてもらった時よりも力をつけている感じは受けましたよ。
フィリアーノはリズムよくいけました。ただ、ペースを考えても道中でもっと攻めていってよかったですね。レジイナアンはリズム良く、リラックして走らせたいと思っていましたが、その辺りは上手にこなしてくれました。最後にギアが上がる感じもあったので形としては良かったですし、リズムを崩さず運べれば、引き続きチャンスはありそうです。
土曜のシセイタケルは前回、ゲートを出なかったようですが、そこはクリアしてくれました。差し切ってくれるかなと思った程ですが、そこから気性の難しさといいますか、ヤメているようなところも。上がってきてからの気配も走りきった感じがありませんし、どこかでしっかり走らせてあげられれば、勝ち切るチャンスはありそうですが。
リーディングパートはリズム良くいけました。勝ち馬は近いところにいたように力が上だったように思いますが、こちらは距離短縮で忙しかったですね。ジワジワとした伸びですし、条件次第で上の着順もありそうです。
——今週の騎乗馬について、何頭か伺いたいと思います。チャムランテソーロやブランクチェックは追い切りにも乗られていますね。ロークアルルージュは何度か乗られた経験のある馬です。
チャムランテソーロは新馬から素質は感じていましたが、周りを気にするようなところがあって走りきれていなかったですね。追い切りの動き自体は良かったですし、1600mの距離がどうかとは思いますが、勝つ能力はある馬だと思います。
ブランクチェックは映像を見ても勝ちっぷりが良かったですね。攻め馬の動きより、実戦にいって良さそうなタイプに思えましたが、距離自体はこなせそう。フットワークの感覚からジワジワというタイプのイメージです。
——こういう話題をさせていただくと、段々とこのコーナー的にも「通常営業感」がありますね。
ハハハ、それは言えますね。
——次週のエプソムカップ(G3)ではギベオンに騎乗とのこと。藤原英昭先生とのコンビも復活という点も懐かしいところで、こんな点でも「戻ってきた感」を感じました。ちなみに、騎乗以外の話題では昨日の東京ダービー(S1)はどうでしたか?
毎年のことですが、的場(文男)さんには勝ってほしかったです。やっぱり勝つまで物語は続いていくのかなと思いましたし、的場さんには勝つまで現役を続けてほしいものです。また、勝った(山口達弥)ジョッキーが重賞初勝利で東京ダービー制覇とは、とてもめずらしいことをやってのけたなと驚きました。管理する林正人先生は僕も南関東時代に沢山乗せていただきましたし、嬉しいですね。
——また、ここのところのスポーツ界について、見られて感じるところはありますか?
僕もこうして復帰させていただいて、他のスポーツは開催延期や中止などがある中、余計に開催できていることのありがたみを感じますね。特に高校野球、甲子園は誰も止めたくて中止にしたわけじゃないでしょう。僕も毎年、夏の甲子園のテレビ観戦は楽しみにしていただけに残念です。今の事情を考えると、受け止めなくてはいけないことなのかもしれませんが、球児の皆さんの気持ちを考えると、本当に残念だろうと思います。競馬も無観客が続いていますが、月並みながらも早く今まで通りの形が戻ることを願うばかりです。
——無観客開催で気づくこと、感じること、違和感はありますか。僕がテレビなどで他のプロスポーツ選手の意見を聞いているとやりづらさ、マイナス面を口にされている印象を受けました。
やっぱり寂しさはありますし、とても静かですよね。自分にとってもどこか高揚感に欠けるところがあるのは事実。ただ、モチベーションが下がるようなことは全くないですね。ただ、馬にとってはメリットしかないのは事実じゃないでしょうか。余計なイレ込みがないですからね。その逆で、お客さんが入った時にまたテンションが入ってしまうことも可能性はありそうです。ただ、それも競馬の一部ですし、皆が同じ条件。能力の一端と思います。
——繰り返しになりますが、ダノンキングリーで挑む安田記念。戸崎騎手にとって、今週は目標としてきた日だと思います。無事に乗ることはもちろんですが、いい結果を期待しています。次週もよろしくお願いします!
よろしくお願いします!
※次回は6月12日(金)に更新予定です!
※当コーナーは新型コロナウイルス感染拡大防止の観点に基づき、電話で取材を行っております
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。