'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
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11月18日時点1558勝
極悪馬場を読んで復帰後初めて芝のレースで勝利&今週はユニコーンSに騎乗
2020/6/19(金)
先週の東京競馬は土日にわたって道悪での開催。戸崎騎手は3勝を挙げる活躍となったが、うち2勝は芝の不良馬場での勝利。重でこそ勝ち星はあったが、不良に限定すると2014年2月以来となる勝利。怪我からの復帰後、芝で勝つのも初めてでもあり、あらゆる意味で「久々」の勝ち鞍になった。今週は予定していたレースの除外が相次いだが、勝ち星を重ねることができるか、注目だ。
リハビリの成果?先週は劣勢だった芝の道悪で2勝!
——今回は今週末のレースの話題より前に、回顧から伺っていこうと思いますが、先週は復帰後、初めての芝での勝利。しかも3勝と好成績でしたね。あくまで自分の意見ですが、内容も素晴らしいレースが多かったと思います。
ありがとうございます。芝というか、田んぼのレースみたいでしたけど(笑)。
——ああいう馬場になると、乗るにも普段以上に疲れるとおっしゃっていた記憶はありますが、お疲れ様でした。土曜の時点ですでに悪い馬場。まず気になったのが土曜5Rのレオテソーロ、7Rのステラドーロと先行していたことです。ポジションを意識した競馬に徹する腹積もりなのかと感じながら観ていました。
いや、そんなことはなく、あくまで馬それぞれのリズムを重視したら、そうなっただけです。ただ、先週はあの馬場をこなせる馬ではないと走れないレベルですよね。単に道悪適性といっても、根性のある馬、フットワークが合う馬じゃないといけないのかなと思いました。
それにこれが合っているかどうかはわかりませんけど、あれだけ悪くなると、内外どこを通っても差がないですよね。最後の直線も馬場の良いところの真ん中より外を選ぼうとするには、それだけ外に行くロスがありますから。だったら内目でいいという考えでした。
——特に土曜のジューンSのサンレイポケットは馬場が渋っても走れる印象はあったのですが、枠が外目でしたし、後方待機のタイプ。能力的には勝っておかしくないものの、内か前が有利な馬場傾向的には分が悪くなったと思っていました。
馬場はこなせそうな感触を持ちましたね。本当は前目に付けたかったのですが、結果的にあの位置からに。そこから切り替えて内から運びましたが、どこかでポジションはあげておきたかった。手応えも終始よく、馬場も問題なかったです。よく頑張ってくれたと思いますよ。
——日曜のエプソムC(G3)のギベオンは内枠からの競馬。近走は馬群が窮屈になったり、力を出しきれないことが多々ありましたが、今回はスムーズな走りにはなるだろうと思っていました。
一番は馬場がどうか、というところでしたね。藤原(英昭)先生ともレース前に話して、「今の馬場なので内枠を活かして、内にこだわろう」という意見で一致しました。ただ、このレースについては他の馬も内を回ってきたので、枠なりとはいきませんでした。道中の走りは思った以上にスムーズ。馬場もこなしてくれるんだなと思いましたし、手応えも良く、上手くいったと思ったのですが、直線ではフットワークもバラついてしまいましたね。道中で疲労していたのかもしれません。
——ユーバーレーベンではスタートは後手を踏んだものの、すぐに挽回しましたね。直線も一時、勝ち馬が鋭く伸びたものの、最後に差し返しました。
追い切りの動きからいい感触でしたし、最後に差し返す辺りも思っていた通りの能力の高さじゃないでしょうか。もちろん馬場も苦にしなかったですね。
——コトブキテティスは読み通り、馬場はこなしたものの、前を行く馬が押し切る形。数字をみると、ペースも速かったように思いました。
馬場は大丈夫でしたね。ただ、しっかり伸びてくれたものの、前の馬を捉えられなかったですね。
——こちらはダートですが、ニュートンテソーロは前残りになりそうな態勢を外から一気に差し切りましたね。
先週のダートはやっぱり前残りばかりでしたね。そんなに前に行ける馬だと思っていなかったですし、しっかり最後に懸けた方が脚を使えるタイプなんじゃないかと思いました。戦前に聞いていたように気性面の課題を出すこともなかったですね。
——日曜最終のディナミーデンは脚抜きが軽くなり過ぎた馬場もよくないだろうと思いましたが、勝ち馬が突出している印象も、その他の馬は団子状態での追走となる競馬でした。
それもありますけど、直線でスペースが無くなってしまったことが一番ですね。
——しかし、先週は普段はこういうことはあまり言わないものですが、特に芝のレースでジョッキーの腕で導いたレースが多かったと思います。
まあ、上手くいきましたし、いい馬に乗せていただいていましたからね。ただ、芝の不良馬場ではあまり成績が出ていないと教えてもらっていましたし(2015年以降、先週以前で芝の重・不良では10-19-8-58で勝率10.5%)そこをこなせたことは良かったですね。
今週はユニコーンSなど9鞍を予定!
——次は芝の良馬場での勝ち星を期待したいところですね。とはいえ、今週末も雨の影響が残りそうですが……まず土曜日5Rの2歳新馬のパラノイドは追い切りに乗られたようですね。
奥がありそうな馬ですね。レベルの高さを感じます。血統的にもダートの方がいいんじゃないかという意見もあるようなのですが、芝もまるっきりダメには思えないので、まずは芝からとなりました。
——となると、道悪の芝はいいのでしょうか。
いや、僕はダート向きだからといって、芝の道悪がいいとは思わないんですよね。あくまで僕の意見ですが、それとこれは別問題だと思います。
——8Rのバンディエラは調教時計がしっかり出ているようですが、以前交流競走で乗られて以来の騎乗ですね。
大きな馬で、背中のいいイメージがありますね。1勝クラスでもやれるんじゃないかと思います。
——相模湖特別のビッククインバイオはアネモネSでも外差し決着になるペース、馬場の中、内を通って惜しい競馬でした。レースでコンビを組むのは久々ですね。
どれだけ成長しているか楽しみです。タイプ的にはパワータイプではないので道悪がどうかなと思いますが、フットワーク的にはこなしていいと思いますね。
あと、ユニコーンS(G3)のメイショウベンガルは映像をみると、前走は初めてのダートながら強い勝ちっぷり。楽しみです。
——今週で復帰後、5週目の競馬になりますね。もう今のサイクルにも慣れましたか?
ずいぶんリズムは戻ってきましたし、落ち着いて取り組めるようになってきましたね。怪我をする前と同じ感覚で過ごせてはいます。
——復帰直後は当時のルールで自宅からの通勤となっていたと思いますが、今は以前と同じように調整ルームに入られていると思います。以前はサプリメントなども持っていかれたりされていたと思います。今はどうなりましたか。
断捨離じゃないですけど、怪我をする以前と比較して減りましたね。余分なものは省いていこうとなりました。丸っきりやめたわけではないですが、種類は減ったり、冷蔵するような物は持っていかなくなりました。甘酒なんかも週末に飲むのは止めましたね。
——その理由はどんな経緯からでしょうか。
やっぱりこれがないとダメだとなっていたら、それが良くないですし、競馬に集中することが一番だと思ったからですね。意味がなかったと思いませんし、あくまでシンプルになってきたという感じですかね。ただ、怪我をしたことで骨の付き方など日常から食事を意識してきたことは本当に良かったと思いますよ。
ただ、食事に関しては以前と同様の形で取り組んでいますが、一時酒をやめたら甘いものが食べたくなったという話をしたと思いますが、復帰してからお酒を飲むようになったら、甘いものを欲さなくなったんですよね。それは不思議でしたね。
——その辺りは体の反応でしょうかね。ちなみに、今週からプロ野球が開幕。高校野球も代替案での開催が発表されていますね。
徐々に始まってきて何よりですし、夏の甲子園は自分にとって、一年の中の夏の風物詩みたいに楽しみにしていただけに良かったです。
——余談ですが、この試合やこの年が印象的だったという記憶はありますか?
そういうのはないんですけど、最近、NHKのBSで番組(「あの試合をもう一度!スポーツ名勝負」)があって、それはチェックしています。
——僕も松坂大輔投手の横浜高校の試合は録画しましたね。
僕もそれは観ました。松坂さんは同年代なんですよね。当時は僕も騎手デビューをした頃で余裕もなく、リアルタイムでみていなかったですけど。今見ても素晴らしい試合だったなと感じますね。
——競馬開催も徐々に気温も上がってきて、本格的な夏競馬ももうすぐ。無観客開催は続いておりますが、残り2週の東京開催も健闘を祈ります。また次週もよろしくお願いします。
ありがとうございます。
※次回は6月26日(金)に更新予定です!
※当コーナーは新型コロナウイルス感染拡大防止の観点に基づき、電話で取材を行っております
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。