'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
人気コーナー!トップジョッキーならではの本音、レースへの意気込みをお届けします!
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怪我からの復帰後初となる重賞制覇&古巣・大井でも騎乗!矢野貴之騎手にもエール
2020/8/21(金)
先週の関屋記念ではサトノアーサーと久々のコンビで重賞制覇となった戸崎騎手。堅実な馬とは評していたものの、怪我もあり、勝ち星から見放されていたかつての重賞ウィナー。奇しくもこれが戸崎騎手との再コンビで2年前のエプソムC以来の勝利となった。また、今週水曜は大井競馬場で交流競走にも騎乗。戦線離脱の原因となった昨秋のレースで落馬のきっかけとなった相手馬に騎乗していた矢野貴之騎手と交わした言葉を明かしてくれた。
復帰から約3ヶ月 待望の重賞Vで11年連続JRA重賞勝利
——先週は関屋記念をサトノアーサーで勝利。これが怪我からの復帰後、7戦目での重賞勝利となりました。重賞勝利イコール・復活ではないと思いますが、おめでとうございました!
まずはじめに、先週の栗東トレーニングセンターでの火災で亡くなった馬たちに心からお見舞いとご冥福をお祈りいたします。重賞については、ありがとうございます。重賞ばかりを意識するわけではありませんし、あくまで一つ一つ、しっかり乗れればと思っています。ただ、その上で重賞ということは嬉しいですし、また違った喜びはありますね。
——レースは後方からの競馬となりました。勝つまでには惜しい競馬が続いていた馬でしたが、振り返っていただいてどうでしたか?
戦前は道中の折り合いに気をつけていたくらいで、どの位置につけようか、なんて考えていたほど。それがあの位置しか取れなかったことは誤算でしたね。結果、腹をくくってドンと構えていこうと切り替えました。枠は内の方が競馬はしやすかったかもしれませんが、外は外なりに他の出方も見えますからね。器用には捉えられるタイプだと思っていました。
繰り返しになるところですが、折り合いで苦労するところもなかったですし、状態もいい具合でレースを迎えられたのかと思います。
——サトノアーサーも靭帯を痛めたそうで1年ほどのブランクを経て、そこからの重賞制覇となりましたね。
そうですね。それに前回、勝った際も僕が乗せていただいたタイミング。どこか縁を感じる部分はありました。道中もリラックスして走れていましたし、以前と劇的に変わったというわけではありませんが、落ち着きとドッシリしたところはありましたね。
——そして、今週水曜、大井競馬場の8Rでは交流競走に騎乗。ビップテッペンとのコンビで惜しくも2着でしたが、昨年の負傷後、初めての地方交流競走での騎乗。大井に行くのもレースでは昨年のレディスプレリュード以来でしたね。
ジョッキーとして大井に行くこと自体は初めてというか、なにか新鮮な感覚はありましたね。周りにもたくさん声を掛けてもらいましたし、約1年ぶりですからね。こうして乗れることは嬉しかったです。レース自体は何とか勝ちたかったのですが、レース運びは上手くいったものの、勝ち馬が上でしたね。
——今週は引き続き新潟での騎乗ですね。土曜6Rのヤマニンガラッシアは福島に続く騎乗となります。
前回は1200mで忙しさを感じました。延びる分にはいいと思いますし、馬場も軽い方がいいですね。先週の新潟は天気こそ晴れていましたけど、幾らか緩さを感じました。そこは気になりますね。
——日曜は2Rのフーラリは新馬に続く騎乗。5Rの新馬戦は追い切りにも乗られたバジオウとのコンビですね。
フーラリの新馬戦は内容として良かったと思います。一度使って良くなりそうですし、楽しみですね。バジオウは追い切りではゆったりとしたフットワーク。直線では沈み込むような走りをしていたので、実戦にいってもギアがあるんじゃないかと思っています。まだ良くなるのは先に感じますが、その過程でどんな走りをみせてくれるか期待しています。
——NST賞のレッドアネラは何度も乗られていますが、オープン昇級後の騎乗は初ですね。阿賀野特別のトータルソッカーは久々のコンビですね。
レッドアネラは中山や福島で乗せていただきましたが、むしろ新潟自体はより合っているんじゃないでしょうか。あとは脚質からも同型との兼ね合い次第ですね。左回りのイメージはありませんでしたが、以前は走っていたようですね。トータルソッカーはどんな競馬もできるイメージ。内回りですし、器用さを活かしたいです。
夏の新潟開催も残り3週間 勝ち星を一つでも多く重ねる
——先週のその他のレース回顧もお願いします。先週日曜でいえば、ミュアウッズやドリームメッセージといった面々はペース、位置取り、実力を考えると意外な結果でした。
ミュアウッズは道中で僕も「いいリズムだな」と感じていたほど。正直、なぜ負けたのか…という内容でした。ドリームメッセージに関しては、気性面の課題などもあるので細かく挙げれば考えられるところもあるのですが、勝ち馬からは突き放され過ぎですからね。
——こうした時季ですし、目に見えないレベルで夏負けなどもあるかもしれませんね。
そういうケースもあるかもしれません。だから、騎手としては違ったアプローチができていれば走っていたのか、反省はすべきだと思います。ただ、どこまでが自分の責任なのか、そこは考えるべきですし、すべて考えすぎても良くはないと思うんです。『落とし所』といいますか、納得のしどころは重要ですよね。反省しつつ、全て自分だけが原因じゃないものも少なからずある場合もあるでしょうし、見極めることも重要だなと感じました。
——同じ先週の日曜ではラインプリンスは次に繋がりそうですね。
いい感触はありましたが、距離的に忙しいですね。ただ、内容的には次に繋がりそうです。
——先週の土曜でいえば、メイプルグレイト、ルガーサント、イザラなどはどうでしょうか。
メイプルグレイトはモマれると弱いところがあるとのことで外に速い馬がいましたし、内枠が厳しかったですね。ルガーサントは上手く出てくれましたが、主張すると最後に甘くなるイメージがあったのであの位置から。ただ、普段から前々の競馬をしているせいか、道中で力みもありましたし、伸びてくれなかったですね。イザラは距離というより、直線の長いコースが厳しいですね。
——イルミナルは勝ち馬が強かったと思いますが、こちらも惜しい内容でしたね。
ゲートに入ろうとしてくれませんでしたし、道中の行きっぷりも悪かったです。映像を見ているともっと気のいいイメージがあったので、むしろこの距離は長いと思っていたのですが、マイルのイメージを覆される走り。馬が嫌気をさしていたところはあったかもしれませんね。
——最後にスペシャルドラマは初勝利となりました。
新馬前に追い切りに乗せていただいたイメージで、前々の競馬がいいかと思い、あの形を採りました。他馬が来るとまたしぶとく走ってくれましたし、まずは勝てて良かったですね。
——ちなみに、復帰後は以前よりも血統であったり、違った知識や観点の話をされることが多くなったと思います。そこらは休養中に知識を蓄えられたことはあったのですか。
知識を蓄えるまではいっていないですけど、昔よりは何か頭にはありますかね。
——ただでは休んでいない人だと思ったので、敢えてやってきたのかなという感じは、そういうことはないですか。
いやいや、そんなに(笑)。
——改めて復帰後の成績を調べさせてもらうと、パイロ産駒との相性が目立っていて、勝率もかなり良いですね。勝率が27%で連対率が40%なので、なかなか相性が良いのかなという感じがしましたけどね。
ただ、『数字』のことで言ったら、読んだ本に書いてありましたけど、一概に意味がないといいますか、確率論は信憑性がないような話が書いてありましたね。それは競馬の本ではないですし、何においてもの話ですけど。ちょっと何かが狂えば、全部結果が変わってくるというのがあって。でも、イメージ的にパイロというのは、気が良いタイプで、何かスッと走っていくイメージがありますから、良いイメージではありますね。
——先日のレパードSもパイロ産駒でしたね。お盆も過ぎて、夏競馬も残り3週となりますが、今の時点での夏の具合というか、ご自身で判断していただくと、騎乗振りというのはどんな感じですか。
結果が出ていないので情けないですね。どこまで盛り返せるか分からないですけど、1週1週、1レース1レース結果を求めて、丁寧に乗っていきたいなという気持ちです。
——そういうことを感じられるということは、一連のケガを気にしてきた頃よりも、結果に向いて行けるというところはある訳ですか。
もうケガのことは言っていられない時期だと思うので、結果が全てのことですからね。
怪我のことでいえば、一つ言っておきたいのは大井では矢野(貴之騎手)が一番喜んでくれましたね。「帰ってきてくれて嬉しく思うし、一緒に乗れることが嬉しい」と。矢野も僕が落馬してから責任を感じて、彼自身もリズムを崩したり、おかしな落馬をしたりと外から見ていても調子を崩していることは凄く感じていたんです。ちょっと休むべきなのかと考えたこともあったようですし、責任を心の中に感じながら乗っていたと思います。
ただ、僕ももう復帰をしましたし、大井でも乗れましたからね。矢野も吹っ切れて、ガンガン乗って、いい騎乗をみせてほしいと思います。僕も乗り鞍がひと鞍しかなかったので、他のジョッキーと数多く喋っていられるわけではありませんでしたが、やっぱり大井に戻れたことに感慨深さはありましたよ。
——復帰してからクリアしていくというか、「復帰後初」と呼べることはまだまだあると思います。今後も勝ち星を重ねつつ、そうした初モノをこなしていけるといいですね。また次週もよろしくお願いします。今週もありがとうございました。
ありがとうございました!
※次回は8月28日(金)に更新予定です!
※当コーナーは新型コロナウイルス感染拡大防止の観点に基づき、電話で取材を行っております
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。