'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
人気コーナー!トップジョッキーならではの本音、レースへの意気込みをお届けします!
11月18日時点1558勝
負傷から1年 気持ち新たに土日東京18鞍に騎乗
2020/11/6(金)
ジョッキーにとって思い入れ深い一頭・ダノンキングリーと天皇賞に挑むも、よもやの大敗。2日後のJBCも決して大本命といえる存在ではなかったとはいえ、芳しい結果が得られず。半年以上にわたる大怪我を負ったJBCから一年、決していい流れが来ているとはいえないところだが、ムードを払拭できるのか。節目を迎えた今、胸中を語ってもらった。
京王杯2歳S&アルゼンチン共和国杯など18鞍に騎乗
——今週はG1の谷間週でもありますし、土日ともに東京での騎乗ということになりますけど、概ね時系列順に伺っていければと思います。土曜日4Rの(2歳未勝利の)ソーヴァリアントは新馬戦でよくあそこまで追い上げたと思います。
新馬戦はとても良い脚で最後伸びてきたんですけど、なかなか良いモノを持っている感触は得ましたね。先週のコンディションでは、馬場も差しがききそうですからね。ただ、後ろから行くつもりはないんですけど、馬の出方次第もあると思うので。(騎乗経験のある姉と比較しても)筋肉の質みたいなものは、似ているような感じはありますかね。
——新馬のレモンポップ、スーパービームと追い切りに乗られたようですね。
レモンポップは追い切りでは良い動きをしていましたね。体的にはまだまだ良くなりそうな感じはあるんですけど、その中でも良い動きはできていました。スーパービームも精神的に若さがありそうですが、能力的にポテンシャルが高い感じがしますね。
——ノベンバーSのクロノメーターは昇級となりますが、先週の乾いた馬場はちょっと気になるところです。
馬場は気になるところですが、ずっと安定して走れる馬ですし、昇級しても良い走りはできるのかなと思っています。距離が延びる分には大丈夫だと思いますね。
——京王杯2歳S(G2)のレガトゥスは追い切りにも乗られていないのでレースが初めての騎乗ですね。
過去のレースでは別の馬に騎乗していて多少印象がありますが、大きい馬ですし、1400mになるので器用に立ち回れるか、スピードにどう対応できるのかな、というところですね。
——土曜最終レース(3歳上2勝クラスの)オーバーディリバーは東京に戻りますね。
能力は良いモノがあると思うんですけど、前走なんかはちょっと緩さもあって、その辺が変わってくれれば良いかなと思いますね。東京になるのは良いんじゃないですかね。
——日曜日2R(2歳未勝利)のサンミラー、3Rのアイルビーザワンと前回も乗られましたね。
サンミラーはテンションが高かったので、もう少し落ち着いてもらいたいところ。アイルビーザワンはダートに替わって、良い走りをしていましたね。
——8R(3歳上2勝クラス)のデルマクリスタルは過去2勝したコンビで、今回が昇級初戦ですね。
ペースが変わってくるので、その辺の対応が利けば良いなという感じですね。
——百日草特別のヴィルヘルムは、新馬戦が特殊な馬場。ただ、結局あのレースは上位馬がほぼ勝ち上がっているメンバーでしたね。
当時から一度使った方が良い気はしていて、2戦目はシッカリ勝ってくれました。レースを使ってきた上で、どんな変わり身があるのか楽しみですね。
——アルゼンチン共和国杯(G2)のラストドラフトには1週前追い切りに乗られたのですね。
良いフットワークをしていると思いましたが、気性的に気分良くというか、リズム良くいけた方が良い感触を得たので、その辺に気を付けて乗りたいと思います。
前哨戦を制したジャスティンは1番人気もJBC初勝利ならず
——ここからはレース回顧もお願いします。先週の(2歳未勝利1着の)ノットイェットはいかがでしたか。
初ダートでしたけど、上手に走ってくれて、最後の脚どりもシッカリしていたので、良い勝ち方をしてくれましたね。
——(2歳新馬2着の)アルトヴォラーレは相手(アヴェラーレ)が悪過ぎましたかね。
結果的にはそうでしたけど、すごく乗りやすくて、ちゃんと言うことも聞いてくれて、優等生な新馬戦でしたけどね。取り消し明けの影響を感じさせない走りをしてくれました。
——(2歳新馬11着の)アメリカンエールは血統だけを見たら、東京ダートのマイルは相性がありそうに思えましたが、砂を被った脆さを出してしまいましたか。
気性ですね。砂を被ってから、丸っきり嫌気を差していたのでね。調教の段階からも、そんな懸念はありましたが…。
——やっぱりタピット産駒だと、ハマれば強い馬もいますけど、モロさも抱えていますね。(3歳上1勝クラス4着の)ジェロボームはいかがだったでしょうか。
形的には揉まれずに良い形で行けたんですけど、結果的にもう少し早く踏んでいっても良かったと思いました。でも、そうだとしても勝ち負けまではどうか。先週は前残り傾向でしたからね。状態自体は前走よりもいくらか上がっていましたしね。
——(3歳上1勝クラス5着の)マイネルミュトスは出遅れさえなければ、もう少しは、という感じでしたか。
休み明けだとちょっとそういうところを出すので、気を付けてはいたんですけど、上手く出られなかったですね。この馬も叩いてからの方が良くなりそうな感じはしますね。
——(キタサンブラックメモリアル15着の)スカイグルーヴはどうでしたか。
前走よりは気持ちも入って、良い雰囲気ではありましたね。もう少し前目に付けられて、スムーズな競馬ができるかなと思っていたんですけど、結局距離を詰めたことで、その辺のスムーズさがちょっと上手くいかなかったので、外を回って最後はちょっとスタミナがなくなってしまった感じですね。
——先週は馬場が乾いてきて、それまでよりもパワー傾向から変化したように思いますけど、直線の内側が荒れているように見えるところは避けた方が良い感じのコンディションでしたか。
難しいところですね。やっぱり展開によって、という感じでしょうけど、馬場が良いところは外でしょうけどね。
——外が良いのは間違いないでしょうけどね。アルテミスS15着のタウゼントシェーンはいかがでしょうか。
期待はしていたんですけど、結局、輸送が続いて、馬にも余裕がなくなってしまいましたかね。最後は脚色にもバラつきがあって、新馬戦の雰囲気はなくなっていましたね。
——先週日曜日(2歳未勝利2着の)のスズノナデシコも勝ち馬(プロバーティオ)がえらく強かったなと思いますが、ダートは問題なさそうですね。
ええ、乗りやすい馬でしたし、すぐに勝てる感じの馬ですね。
——(2歳未勝利5着の)スノーハレーションは新馬を使っての変化は感じられましたか。
道中の感じでは少しは良くなっていたんですけど、やはり追ってからがまだちょっと伸び切ってしまうというか、もう少し欲しいところですね。この馬も体はない馬なので、少しフックラしてくれると良いかなという感じはしますね。
——(3歳上1勝クラス8着の)サトノアレックスは久々に乗られましたが、いかがでしたか。
返し馬の雰囲気は昔よりは良くはなりましたけど、レースはまだまだ粗っぽさがあるというか、集中しきれていないところはありましたね。
——(国立特別1着の)テルツェットは「テンションが高かった」とおっしゃっていたのを見たのですけど、勝ちきったということで、いかがだったでしょうか。
本当にテンションが高くて、1頭だけ汗を掻いている感じで、大丈夫かなと思っていました。レースに行ってからは上手に走れていましたし、最後の脚色も良かったので、走れる馬だなという感じでしたね。
——火曜日のJBCクラシック(デルマルーヴル)、スプリント(ジャスティン)、いかがだったでしょうか。
デルマルーヴルは強い馬をマークして道中は運べました。コースも前走より合っていたと思うだけに、もうひと伸びほしいところでしたね。ジャスティンは先行馬が非常に多いメンバー構成。モマれない競馬を心がけたかったですが、コーナーでは外にモタれて、4コーナーでは躓いていました。気難しい馬でモマれると引っ掛かっていく気質。浦和で走った時もそうだったらしいんです。あのメンバーで外を回るわけにもいきませんから、その辺り、モマれる競馬にも慣れてほしいですね。返し馬では凄く落ち着いていて、こんな大人しい時もあるんだなと思ったくらいでしたが。
——スプリントをサブノジュニアで制した矢野貴之騎手など、地方競馬勢の活躍も目立ちましたね。
良かったですね。生え抜きの馬であり、調教師やオーナーも地元でしたから、おめでたいと思います。先生も僕は非常にお世話になっていますし、オーナーにもたくさん乗せていただきましたし、素晴らしい結果だったと思います。
怪我から約一年 期待馬で人気を裏切る落胆の結果に
——そして、先週の中では一番の注目だったと思いますが、天皇賞・秋(G1)のダノンキングリーはどうでしたか。
思わぬ走りといいますか、最後はフットワークもバラついてしまったほどで心配しました。歩様に問題はなかったようで安心しましたけど、故障したかと思ったほどでした。結果、敗因はわからないところはありますが、リラックスして走れていなかったのが一番ですかね……。以前よりも短距離向きなところが出てきているのかもしれません。
——しかしG1を勝つには、馬との巡り合いや当日の馬場や枠などの運も少なからず必要だと思います。昨年、大怪我を経験されて、復帰して運が巡ってきてもいいのではないかと僕は勝手ながら思っていましたが、上手くいかないものですね。
競馬に限らず、上手くいかない時にどう感じるか、どう切り替えるかは重要だと思うので。苦しいと思えば苦しいし、どう捉えるかは自分次第だと思いますからね。確かに先週はダノンキングリーやタウゼントシェーンなど期待をしていただけに、どうも負け方がガックリ来るレースが多かったのは事実ですけどね……。
——「悔しい」という言葉はあってもなかなか「ガッカリ」という言葉はあまり言われないですよね。
それはありますね。ただ、馬は故障したわけではないですし、落胆しているわけではないので、またどこかでチャンスが有ればと思います。
——JBCから一年、感じることはありましたか?
苦しかったり、耐えなくてはいけないこともありますが、日が経つのは早いなとなんだか感じました。JBCの日は無事に帰ってくることは少なからず感じましたけどね(笑)。ジャスティンは元気がいい馬らしいので。ただ、一年経ったことにそこまで感慨深さはなかったし、怪我を通して学べたこと、気づいたことを今後活かしたいという思いが強いです。
——目の前でG1・8勝、無敗の3冠などの快挙を目の当たりにして、祝福する思いもあるとは思いますが、刺激になることもありますか?
いやあ、ここ最近(松山)弘平君といい、(福永)祐一さん、クリストフ(ルメール)と本当に素晴らしい騎乗をするので、勉強になりますし、いざ自分がそういう立場になれたとき、ああいう騎乗ができるようにしたいですね。
——次週はエリザベス女王杯(センテリュオ)も控えていますし、また大舞台での活躍も期待したいと思います。
ありがとうございます。
※次回は11月13日(金)に更新予定です
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。