'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
人気コーナー!トップジョッキーならではの本音、レースへの意気込みをお届けします!
11月4日時点1555勝
サウジダービー勝利で存在感!サウジ遠征をタップリ回顧
2021/2/26(金)
初のサウジ遠征となった先日のサウジカップデーはご存知の方も多いだろうが、サウジダービーで勝利した戸崎騎手。元来、遠征を決める要因となったサウジCのチュウワウィザードこそ力を出しきれなかった印象も、騎乗予定のなかったサウジダービーを制する辺り、日頃培った手腕を活かせたのではないか。今週からコロナによる隔離期間により、日本での騎乗再開はまた先になるが、収穫があったという遠征を振り返ってもらった。
急転直下!ピンクカメハメハに騎乗でサウジダービーをV
——先週はサウジアラビア遠征、お疲れ様でした!まずは騎乗予定のなかった(本来は遠征予定の馬が回避)サウジダービーにピンクカメハメハとのコンビで勝たれるとは驚きでした。
ありがとうございます。乗ることが決まったのは確か前日でしたが、一度乗る予定がなくなっただけに驚きましたね。そこからは厩舎にもピンクカメハメハの特徴やレースの下馬評なども聞きましたが、前走で1200mにも走らせたくらいで「スイッチが入りやすい馬」とは聞いていましたね。
無理に出していくと、スイッチが入ったりする可能性もあるそうでしたし、リラックスさせるよう、リズム良く行ければと思いました。ただ、スタートは速かったですね。
——レースでは内の馬が主張して、コーナーでも外を回らされる形。どの馬が手強いかなど意識はありましたか。
正直、なぜあんなに内を開けて回るんだろうと思いましたが、今回は他がどうこうよりも、馬のリズムを大事にいきましたね。結果、それも良かったんじゃないかと思います。どの馬が来るかわからないですし、ゴールするまでは勝ったとは思えなかったですね。
——最後はピンクカメハメハに騎乗予定だったロザリオ騎手のアメリカの馬が迫ってきて、これも不思議な巡り合わせですね。
そうですね。ゴールしてからはやっぱり嬉しかったですし、興奮しましたね。流石に他のレースとは違う感覚はありました。日本に短期で来ているようなジョッキーも多かったですし、周りからも「おめでとう」とたくさん声を掛けてもらったことも嬉しかったですね。
——ピンクカメハメハとは初コンビ。どんな適性を感じましたか?
気のいいところもありそうですし、距離もマイルくらいなら持つのかもしれません。芝もダートもどちらも対応できそうな印象ですね。
マテラスカイは2着 チュウワウィザードは9着
——続いてリヤドダートスプリントのマテラスカイは2着。勝ったと思うレースぶりでした。
あそこまでいったら勝ちたかったですね……。昨年のレースをみても惜しい内容でしたし、条件は合うんじゃないかと思っていました。こちらのレースはゴールが近づくに連れて、勝ったと感じたほど。それだけに差されたのは悔しいところです。
——昨年は外枠から大逃げ。今年は内枠からある程度、後続を引き連れての逃げでしたが、直線もしっかり手前を替えていましたね。
枠も1枠ですし、逃げる形が一番だと思っていましたし、形としては良かったと思いました。調教の段階からも手前を替えないとは聞いていたので意識していましたね。馬は頑張ってくれたと思います。
——サウジカップのチュウワウィザードは先週の段階では状態の良さが伝わってきましたが、序盤から追走に苦しみましたね。
追い切りも本当に良い感触。その時点では馬場も問題ないと思っていました。返し馬では凄く元気が良くて、行きっぷりも良かったほど。ただ、それがレースにいったら滑るような感触。もともとテンからスピードのあるタイプではないとはいえ、終始持つところがなく、流れに乗っていけませんでした。あれだとコーナーが4つかどうかではなく、本来の走りとは程遠かったです。追い切りの感覚からいえば、雨のない馬場で試したかったです。
——サウジアラビアでは異例の雨だったそうですね。
あくまで聞いた話ですが、年に何度かしか降らないそうです。雲が出ること自体、珍しいそうで。確か前日も降ったと思いますが、レース当日も雨があって、止んだと思ったらまた降って……。けっこう影響はしたと思いますよ。気温もかなり下がりましたし、行く前は薄手のダウンも必要ないかと持っていくか考えたのですが、持っていって正解でしたね。
馬場についてはピンクカメハメハにとっては良かったと思います。もともとタフな印象ですし、雨で走りやすくなったんだと思います。その点、時計も速くなるようなコンディションになったことでチュウワウィザードにとってはマイナスだったと思います。マテラスカイはもっと馬場が軽くても良いくらいだと思いますが、あれで走れていますからね。大井でも走っていましたし、年齢を考えても大した存在だなと思います。
競馬場とホテルを往復するだけの日々でも収穫大
——現在はコロナ禍ということで、滞在中もなかなか不便が多かったと思います。サウジアラビアという国を知れるほど、どこも行けなかったんじゃないですか。
街にも行けず、本当に空港とホテル。ホテルと競馬場だけの行き来でしたからね。ただ、あっという間だったような。乗せていただく馬の映像を観たり、(坂井)瑠星が教えてくれて、別陣営のレース映像もみていました。あとはiPadがあったのでそこからドラマを観たりしたかったんですが、国の制限があるのか観られなかったり、ネットフリックスですか?それも観ていたら、途中で現地の言語に切り替わっちゃったりとありましたね。
——iPadという単語が出てくるのも珍しいですね(笑)。
はい、僕のではなく、家族が持たせてくれました。基本、機械系はダメなので(笑)。
——キングアブドゥルアジーズ競馬場は調教でも使われていたわけですが、実際、レース当日の導線などはいかがでしたか。場内は人もそれなりにいたように見えました。
ジョッキールームはロッカーも用意してくれてはいましたが、日本にあるような椅子ではなく、長く待つにはちょっと不便でしたね。モニターも移動して観に行かないといけないくらいでしたし、レース後にパトロールビデオを見るような環境もなく、日本は良い環境だと感じました。お風呂もなくて、シャワーしかなかったですからね。レースに乗った直後は他の国と同じように即検量という流れでしたよ。だから逆に馬に跨ったら、すぐにレースという流れですね。競馬場場内は見ている限り、流石ににぎやかとは言わないものの、無観客開催という割に人はいましたね(笑)。
——サウジアラビアの国はどうでしたか。
流石に行ける範囲が限られていて、わからなかったですが、砂漠が広大で難民の方もいたり、車の運転も道路の真ん中を走ったりで、信号もなかったりと心配になりましたし、当然ながら日本との違いは感じました。あと、ホテルを掃除してくれる方用にチップを置いておいたのですが、向こうでは物を盗むことが重罪らしく、持っていってくれなかった理由を後から知りましたね。
——先週も伺いましたが、食事は大変でしたか。
小麦の入った食事ばかりでしたね。普段は「パンを食べたい」と思うことは多々あったのですが、朝食会場はどうしてもパンしかなく、当分パンはいいかなと思うくらいです。(グルテンフリーでも食べられる)お菓子くらいは持参しましたが、持っていって良かったです。ただ、アルコールは無理だったので、帰国時は飲みましたね。
——サウジカップは残念でしたが、サウジダービーの祝杯ですね。
今回も帰りはカタールを経由して、8時間くらい時間があったのですが、ずっといきましたね。帰りの飛行機はさすがにギブアップでした(笑)。
——サウジCデーはまだ歴史が浅く、今後どうなるか私は存じませんが、サウジCに乗った日本人騎手は初めて。サウジダービーの勝利とマテラスカイでの2着は武豊さんと同じで、日本人としては、今後先駆者といえますね。サウジにはまた行きたいと思われますか?
一度乗ったレース、国って愛着が湧くんですよね。だから、乗りたいです。香港もまた行きたいし、イギリスもそうですね。逆にいえば皆が言う凱旋門賞の憧れというと、実はピンとこないところもあって、行って実感が湧くタイプです。日本の馬は合うと思いますよ。特に芝コース。歩いただけなんですけど、硬いし、コースも乗りやすいから日本の芝馬は適性があると思います。
——ピンクカメハメハのオーナーは現在1頭の所有ながら勝利。森厩舎は連覇と日本馬にもチャンスがありそうですね。
賞金も多いようですし、後を追う陣営がいてもおかしくないですね。
——行く前、乗る前の勝つ予感めいたものはありましたか?先週、どこかでチャンスがありそうな感覚があって、馬上インタビューがあることを言っておくべきだなと連絡した後に思いました。
まあ、そこの話題なりますわね(笑)。レースを終えたらすかさず両サイドから馬に挟まれて……。基本、何を言っているかわからないし、日本の人も観てくれているだろうから、最後は日本語で答えました。
——わからないものは対処しようないですからね。ちょっとリアルインパクトの安田記念を思い出しましたが、わからないものは答えようないですし、清々しいと僕は思いました。それにしても収穫のあったサウジ遠征だったわけですね。
そこの競馬場の特徴も感じられるし、海を渡ること、海外の騎手たちと乗ることも凄く刺激になりますね。日本のレースに乗れないことは痛いですが、長い目でみれば良い経験になったと思います!
——帰国後は隔離生活ということですが、レースに乗れないとはいえ、一年前はリハビリ中だったことを考えると、まだ堪えられますか?
本当にそうです。当時から予想できない流れですし、あの時と考えたらまだ良いものです。
——今回はおめでとうございました!また次週も何か伺えればと思います。
ありがとうございます。よろしくお願いします!
※次回は3月5日(金)に更新予定です!当コーナーは電話で取材を行っております。
ここで競馬ラボからのお知らせです。戸崎圭太騎手のJRA通算1100勝を記念してマスクを作成しました。
https://www.keibalab.jp/present/63/
すべてのご応募はこちらのページにて受け付けております。応募者多数の場合は抽選になります。当選者の発表は当選者の方へのメールでご連絡させていただきます。締め切りは2月28日日曜日。ふるってご応募ください!
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。