'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
人気コーナー!トップジョッキーならではの本音、レースへの意気込みをお届けします!
11月4日時点1555勝
ドバイワールドカップでは惜しくも2着 2度目の中東遠征から帰国
2021/4/2(金)
先日行われたドバイワールドカップデーでは初めてドバイへ遠征。3鞍に騎乗して2着が最高着順だった戸崎騎手。サウジアラビアに続く海外での勝利とはならなかったが、年明けから2度の海外遠征で大きな収穫があったようだ。日本へ帰国し、隔離期間に入っている中、成果のほどを語ってくれた。
チュウワウィザードはサウジでの惨敗を糧に巻き返し
——ドバイ遠征、お疲れ様でした。今回はドバイワールドカップでの2着が最高着順となりましたが、まずはチュウワウィザードについて伺っていければと思います。
敗れただけに喜べたものではありませんが、サウジアラビアから巻き返せたということは良かったと思います。負けた悔しさはありましたが、引き上げた際にスタッフや先生が喜んでくれていたことを思うと納得していい部分もあるのかなと。日本ではなかなか経験できないことですからね。
——まず、先週のお話ではチュウワウィザードのコンディションが良いことは感じられました。前走を踏まえて、今回へ向けて取り組んだこと、意識されたことはありましたか。
前回、スタートが良くなかっただけにそこが一番のポイントかなと感じました。追い切りでは特に変えたことはありませんでしたが、追い日以外の調整は変えたようですね。
——実際、レースに向かう際、当日の気配はどうでしたか。特に放馬があったことで悪い方に影響しないか、気になりました。
馬場入場時の放馬によって少し待たされたことで馬がイライラするようなところがありましたね。2度目の放馬はゲートの中に入れられっぱなしではなかったこともあり、段々と落ち着きが出てきましたね。馬によって色々タイプがあるわけで、チュウワウィザードにとっては良い方に向いてくれたのかなと思います。
——枠は内目からのスタート。前回よりも流れに乗れていましたね。
枠は良かったですね。ゲートさえ出てくれれば組み立てやすいと思っていましたし、そこはしっかり出したいと思っていました。
——道中の手応えはどうでしょう。前回は水分を含んだ馬場も良くなかったと思いますが、今回はイメージのように多少促しつつでも追走出来ていましたね。
追っつけていっても最後は伸びてくれる馬ですからね。馬場も良かったのかなと思います。地方競馬ならペース的にも楽に運べるのでしょうが、チャンピオンズCや今回の相手だと楽な流れじゃありませんから、ああいう追走にはなりますけどね。
——最後、着差は離されましたが、勝ち負けになる可能性を感じられたところはありましたか。
いや、なかったです。というと勘違いされそうですが、周りの馬の脚質であったり力量も未知な面もあったので色気は持たず、冷静に乗れればと思っていました。ただ、外に手応えの良い馬がいるのはわかっていましたし、スイスイと走っていましたし、セーフティリードもとられていましたからね。
——ドバイワールドカップは過去にワン・ツーはありましたが、ダートでのドバイWCではトゥザヴィクトリー以来となる2着。サウジに関してはやっぱり馬場が合わなかったことが大きかったですか。
馬場もあるでしょうけど、ワンターンだったということもありますね。ワンターンに慣れていたら違うのかもしれませんが、不慣れなコース形態でもありましたから。
初めてのドバイ サウジに続き森厩舎の2頭にも騎乗
——ドバイゴールデンシャヒーンに出走したマテラスカイ、UAEダービーのピンクカメハメハはどうでしたか。
マテラスカイは前走よりもスタートは出てくれただけにいけるかと思いましたが、他が本当に速かったですね。やっぱり他国のスピードは日本よりも速いと感じさせられました。ピンクカメハメハは先週も言ったように距離が延びたことがマイナスでしたね。3コーナーから手応えが怪しくなっていましたし、もう少し短い距離ならと思います。2頭共に前走と変わりなく良い状態で臨んでくれましたよ。
——今回は初めてのドバイということで、競馬場の環境は気になる部分はありましたか。
サウジと比較するとドバイの方が競馬場もスケールが大きいですし、施設的にも有意義に過ごせましたね。コース自体は特にクセも感じなかったですね。似ているコース?強いていえば、中京ですかね。ダートの質は日本馬にも合いそうですが、やっぱりアメリカの馬などはスピードが上。行かないとダメなようなタイプだと速さ負けして、力を発揮できなくなることもイメージしてしまいますね。
——サウジ、ドバイと遠征されて、隔離期間中にも学んだ英語で会話したりということもあったのですか?他、調教やレースを見て目立った海外のホースマンはいましたか。
いやいや、さすがに2週間でそうはならないでしょ(笑)。ただ、ライアン(ムーア)は前から言っているように好きなジョッキーですし、(ウィリアム)ビュイックもカッコいいですね。フランキー(ランフランコ・デットーリ)なんかも凄く周りを明るくさせるような雰囲気があるし、騎乗もカッコいいですよね。調教は時間帯も違ったりして細かくみたわけじゃないですし、そこまで大差があるとは感じませんでしたね。ただ、サウジで見た(ホリー)ドイル騎手は達者だなと感じましたね。
南関東時代の同僚が騎手を引退 調教師へ
——一旦、ドバイの話題から離れると、3月31日をもって同世代で地方競馬教養センター時代から縁があったという繁田健一騎手が引退となりましたね。
昨日、引退式があったようですね。これで騎手としては終わりでしょうし、ひとまずはお疲れ様ということになりますが、今後は調教師として活躍してもらいたいですね。何て言えば良いのかな・・・凄く良いヤツなんですよ。シゲとは会話しなくてもツーカーの仲というか、わかりあえていると思っているんです。
——その言葉だけでどんな間柄か伝わってきました(笑)。ただ、世代が近いからといって仲良くなるわけではないのはどんな世界にもいえることでしょうが、素晴らしい関係性ですね。ここ最近、繁田さんに限らず、過去の南関東時代の同僚の引退も相次いでいますね。
多くなってきましたし、寂しいところですね。他にも調教師を目指しているような話も聞いているので時代は変わっていくんだなと思います。自分は良い経験もさせてもらっていますし、まだそういう意識はありませんが。シゲは体重の問題もありましたし、体質も強くなくて、真夏や寒さが厳しく極端な季節のときには苦しいところもありましたからね。
——南関東は開催日の多さからも乗れることが辛さにもなるわけですね。
幸せな悩みかもしれませんが、やっぱり週5で開催日があって、調教やルームに入ることもあるわけで心身ともに厳しい環境だと思います。
——先に引退してしまう方々の分もジョッキーとしてのますますの活躍が期待されるところですが、40代を迎えて、海外の大舞台でも1勝・2着といい幕開けですね。それにしても一年前の今頃はリハビリ中。こうして海外で乗っていることは想像されましたか。
イメージできるものではないですよね。ただ、この世界、どこからチャンスが巡ってくるかわからないですし、重賞でもG1でも平場でも、日頃から準備をしっかりしておきたいと思います。
ここ最近は海外競馬で日本人ジョッキーが乗るチャンスが減っていた最中で乗せてもらえたことに感謝していますし、また一度行ってしまうと、リベンジしたいと思いますし、そういう行ける馬に巡り会えたらと思います。そのためにも日頃の準備は大事ですね。
——ケガからの復帰後、早い段階でG1を勝てたり、日頃の騎乗にも変化がみられます。今回のサウジ、ドバイもケガを経験していったことによる成果はありましたか。
それはありそうですね。マテラスカイなんかはスタートを決めないといけないというプレッシャーは感じていましたが、ケガをする前は「勝ちたい・勝ちたい」ばかりだったのが、復帰してからまた違った感覚なので。勝負の世界なので、その中で勝ちを目指すのは当然なのですが、違ったスタンスで臨めています。
——それにしても中東の戸崎圭太じゃありませんが、今回の遠征では荒稼ぎでしたね(笑)。意識はありますか。
あります、あります(笑)。見たり、調べたりすればわかることでしょうし、言えますけど、サウジもドバイもジョッキーは10%の進上金なので日本との差の大きさに驚きましたね。
——こうした時に記念に何か買ったり、作られたりなんてことはあるのですか。
昔はそういうのもしたいなと思いつつ、結局ないんですよね。今はそうも思わなくなりましたし、昔から家にある物などでも「これはこの時の記念で買ったな~」なんてことはないですからね。
——何かとストイックさが窺えるところですが、今週からは帰国後の隔離生活ですね。今後の予定は考えていますか。
いや、ないです。というのも今はまだ家に帰れていないんですよ。サウジの後に行く国によってコロナの対策が変わったようで空港近くのホテルに隔離されている状態です。
ホテルにいる人とすらも会わないし、食事も支給されている弁当だけですからね。帰ったら、無理にじゃないですが、英語くらいはできたらと思いますけど。まあ、矯正してやるようだと身につかないので、なるべくできればと思っています。
それにストイックとはいっても食事に関しては人より徹底しているかと思いますけど、他の人がどれくらいやっているかもわからないですからね。自分としては特に思わないかなと。
——現場復帰は4月17日からということですね。また海外に行きたい気持ちはありますか?
いや~行きたいですね。特に行ったことのない国に行きたいと思います。今回ももし外国人ジョッキーがいたら、去年の秋にチュウワウィザードに乗れていたかもわからない。そこで乗れていなかったら、海外に行くこともなかったでしょう。
今は外国人騎手がいないことによって、日本人にもめぐり合わせ、チャンスはあるわけです。そこも逃さないようにしっかり乗りたいですし、また色々な国を経験したいです。今回は結果がそれなりに良かったからそう思うのかもしれないけど、もし結果が悪かったとしても、得るものは大きかったと凄く感じています。
今はコロナの隔離があったりするので決断するのは大変なところもあるでしょうが、今すぐにでも他の国へ行ってみたいなと思うくらいです。
——来週はレース回顧もない週になりますが、何かしら伺えればと思います。今回はお疲れ様でした!
ありがとうございます。
※次回は4月9日(金)に更新予定です!当コーナーは電話で取材を行っております。
ここで競馬ラボからのお知らせです。久しぶりに戸崎圭太騎手への質問を募集します。質問のある方は件名に「週刊!戸崎圭太質問係」と本文内にお名前(ペンネーム)を明記の上、以下のアドレスにメールをお送りください。
keita_tosaki@keibalab.jp
質問内容は複数でも問題ありません。今回の締め切りは予定より延ばして4月5日(月曜日)までとします。メールをいただいた方から抽選で3名様にプレゼント(戸崎圭太騎手JRA通算1100勝達成記念グッズ)もあります。当選者は発送を以てかえさせていただきますが、該当の方にはこちらからメールを差し上げます。沢山の質問、お待ちしております。
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。