'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
人気コーナー!トップジョッキーならではの本音、レースへの意気込みをお届けします!
12月16日時点1567勝
落馬での大怪我から2年 今週は東京競馬場で騎乗
2021/11/5(金)
今週は金沢競馬場でダートの祭典・JBCが行われたが、JBCといえば舞台こそ違うものの、戸崎騎手にとっては忘れることができないのが2年前に大怪我を負ったレースでもある。今年も無事に因縁の一戦を終えられたことは何よりだが、その節目を迎えた今週末の中央競馬はG1シリーズがひと段落となる。毎週のことながら無事の騎乗を期待しつつも、好結果に期待したい。
一気の重賞制覇なるか、新馬勝ちのトウシンマカオ
——今週はG1レースもひと段落ですが、土日続けて東京競馬場での騎乗になりますね。週末の騎乗予定からお答えいただければと思います。まず土曜のパラノイド、神奈川新聞杯のカフェサンドリヨンとどうでしょうか。
パラノイドは終わってみれば、一度使った方がいいんじゃないかと思います。実績もありますし、このクラスを勝てる存在ではあると思います。カフェサンドリヨンの前走は展開が向いていなかった印象です。リズム良くいけなかったので、改めて期待したいです。
——日曜のブラックパンサーは地方からの復帰2戦目です。
馬は良くなっていた印象ですし、期待はしています。ダートも問題なく、リズムよくいけましたし、あとは相手次第でチャンスがあると思います。
——土曜メインの京王杯2歳Sにはトウシンマカオが新馬戦以来のレースになりますね。
1週前追い切りに乗せていただいたところ、順調に来ていると感じました。重賞に入ってどこまでやれるか、ですね。
——新馬戦は楽な手応えで押し切っていましたが、新潟だとああいうワンサイドゲームのような勝ち方はあるもの。勝ち時計は決して速い部類ではなかったですし、ラスト1Fを要していたことから、距離短縮はいいのかと思いますが、どうでしょうか。
良いと思います。前回より前向きさが出てきていますし、ゆくゆくは1200mを走ることもできるかもしれませんね。
——その新馬はゆったりとしたレースぶり、フットワークに見えましたが、馬体重は2歳とはいえ、決して大きくないもの。馬体の変化はどうでしょうか。
短い期間ですが、多少なりともパワーアップを感じました。パワーも感じるタイプですし、あまり乗っていて小ささを感じないんですよね。
——1週前のウッド追いは速い上りをみせていましたし、楽しみな2戦目ですね。
新聞なりを読んでいると、あまり評価が高くないようですね。それだけ他のメンバーがレベルが高いのかもしれませんが、自分の感覚とどれだけ差異があるのか。そういった面でも楽しみです。
——アルゼンチン共和国杯(G2)のレクセランスはテン乗りですね。
あくまで印象だけになりますが、この距離、条件は合ってそうですね。持ち味を引き出せるよう努めたいです。
連覇懸かる次戦へメドの立ったチュウワウィザード
——先週の競馬でいえば、天皇賞・秋(G1)のカレンブーケドールは意外な負け方になってしまいましたね。
ハナに行ってもいいくらいのイメージでしたが、やはり外枠でしたし、スタートの速さの差もあり、あの位置からになりました。その後はリズム良くいけたのですが、コーナー辺りから前の馬の後ろに入りたがるような、内に刺さる面を出してしまいました。今まで乗せていただいた時はそんなこともなかったのですが、直線でも手応えがなかったですね。
——あのペースでしたし、前にいることはむしろアドバンテージになりそうなものでしたが、結果的には明確な敗因がはっきりしない結果でしたか。
そうですね。今まで乗せてもらった中では、一番といえるくらいフットワークの軽やかさがあって、雰囲気は凄く良く感じました。ただ、強いていえば、逆に馬に余裕があり過ぎたのかもしれません。
——当てはまる見立てかはわかりませんが、馬によっては、追い切りの負荷や連戦していくことによって、ちょっと追い詰めているくらいの方がいいタイプもいるとは稀に伺いますね。
そうですね。考えられるとすれば、そういった面かなとは思いました。
——2歳新馬のルージュリナージュ、バイオアート、ルージュヴィーヴルなどはどうでしょうか。
ルージュリナージュはジリっぽくシュッと動けるタイプではないですね。進路がなく勿体ない競馬になりましたが、長いところが合っていそうです。バイオアートはセンスのある走りをみせてくれました。手応えもあって、あとひと伸びといったところですが、もうひとギア入るようになるといいですね。ルージュヴィーヴルはもう少し動けると思ったんですけどね。手応えほど反応がなかったのは意外でした。
——アルテミスS(G3)のロムネヤも初戦とは一転した内容でした。
返し馬などは大丈夫でしたが、ゲートの中でもうるささをみせていましたし、レースに集中できていない印象でした。スタートから進みも悪く、この馬の走りではありませんでしたね。常々、2歳馬の新馬と2戦目は違うとは言っていると思いますが、そうした面が出てしまいました。
——オールイズウェルは惜しい結果でしたね。
とても乗りやすい馬です。勝ち馬を上手く閉じ込めるような競馬ができたのですが、進路が開いて、そこから伸びてしまいました。それでも惜しい内容でした。
——ダノンブレットはブリンカーも試したそうですが、自己条件とはいえ巻き返しましたね。
成長も感じましたし、ブリンカーの効果もありました。レースはスムーズでしたし、十分に走ってくれていますが、勝ち馬が強かったです。
——水曜は金沢競馬場でJBCが行われ、クラシックでチュウワウィザードに騎乗されましたね。骨折明け、諸条件を踏まえると、次へ向けてメドの立つ走りだったのではないでしょうか。
そう思います。帝王賞の走りが物足りないものでしたし、骨折で間隔は開きましたし、状態面は心配していました。返し馬から雰囲気が良かったですし、頑張ってくれたと思います。
——川崎などでも勝っているものの、小回りコースでしたし、普段ならモタモタするような挙動も見受けられます。そういったところはなかったのは馬場やペースでしょう。
そうですね。流れはだいぶ遅かったですから。その分、緩急のついた流れになったのは、この馬にとっては良くはなかったですね。しかも小回りといっても、金沢は特に小回りという感覚はあって、コース形態も決してプラスではなかったでしょうから。
——見栄えは決して良くないものの、広いコースで長く脚を使うような内容が合っているかと思いますが、負けはしたものの、次へ向けてはいい走りでしたね。今年は金沢で行われたJBCですが、南関東の馬(ミューチャリー)が勝ったり、ジョッキーが多く参加していたりと、南関東の関係者が多数いたんじゃないですか。
そうですね。さすがに普段行かない場所なので雰囲気は違いますけど、南関東の関係者は多かったです。僕も金沢競馬場で乗せてもらうのは以前のJBCと白山大賞典で何度かあるくらいで、新鮮でしたね。ただ、競馬場のお客さんの数や関係者エリアも色々と制限がある中での開催だったので、来年は普通の姿に戻ればと思うところです。
——そして、JBCといえば、浦和のJBCレディスクラシックでの大ケガから2年ですね。
やっぱりそれ以前のケガとは違いますし、忘れることはないですね。2年経ったんだなとは思いましたし、これからもそれは変わらないと思います。
——まずは今週も無事に終えられることが大事ですが、次週はエリザベス女王杯(G1)でアカイトリノムスメに騎乗。来週もよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
※次回は11月12日(金)に更新予定です!当コーナーは電話で取材を行っております。
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。