'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
人気コーナー!トップジョッキーならではの本音、レースへの意気込みをお届けします!
12月16日時点1567勝
今週は土日ともに東京で15鞍の騎乗!
2022/10/21(金)
菊花賞ウィークの今週だが、土日ともに東京で騎乗する。アイビーSでは出走予定馬の回避などのアクシデントもあったものの、コンビを組んだ経験のある期待馬などの乗り鞍を控えており、複数勝利にも期待が膨らむところだ。また、先日達成した年間100勝の節目に際し、今後の騎乗予定などから発展した心境も直撃した。
日曜は来季以降の成長を感じさせる3歳に騎乗
——今週は東京での騎乗になりますが、土曜の話題から伺っていければと思います。まずは土曜の新馬からディアマンテブルー、ジャスリーと追い切りに乗られたそうですね。
ディアマンテブルーは紫苑Sで乗せていただいたライラックと同じオーナーの新馬ですが、乗り味自体はいいモノを感じます。ただ、追ってからの反応がひと息で反応し切れていない印象。陣営もフットワークの良さは口にしているだけに、実戦に行って変わるか、一度使って変わるか、といったところかと思いますが、良い方向に向いてほしいです。ジャスリーは自厩舎のため3週連続で乗りましたが、乗り味自体が良いものの、時計がまだ足りない点が気になりますね。
——赤富士Sのトモジャリアは前走で武藤雅騎手が騎乗していましたが、まさかと言って良いのか、圧勝でした。
驚きましたね。ああいう競馬が良いのだなとも感じさせられましたし、同じ形をイメージしています。
——富士S(G3)は昨年の2着馬が故障して引退してしまったことで、ピースワンパラディに騎乗されます。
勝たせてもらったことのある馬ですし、前走も長いブランクだった割に走れていましたからね。相手は揃った感がありますが、さらに良くなっていると期待します。
——ハイハローは未勝利を制して昇級初戦です。
楽しみですね。まだまだどんな条件でもこなしてほしいし、東京でもこのコースならこなしてほしいです。
——日曜はルージュエヴァイユ、ラーグルフと複数回騎乗したことのある3歳勢はどうでしょうか。
ルージュエヴァイユは久々乗せていただきますし、成長があるのか楽しみです。まだ春は走りがまとまっていないところがありましたし、良くなってくれていればと思います。ラーグルフは前走こそ重賞の壁に阻まれましたが、成長はしていると思います。徐々に力をつけていますし、再び古馬との対戦に戻りますが、こなしてほしいところ。まだまだ成長してほしいですね。
——グレートタイムは昨年のこのレース以来の騎乗ですね。
去年勝たせてもらって、その後も長丁場で安定していますね。昨年より2キロ重くなりますが、地力に期待します。
——ジョンソンテソーロは休み明けの前回がひと息でしたね。
前走は強い勝ち方をした1勝クラスの走りではなかったです。一度、使ったことで素軽さが出てきてほしいです。
——前回は戦前からああいう爆発的な勝ち方をした馬は安定感に欠ける、とは戦前からおっしゃっていましたが、前走の敗因としては素軽さが足りないものであって、休み明けの敗因として時にある「ガス抜きができていない」というパターンとも違いますか。
どちらとも言えそうです。それだけに走ってみないとわからないのですが、距離も延びますし、その点も踏まえて未知な面がありますね。
明確な敗因がなかったプレサージュリフト
——先週は日曜が阪神での騎乗、秋華賞(G1)のプレサージュリフトはどうだったでしょうか。
春は返し馬から硬さを感じるところがあって、今回もその心配がないか、気を付けながら乗りましたが、雰囲気自体は良かったですし、硬さもありませんでした。ゲートの出方は課題でしたし、色々な形を想定していたものの、結局、スタートは出てくれたのですが、二の脚が付かなかったので切り替えて末脚を活かすことに。ただ、レース展開的に後ろから行く馬には厳しかったですし、もう一つ反応し切れていなかったですね。
——やはり距離の課題もあるのでしょうか。
距離なのか、輸送なのか、原因ははっきりしませんが、クイーンCを勝った時の末脚はなかったですね。ベストの条件は掴みきれてないところがあります。もちろんクイーンCで強い勝ち方をしましたし、東京マイルは悪くないと思うのですが。
——新馬のラピッドベルは惜しい結果でしたね。
しっかり走ってくれました。スタートの遅さもリカバリーしてくれましたね。一度使ったことで上積みもありそうです。
——コスモノアゼットは相手関係も手強く、ペースも速かった中で健闘したように感じました。
いや~やっぱり折り合いが難しいですね。もっとしっかり折り合えていれば、と思いますが、難しい馬です。
——府中牝馬S(G2)のラヴユーライヴはどうでしょうか。
走りも素軽くて体を使えて、バネも感じました。もう少し力をつけてくれればパフォーマンスを上げられそうです。
——フォラブリューテは多頭数の内枠に不安を感じました。
スタートを決めたかったですね。出遅れてしまいましたし、折り合い的にもリズム良くいけませんでした。まだ精神的にも弱くドッシリしてほしいです。
——前走では他馬を気にしているようにも感じましたが、そんなところはありませんでしたか。
いや、それはなかったですね。ただ、もっと短い距離で自分から脚を溜めるくらいの形を採って、競馬を覚えてもいいのかもしれません。
——ピッチパーフェクトは砂を被る面が良くなかったですか。
そこまで苦手というほどではないですが、多少そういうところがありました。少頭数でしたし、もっとバサッと被ればもっと嫌がっていたかもしれませんが。それよりももう少しスピードが欲しいところ。トビが大きくて躍動感はある一方、器用さが足りないようにも感じました。コーナー4つの競馬の方がスピード適には対応できそうです。
——ウィルソンテソーロは連勝です。
前走が強い勝ち方でしたが、テンションが心配でした。リズムを崩さないよう気をつけましたが、終いの反応も良かったです。ワンターンの方が走り易いですし、テンションの面を考えると、条件も変わってくるのかもしれません。
——ジャスティンユウジは実戦で初騎乗でした。
芝で硬さがありましたし、ダートの方がいいかもしれませんね。
今後のG1での騎乗予定はほぼ無し…… それでも!?
——少々、時間が空いてしまいましたが、振り返らせていただくと年間100勝を先日に達成されましたね。
今までは数字を目標として挙げることはなかったのですが、今年は早くから意識してきましたし、達成できてよかったです。昨年も達成できませんでしたし、今年こそは、という思いの中で達成できましたからね。怪我こそ治っていましたけど、昨年は感覚の面が足りていなかったのだと今では思いますし、自分にとっては大きな数字です。
——周りも怪我や遠征などの離脱もあったとはいえ、リーディングも上位。そう思うと、重賞やG1での活躍も期待されるところです。
勝てていない実感はありますね。ただ、巡り合わせの面もあると思いますし、たとえば今は「G1に乗れていない、ならば何か乗らないと……」なんて意識も特にないです。結果よりも馬との感覚を照らし合わせることを楽しめています。
——今後のG1での予定はありますか。
特にないです。JBCくらいですかね。ただ、それが自分の現状だと思います。だからといって、自分の中でやることは明確ですし、コツコツとやっていくだけです。
昔のようにG1で乗れていないからと慌てるところはありませんね。実際、これだけ勝たせてもらっているのにG1で騎乗がないのはダサいと思いますよ。でも、「ダサい、情けない!」と思いつつも、その自分も今は納得できるというか……。カッコ悪い自分でも受け止められている。だからコツコツやっていけば、また巡り合わせも良い方に巡ってくるでしょうし、チャンスが来た時に力を出せるようしっかりスタンバイするだけです。
——ここぞの代打、リリーフができる準備はできていると。
ハイ、そのつもりです。
——そんな状況ですが、今度は新たな髪の色にトライされていますね(笑)。
以前は長くしたりしていたのですが、もともと天パでもあり、湿度の高い夏場は厳しかったです。また伸ばしても良かったのですが、飽きもきて……そこで今度は色を試してみました。人生、一度切りですからね。試すのも面白いですし、色々やってみたいです(笑)。
——本業に繋がるかはどうかも、心境の変化ですかね。
もしかすると、ですけど、普段の心の持ち方の変化がこうしたところにも出ているのかなとも思いますね。
——先週は大井競馬という点で少なからず縁のある坂井瑠星騎手がG1初勝利でした。
本当に良かったですね。ジョッキーとしては凄く良い道を歩んでいますね。海外経験も豊富ですし、武者修行に行っても、あそこまで結果と騎乗スタイルに反映できているのは瑠星が一番だと思いますから。凄く成長していると感じます。
——以前伺ったかもしれませんが、お父さんが坂井英光さんということで、以前から縁があったかと思いますが。
でも、面識がしっかりできたのは(坂井)瑠星がジョッキーになってからじゃないかな~。大井時代は記憶がないですね。昔は「お父さんより勝つから」ということで、嫌われていたらしいですけどね、本人には聞いたことはないけど、そんな話を坂井英光さんには聞いていました。今は英光さんも僕のいいところを言ってくれているからか、聞きにきてくれたりしますし、乗り方も達者。海外にも人脈もあるでしょうから本当に楽しみなジョッキーですね。
——ということで、雑談も踏まえさせていただきましたが、次週も東京での騎乗。来週もよろしくお願いします。
よろしくお願いします!
※次回は10月28日(金)に更新予定です!当コーナーは電話で取材を行っております。
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。