'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
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【祝】レガレイラで自身10年ぶりの有馬記念勝利!ホープフルSに挑むマスカレードボールの課題とは!?
2024/12/27(金)
レガレイラと初コンビで挑んだ有馬記念では見事に勝利!有馬記念は2014年以来、2度目の勝利となった。中5日で行われる28日の開催最終日はホープフルSで3戦連続のコンビとなるマスカレードボールに騎乗する。アイビーSを制していることで上位人気に支持されるだろうが、ひと際、周りのレベルが上がったところで太刀打ちできるだろうか。
マスカレードボールは精神面の課題がどう出るか
——今週は2度、お話を伺う機会があったので、有馬記念(G1)の話題は後程たっぷりとお届けさせていただきますが、今週のホープフルS(G1)にはマスカレードボールと臨まれます。
ここまでポテンシャルを感じる走りをしているので期待はしています。ただ、精神面の不安もあるので。そのあたりがレースを終わってみてどうか。やってみないとわからない面があるのは否めません。
——精神的な問題はこれまでも口にされていました。もう少し砕いて言っていただくとどうでしょうか。
走っていても集中していないと言いますか、何か他のことを考えながら走っていると言えますね。
——その分、余裕をもって走れているとも言えますか。
それは言えますね。
——そんな気配が見えたのは特に新馬戦だったと思います。2戦目はテンでアタマを上げたりしましたが、走り自体は優秀だったのではないでしょうか。
序盤で頭を上げたのはハミ受けの問題でもありますからね。そこは集中力とは別のことでしたね。レースの組み立て自体は凄く上手に走れていましたよ。
——追い切りでは1週前、当週と映像を公開されています。1週前に乗られていましたが、いかがでしょうか。
1週前もやはり精神面の心配を感じましたが、今週はそれなりにまとまっていましたね。
——この精神面はレースを重ねること、馬具を替えることで改善される見込みはどうですか。
自分が乗せていただいた中でもあまりいないタイプなんです。正直、わからないのが本音です。
——精神面以外は成長していますか?
体質は全体的にしっかりしてきたなと感じますよ。
——距離適性はマイルじゃないかと仰っていましたね。
ただし、先ほどの通り、精神的な余裕があるとすればこなせるのかなと。その点の印象は変わってきましたね。
——枠順は大外になりました。
正直、組み立てはしづらいなと。どんなペースが良いのかも含め、未知数ですが、いい結果がついてくれば何よりです。
——その他のレースではチェンジオブハートやタッセルに騎乗経験がありますね。
チェンジオブハートは走る気持ち、集中力が散漫なので、そのあたりがいい方に出てくれれば。タッセルは前走で上手に走ってくれました。あとは相手関係次第ですね。
——ショウナンラピダスは久々のレースです。
新馬の時がいい勝ち方。その後がもう一つなんですよね。いい成長してくれれば。
アイアムユウシュンはこのクラスを卒業できる能力はあるので、上手く力を引き出せれば。ヴァナルガンドも久々の分はどうかですが、力上位の存在ですね。
——テウメッサも夏場以来のレースです。
中山も走っているので問題はないと思いますが、ワンターンとはコース形態が全く違いますからね。素質的には3勝クラスでも通用していいと思うので、あとは状態面と今、中山マイルに対応できるか、ですね。
1週前も多数騎乗でMVJも当確
——先週の有馬記念以外のレースから振り返っていただきたいと思います。ダルダヌスはどうでしたか。
長期休養明けながら、しっかり流れに乗れていました。次に繋がる内容だったと思いますよ。
——ラレーヌデリスはいかがでしたか。
ポジションが後ろになってしまったのですが、雰囲気自体は悪くなかったです。ただ、2着に来た時の伸びではなかったですね。
——ダノンマカルーは昇級初戦でした。
結論から言えば乾いた馬場がどうなのかな、という走りでしたね。ハマりが悪かった印象でした。それに昇級してペースも違ったことでフィットし切れていませんでした。
——ショウナンマリーナは勝ったかと思いましたが……。
いいスピードで押し切ったと思ったんですけどね。それでも、チャンスは早いうちにやってきそうです。
——コアは難しそうな走りでしたね。
終始、左にモタれていましたね…。能力通りに走り切れませんでした。
——ジューンブレアで勝利されました。
返し馬もできてないように、テンションが上がってしまうようです。ただし、レースではいいスピード。強い内容で最後も反応してくれました。テンションが心配ですが、上手く成長していってほしいです。以前、ダートに試されていましたが、芝のイメージでしたよ。
——サトノクロークのレース(グレイトフルS)は戸崎さんにとっても好相性だったので期待していましたが。
イメージ通りのレース運び。道中もそんなにリズム悪くなかったので、あとは伸びるだけでした。それが反応がなくて。見えない疲れがあったのかもしれません。
——戦前の追い切りにも乗られていたダカラフェスティヴはどうでしたか。
集中力や前向きさに課題があって、レースでも精神面の課題がありました。乗り味的にはいいところはあるので、改善されてくれればいいですね。
枠、展開とイメージ通りに向いた有馬記念
——そして、レガレイラと挑んだ有馬記念(G1)ですが、改めておめでとうございました!
ありがとうございます。
——テン乗りで未知数な面もありましたが、本当に良かったですね。
ゴールした時は負けたという感覚もあって。すぐに勝ったかどうかわからなかったです。入線してからもクリスチャン(デムーロ)と喋ったわけでもなく、半信半疑でしあね。
——だから、整理枠のところで表情が崩れたと。
そうなんです。あそこまで確信は持てなくて。だからウイニングランもできていないし、シャフリヤールがどっちに入るかなと遠目で眺めていて。木村(哲也)先生が1着のところにいたのはわかったんですけどね。だけど、どうなのかなと。確定していなかったですからね。でも、みんなが「勝ってる、勝ってる」と言われたので、そこで喜べましたね。最悪のケースも考えていましたよ。勝つと勝てないでは大違いですからね。
——何が一番の要因でしたか。
ポジションですかね。それは枠順から始まっていますよね。これがシャフリヤールと逆だったら、と思うとね。
——調教での感触との違いはどうでしたか。
でも、同じですよ、感触としては。今まで乗せていただいたG1馬の中では、まだ伸びしろを感じる面をより感じました。例えば、未勝利戦でもよっぽど力が抜けていれば自信を持てるけど、未知数な面もあるので慎重な意識ではありました。
——成長の余地はあるのですね。
それはあると思いますねえ。3歳という年齢でもありますし、何より線の細さも感じますからね。もちろん成長ができるかどうかも、馬の資質ですから、変わる余地があっても、変わらないこともあるので何とも言えないですけどね。
——当日の気配はどうでしたか。
雰囲気は良かったですよ。スイッチが入ってテンションが上がることがある、と言われていましたけど、ずっと落ち着いていましたし。スイッチが入るといっても、優しい女の子だからこそ、周りに影響されるような繊細さがあるのかなと感じましたね。
——悪さをするというレベルではないと。
ゲートの中ではそれもありましたけどね。ジッとしていられず、堂々とはしていられなかったです。「これは遅れるな」というくらいの態勢でしたよ。少し出負けはしたんですが、偶数も良かったし、枠の並びもいいなと思っていたんです。イメージ通りの展開でしたね。内の馬が行って、外から来るのもそんなにいないと思っていたのでね。イメージしやすい流れになったなと思いました。
——返し馬の雰囲気はどうでしたか。
良かったですね。でも、馬場がけっこう硬くなっていたので。レガレイラにとってはいいなと感じていました。力がつき切っていなくて、それでもバネがあって走りの軽さはあるのでね。レガレイラにとっていい方に向く馬場だなと思いました。
——内枠の馬が先行しそうに感じた方はいらっしゃったでしょうね。
それ故に今回はスタートを決めてくれればと思っていましたね。行く馬と行かない馬がハッキリしていたので、余計にね。
——内の馬が遅れたのも良かったですね。
結果的には良かったですね。
——去年のホープフルSは有馬記念デーから中3日ほどの開催。馬場も荒れているように感じましたが、決してそんな馬場が向いているわけではないと。
そう思いますね。非力とまでは言わないですが、現状は体質的にも硬い馬場の方が頼りやすいのかなと。
——スタートをして、流れ的にもすごくいいポジションに収まって、早目に「これは」と感じていました。
勝つ、勝てないとは思わないですが、イメージ通りのポジションに入れたなとは思っていたんですよね。
——折り合いは問題なかったですか。
問題なかったです。乗りやすさは感じていましたからね。直線でもすぐに進路は見つかりましたね。道中もあまり動きはなかったので、ポジションと折り合いがしっかり決まったのが良かったですね。
——シャフリヤールが来ることは想定してましたか。
別の馬に乗って強い勝ち方をされた馬もいましたが、横一線の相手関係だと思っていました。だから、何が来るかはわからなかったですね。そもそも自分があんまり他の馬を気にしないこともありますからね。
——下級条件で少し前に「1番人気を気にし過ぎたかな」というコメントをされていて、珍しいなと思っていたくらいです。
はいはいはい、たま~にはありますよ。明らかに強いとされていたら意識し過ぎて、裏目に出たりということはありますね。自分の中でこの馬に勝つには、と考える時もあります。それでも自分としては大半のレースで上位勢でそんなに差はないと思っていますからね。より自分の馬に集中したいです。自分の馬と相手関係、両方を意識できればいいんでしょうけど、自分の場合は自分が乗る馬のパフォーマンスを上げたいと思いますね。
「師匠」からの縁も感じた勝利
——今後、レガレイラの適性に関してはどうなりそうでしょうか。
2000m以上なら幅広くこなすんじゃないでしょうか。あとはスタートが決まって、流れに乗れればね。もう少し精神面もどっしりしてくれれば安定しそうです。
——位置取りは違いますが、スローペース、牝馬、先行策、勝負服、(ジェンティルドンナを)思い出すところはなかったですか。
ま~あんまりは考えなかったですかね。牝馬は相性が良いとは自分の中でも意識はあるのでね。そこはありましたけど、10年前と重ねるところはなかったですね。
——いなくなってはしまいましたが、ドウデュースという存在がいた年で、いい勝負ができるなら最後の接戦で斤量の後押しも必要なのかなと個人的には感じていました。
まあ自分が乗る馬を決めているわけじゃないから(笑)。今年はファン投票によって出走馬が決まったりしましたからね。
——戦前は勝つイメージはできていましたか。
イメージ…。レースでは初めて乗るからねえ。こうなったらいいな、くらいで着順は思い描いていなかったです。いい結果になればなと。普段からそうですけどね。こうなったら最高のパフォーマンスになりそう、というくらいでね。乗ったことのある馬で力差がわかるレースだったら、また違いますけどね。
——陣営とは何か喋ったりはありましたか。
「完璧だったな」と先生から声を掛けてくれたくらいで。他は表彰式だとかありましたし、称え合うくらいで特別なことはないかな。
——担当の助手さんは船橋競馬に縁のある方なんですよね。
そうなんです。そこは感慨深いですね~。お父さんはお世話になった方で、アブクマポーロを担当されていて。息子さんはイクイノックスもやられていましたよね。後々になって僕は息子さんだと知ったんですけどね。
——お父さんの担当馬に乗ったことは。
何度かありましたね。石崎(隆之)さんの縁もありますから、そのつながりもあって電話することもよくありましたからね。
——いわば戸崎さんの師匠である石崎さんからの縁と。表彰式はどうでしたか。
とにかく寒かったですね。風も強くて。最終レースがすぐだったのでね。ちょっと今後は対策しないとなと。体が凍えるくらいで、あれですぐに騎乗はパフォーマンス的には良くないですね。
2024年を振り返る
——気は早いですが、戸崎さんにとって2024年はどうでしたか。
数字で言えば、ここ最近の中では良かったんじゃないですかね。
——あと5つですか。勝てば2年前を超えられましたが、ちょっと大変になりました。こちらは超えてくるかなと思っていました。
ああそうなんだ!?最近の中ではけっこう勝てた方かなと。一番勝ったくらいに思っていたんです。
——どうりでこちらが読んでいて、他の記事のインタビューの内容に違和感を感じたわけですね。
今年みたいに勝ててないんだと思っていましたからね。一昨年勝ってるんだ?ああ、そう。へ~。
——2年前を忘れてる。
忘れてました。数字は気にしていないんでね。数字というよりは、感覚が今まで以上に馬へのアプローチも良くなっていると思うので、そのあたりは良いなと、成長しているなと感じます。まだまだ改善できることはありますし、改善して、より精度を高めていきたいです。
——これはこちらもよく言っていますが、今年、感覚が良くなっていると仰っていますが、数年前であればそんなことを仰っていなかったですね。
まあそうですね。
——今の諸々の状態で例えば5年前、6年前に乗ったらどうなりますか。
いや~わからないですよ。考えても仕方ないといいますか、やっぱりそこがあっての今でしょうからね。怪我とかも含めてね。
——ジョッキーのキャリアとして、今はどうですか。
やっぱり自分の中では今はいいところにいるのかなと思いますよ。
——他の競技では野球なんかはやれても40歳前後までだと思います。40代半ばでいい成長曲線を描けているジョッキーという職業はどうですか。
素晴らしいですよ!もちろん馬がいるからこそできる競技ではありますけどね。他のプロスポーツは自分が動かないといけないからこそ、違いがありますけどね。怪我や事故と隣り合わせだけれど、この年齢になってもやれるジョッキーという職業は素晴らしいです。
——今年の一年の成績は想像できましたか?
想像はしていないですね(笑)。
——第六感みたいなのもありませんか。
ないない(笑)。来年もわからない。でも、先の流れはわからないですけど、流れってあるでしょうから、それに乗っていきたいとは思いますよ。
——以前も伺いましたが、流れを寄せるための取り組みはありますか?
全くないですね。お参りとかも定期的にやったりするわけじゃないし、いいと思うことだったらやるというくらいで。全く自然ですよ。でも、流れだけは良い事も悪くても乗っていきたいです。
——悪くても?
悪くても。だってそれが自分の人生だと思うからね。
——大きな舞台でのレースが続きましたが、今年はG1での活躍も目立ちました。一般の社会人ではなかなか抑揚のない毎日になりそうなものですが、アドバイスになるような日々の取り組み方はありますか?
常に高みを目指したいとは自分では思っていますね。結果を出すために何をすべきか、常に考えられるように意識しています。常に上手くなりたい、成長したいとね。食事も食べたいものがあっても制限したり。あとはトレーニングも体の使い方を意識したり。
——それにしても、今回の有馬記念はドゥラドーレスと挑んだ毎日杯のリベンジになりましたね。それはそれ、これはこれ、かもしれませんが。
そうなりましたねえ!正直、別なんだけど、後々考えると繋がるフシもあるのかなと今では思いますね。「リベンジ」ではないですが、ドゥラドーレスの騎乗は自分の中でもターニングポイントですからね。
——それだけ悔しい騎乗だったと。
同じようなケースでは最初は(大井時代の)ナイキアディライトですよね。もちろん他にもいろいろな失敗、ミスはしているけど、それくらい感じるレベルですよね。情けなくてね。
自分らの職業は勝負の世界なので、刺激があるからこそ、そういう感情のふり幅もあるのでしょうけどね。一般の会社員の人たちも気持ち一つで意識は変わるのかもしれませんね。
——下世話な話ですが、ものすごい1着賞金ですね。翌日は残高を見たり、「レガレイラスーツ」を購入したりされたり?
しないしない(笑)。でも、凄い額ですよね。だから、周りが喜んでくれるので何か還元できればね。
——「周り」とは総代表を務められる剣道道場ですか。
そうです。年末、行けていないこともありましたが、今も週2は顔を出すようにしていますよ。
——レガレイラの効果で道場生が増えますかね。
ただ、活動時間が遅いんですよね。そこだけがネックですよね。教える側も皆さんボランティアでやってくれているので、どうしても遅くなりますから。あとは子供たちや親御さんがその時間でも来てくれるならね。
——今後の年末年始の過ごし方は決まっていますか?
同じですよ。日程も統一されてきましたし、取り組み方も変わらないかな。
——お酒は控え目に、ですか?
いやいや、飲むよ!!そこは飲んでもいいんだけど、あとは意識的に切り替えの問題かな。そこはしっかりと。
——一時は正月開催の成績が良くないということでお酒の付き合い方も変えられたりありましたね。来年の目標はどうでしょうか?
日本ダービーかな。でも、それじゃ6月以降の目標がないじゃん、ってなるよね。考えておきます。
——まあ、常に高みを目指されているのであれば、大きな目標がなくても大丈夫ですね。
そうですね。あとはダービーに向けてもいい流れがあればね。
——長々となりましたが、有馬記念はおめでとうございました!今年もありがとうございました。
ありがとうございました!来年もよろしくお願いします。
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。