外枠有利の新潟直線1000mで最内枠から内ラチ沿いを通って勝利するなど、その大胆な騎乗に注目度が
日増しにアップしている永島まなみ騎手が、騎乗論から日常まで余すことなく語りつくします!
初めてのG1で起きた奇跡!多くの課題と収穫を残した2歳女王決定戦
2023/12/15(金)
先週の阪神ジュベナイルFで記念すべきG1初騎乗を果たしたまなみ騎手。大外から差しての7着は、多くの課題と収穫を残しました。悔しい初G1プレイバック、そしてゲート裏の"奇跡"など、今回も盛りだくさんでお届けします!
スウィープフィートと挑んだ大舞台!初G1騎乗で得た数多くの"学び"
——今週はまずスウィープフィートで挑んだ阪神ジュベナイルFのお話からでしょう。G1初騎乗、お疲れ様でした。率直なご感想から伺いたいです。
本当に、乗せていただいて素晴らしい経験をさせていただきました。同時に私の技術不足が感じられたレースでもありました。
——レース前はあえて作戦をお聞きしませんでしたが、レース前のプランはどのようなものだったのでしょうか。
ゲートを出れば中団までにつけておきたいと思っていましたが、デビュー戦からゲートの中での駐立が悪い子で、少し出遅れることも頭にあり気を付けてはいたのですが、実際のレースでも出遅れてしまいました…。
——ゲート練習を行ってもなかなか改善されない部分なのでしょうか?
そうですね、新馬戦の前にゲート試験を受ける際にも、うるさいところがあってゲートの中で縛っていた馬なんです。
ちょうど今日(14日木曜)、スウィープがゲートの中で縛るという話を伺って観にいって、実際乗せてもらいました。まだスウィープ自体が納得していないようで、ゲートの中で縛っている時は問題ないのですが、私が乗ってゲートの中で駐立すると落ち着かずにゴソゴソするところがあります。この部分がもう少し成長してくれればと思います。
——テンションが鍵と何度か伺っている馬です。中1週、テンション面はいかがでしたか?
テンションはゲートに入る前までだいぶ落ち着いてくれていました。中1週の影響はそこまで感じませんでした。
——以前は返し馬を1頭ではできない馬でしたが…。
だいぶ成長してくれて、返し馬もいい雰囲気で挑めたと思います。
——出遅れて後方からとなりましたが、この時点ですぐにプランを切り換えられたのでしょうか?
そうですね、ペースにもよると思っていました。ただ出遅れた分3、4コーナーで上がっていってサフィラを目の前に見るポジションにつけたのですが、今思えば外回りも踏まえて、3、4コーナーで上げず、内ラチ沿いでもっとジッとしていれば良かったなとも思います。
選択肢が外に行くしかないポジションになってしまいましたし、内にも行けるような進路取りをすればよかったとも思います。
——3コーナー付近から少し頭が高くなる素振りもありました。なんとかセーブできていたのでしょうか。
気持ち力んでいたところはありましたが、すぐに我慢が利いてくれて良かったです。
——まなみ騎手がレース後おっしゃっていたように、直線少し内にモタれ気味の走りになりましたね。
やっぱりまだ直線追い出したら右にモタれていました。こういう部分が改善されればもっといい走りができそうです。結構馬格もありますし、まだまだ成長してくれると思います。
——最後方から追い込んで7着という結果でしたが、改めてスウィープフィートの力を感じるレースでしたか?
本当に馬自体は力がある馬だと改めて感じさせてもらったレースです。来年の春が楽しみです!
——こちら、初G1については後程、更に深く聞かせていただきたいと思います。先週末は土曜の中京で1勝、日曜の阪神で1勝の計2勝を挙げられました。まずは土曜の中京5R・ナムラエデンは逃げて完勝でしたね。
スタートも速く、内枠もあり逃げる競馬を選択しましたが、最後まで本当に集中して頑張ってくれました。
——先週のコラムで「右回りは最後外にフラフラするところがある」とおっしゃっていましたが、左回りでは大丈夫でしたでしょうか。
4コーナーを向く時に気持ち外に行きかけたところはありました。それ以外はしっかり、まっすぐ走れていました。
——日曜の阪神7R・マーブルロックも逃げ切り勝ちでした。近5走二桁着順だっただけに、まさに一変でしたね。
先生(西園正都調教師)からも「ゲートも速いだろうから逃げてほしい」という指示を受けていました。以前騎乗経験がある(田口)貫太にどんな馬か聞いたところ、「砂を被るのはあまり良くなさそうです」と教えてもらったので、逃げる指示通り淡々と乗れればと思っていました。
強かったです。今回のように揉まれず逃げる形で運べれば昇級でも楽しみがあると思います。
今週は土日で17鞍に騎乗!女性騎手年間最多勝記録に挑む
——今週は土日共に中京で、土曜が9R、日曜が8Rの計17鞍に騎乗されます。いつものように実戦、調教に騎乗経験のある馬を中心にお聞きしていきます。土曜の中京1R・2歳未勝利のガラシュは4走ぶりの騎乗になりますね。
久々の騎乗になりますが、だいぶ行き脚もつくようになっている印象です。揉まれ弱いところがあるので、うまく先行力を生かしてて前目につけられれば力を出してくれるんじゃないかと思っています。
——中京3R・3歳上1勝クラスのシンエンは先々週、まなみ騎手が騎乗され2着となっています。
前走は直線なかなか前が開かず追い出しが遅れた分もありました。それでも終いいい脚で伸びてくれましたし、今回もロスなく回ってこれればいい末脚を使ってくれるのではないかと思います。
——中京5R・2歳新馬は自厩舎のインジケーターで臨まれます。2週連続で追い切りに騎乗されていますね。
今週水曜、インジケーターの調教に騎乗するまなみ騎手
まだ少し幼いところがありますが、走りだせば一生懸命走ってくれます。芝で追い切りに乗りましたがダートのほうが良さそうでした。前前で運びたいです。
——中京8R・3歳上1勝クラスのヨドノゴールドは先々週、同じ中京ダート1200mでまなみ騎手が騎乗され、3着でした。
スタート良く前前で運んで、しっかり最後まで走ってくれました。1200mは気持ち長い気もしますが、ロスなく立ち回れれば1勝クラスでもチャンスがある馬だと思います。
——日曜の中京1R・2歳未勝利のアンドゥーラは今週の追い切りに騎乗されましたね。
今週追い切りに乗せていただいて、雰囲気はすごく良かったです。前走いい脚で伸びていたので、今回も前走の(団野)大成さんのような末脚を生かす競馬をしたいです。
——アンドゥーラと同じ須貝尚介厩舎所属、中京2R・3歳上1勝クラスのキレナイカは先月に追い切りに騎乗されています。
調教はすごく乗りやすくて従順な子です。減量もありますし、普段より前前で競馬ができれば頑張ってくれるんじゃないかと思います。
——中京6R・3歳上1勝クラスのブライトサインも今週追い切りに乗られています。今回は芝に戻りますね。
そうですね。調教でハミを噛むところがあり時計的には速くなるところはありました。今回は芝ですが、勝った時も同じ芝の1600mなので、折り合いに気をつけて乗りたいです。
——まなみ騎手で3、2着と相性のいい中京7R・3歳上1勝クラスのチョッピーは連闘になります。
前走はすごくいい手応えで回ってこれたんです。これなら直線で突き放せると思うくらいの手応えだったのですが、最後の馬を抜かさない気の悪さを出してしまい、自分からブレーキを掛けるところがありました。
早めに踏むとそういう面を出すのかもしれませんし、最後の最後に前を抜かすイメージで追い出せればと思います。うまく工夫したいです。
——中京10R・桑名特別に挑む自厩舎のビッグボーンリタは前走、まなみ騎手が勝利に導き、今回は昇級初戦となりますね。
前走すごくいい内容で勝ってくれましたし、使いつつ競馬の内容も良くなっています。昇級初戦ですが、前走のようにうまく立ち回れればと思います。
初G1挑戦で起きた奇跡!"恩師"の前で挑んだ大舞台
——さて、初G1騎乗について改めてお聞きします。先週のコラムで「緊張などはまだ全然ない」とおっしゃっていました。レース前まで緊張なく運べましたか?
そうですね、思った以上にいつも通り挑めました。今回のスウィープはJRAの方がゲートに入れてくださったのですが、この担当の方が、私が阪神競馬場の乗馬スポーツ少年団でお世話になった新井田先生だったんです。すごく感慨深いものがありました。
本当に偶然の話で、先生は先週だけ阪神でゲートの担当をされていたんです。中学生の時に入っていたJドリーマーズでもずっと教えてくださった方で、私の"お父さん"のような存在なんです。
阪神競馬場の初G1で、阪神競馬場で小さい頃からずっとお世話になっていた先生にゲートに入れてもらえてすごく嬉しかったです。
——初G1騎乗でしたが、レース前夜はいつもと同じ感覚だったということでしょうか。
いつも通り結構ガッツリ寝れました(笑)。
——先輩ジョッキーたちからはレース前、何か言葉を掛けられましたか?
(坂井)瑠星さんが午前のレースの時から「緊張してるんじゃないの?(笑)」と声を掛けてくださいました。レース前、ポケットの地点で「いつも通り、緊張せずに」とも声を掛けてくださって。
(西村)淳也さんは同じ阪神競馬場の乗馬スポーツ少年団で新井田先生に教えてもらっているので、「良かったなぁ」と声を掛けてくださいました。
瑠星さんたちが笑いながら話しかけてくれたおかげで、あまり緊張せずにいけましたね。すごくいい先輩たちに恵まれました。
——G1前の検量室の雰囲気は違うものなのでしょうか。
G1の舞台ということで、ピリつくというわけではないですが、皆さん雰囲気は違うなと思いました。
——自厩舎の高橋康之先生から何か言葉はありましたか?
日曜は朝栗東で追い切りに乗ってから阪神競馬場に移動するのですが、日曜は中京で臨場される先生にもそこでお会いして、「頑張っておいで!」と激励していただきました。
——返し馬などいつものルーティンも、G1とはいえいつも通り臨めたという形でしょうか。
そうですね、変に気負わずいつも通り挑めました。
——最後の直線、大外で歓声を一番近くで浴びる立場でした。ジョッキーの皆さんは直線の歓声はかなりしっかり聞こえるものなのでしょうか。
めちゃくちゃ聞こえます!「うおわぁぁぁ!!」って感じで(笑)。G1の歓声は他のレースとは違いましたね。凄い歓声でした。
——レース後「私の技術不足」とコメントされていました。逆に今回、良かったところをお聞きしたいです。
良かったところは…。なかなか自分の中で反省しかないレースで、スタートもずっと乗せて頂いているのに駐立で我慢させられず出遅れてしまいましたし、出遅れた後の対処も自分の中で納得いっていません。まだまだ学ばないといけないと思いました。課題が見つかったことが良かったことかもしれません。
——初騎乗後、先輩ジョッキーたちからはどのような言葉を掛けられたのでしょうか。
私が出遅れてから焦って位置を上げたところを見て、先輩から「もう少しじっくり運んだほうがいいよ」と言われましたね。
——阪神ジュベナイルFはその後何度も見返されているのでしょうか。
観てますね。もっとこうしたほうが良かったなとか、色々考えています。
——今後のジョッキー・永島まなみにとって、大きな経験となりそうですか?
本当にすごく貴重な経験をさせていただきました!
——レース前のお話に少し関連するところで、今週はファンの方から質問が届いています。ペンネーム・えりさんから「まなみちゃんこんにちは!初のG1お疲れ様でした!とてもかっこよかったです💛まなみちゃんは重賞等に限らず、騎乗前にするルーティンなど何かありますか?」というメッセージが届きました。熱心なまなみ騎手ファンの方のようです。こちら、確かにまだレース前のルーティンについてお聞きしたことはなかったですね。
応援ありがたいです!私、ルーティンというルーティンはまったくないんです(笑)。ただ普段、金曜に調整ルームに入る前、自分の部屋のお手洗いなどをきれいにしてから行くようにしています。
身の回りをきれいにすると気持ちもスッキリ、リセットされる感じがして。競馬にも新たな気持ちで臨めると言いますか(笑)。
——ゲン担ぎなどはされるのでしょうか。
ないですね。いつも通りのことを常にしようと思っています。
——素朴な疑問なのですが、まなみ騎手はお父さん(永島太郎調教師)も元ジョッキー。永島家には何かゲン担ぎなどはありましたか?
昔はマラソン大会だったり、そういう勝負ごとの時は母がトンカツなど"カツ"をいつも出してくれましたね。父も食べていました。
——他のジョッキーで特徴的なルーティンがある方はいらっしゃるのでしょうか。
どうですかね…。何人かいらっしゃると思いますが、あまり聞いたことはないですね。
——今週もありがとうございました。女性騎手の年間最多勝記録まであと3勝、意識するところはありますか?
そこに目標を置いているわけではないですが、一つ一つの積み重ねが大事だと思っています。このような位置に立たせていただいているからにはしっかり結果を出したいですし、残りも頑張りたいと思っています。
——来週もよろしくお願いいたします。
よろしくお願いします!
いつも永島まなみ騎手コラム"まなみの学び"をご覧いただきありがとうございます!コラム開始3カ月半、ここまでまなみ騎手に色々な質問に答えていただきました。
"ファンの皆様と共に歩む"コラムとして、これからもファンの皆様の質問を幅広く頂戴し、ご本人に聞いていこうと思っております。
競馬に関すること、そして日常生活について、永島まなみ騎手にこれだけは聞いてみたい!ということをぜひご応募ください。頂いたご質問、メッセージは上記のようにご本人に届けさせていただきます。
すべてのご応募はメールにて受け付けております。メールの件名に「まなみ騎手へ」、本文にお名前(ペンネーム)を記載の上、以下のアドレスまでご質問をお願いいたします。皆様ぜひご投稿よろしくお願いします!
manami_nagashima@keibalab.jp
プロフィール
永島 まなみ - Manami Nagashima
2002年10月27日生まれ、兵庫県出身。
父は兵庫競馬で数多くの重賞を制した永島太郎元騎手(現調教師)。父の背中を見てジョッキーを志し、幼少期から乗馬を始め、2018年に競馬学校騎手課程37期生として入学。2021年にジョッキーデビュー。
同年3月14日中京2Rでアクイールに騎乗し初勝利を挙げると、1年目はJRA7勝を挙げる。そして2年目の22年に3倍となるJRA21勝を挙げ躍進。外枠有利が定説の新潟直線1000mで、セルレアを内ラチ沿いから勝利に導くなど大胆な騎乗も多く、ファンを魅了する騎乗に注目が集まっている。趣味は映画、ドラマ鑑賞、料理。好きな言葉は「一生懸命」。常に上を目指す期待のアスリート。