ジョッキー人気もピカイチのマキバオーシリーズ
2017/3/15(水)
ジョッキー人気もピカイチのマキバオーシリーズ
谷:力石って「あしたのジョー」の?カスケードは力石徹がモデルなんですか?
つ:マキバオーは、競馬で「あしたのジョー」をやりたくて描いたんですよ。
高:僕もテレビを観て知ったんです。
谷:知識をひけらかしてくるねー(笑)。さすが「(NHK BS放送)ぼくらはマンガで強くなった」に出演するだけあるわ。
つ:まぁ、僕はあの番組全部は観てないんだけど。
高:ええ!?観てくださいよ!僕、あれ観て感動してたのに(笑)。
つ:自分を見たくないのよ。番組が始まって潤君が喋ってるところは観ていたけど「あ、俺が出てきた」と思って、観るのを止めたの。
谷:アハハ(笑)、そうなんだ。
つ:人から「こういう内容の番組だった」って聞いてるんで、内容は知ってるんだけど。
高:メッチャ良い内容だったし、視聴率も良かったって聞きましたよ。
つ:「これまでで一番良かった」って、番組のディレクターも言ってましたね。
谷:何で自分を見るのがイヤなんですか?
つ:え……、イヤじゃないですか?
谷:俺と潤は大好きだから(笑)。自分が出てるところが大好きな二人だから!
つ:ああ(笑)。出るのはいいんですよ。でも、見るのがイヤで。「調子に乗ってんなー、コイツ」みたいな。あまり喋ってなかったら「もっと喋れよ」と思うし、よく喋ってると「ナニ調子に乗ってんだ」って腹立ってくる(笑)。あと、自分の声って気持ち悪いじゃないですか。
谷:それは分かります。
つ:あれが耐えられないんです。
高:性格が僕たちと全然違いますね。
▲つの丸さんが中山競馬場を訪れた日に高田潤騎手はルペールノエルでV
つ:真逆ですね。ああ、そういえばこれプレゼントで持ってきたんですけど。
高:あ!サイン色紙だ!!俺の似顔絵も入ってる!マジか!?あー、障害で100勝して本当良かった!メッチャ嬉しい!!
谷:いいなぁ!
高:これが競馬のドラマっていうか、この世界にいるとこういう奇跡的なことってよくあるんですよね。今日がまさにそうで、つの丸先生とお会いして話せるなんて、普通はなかなか出来ないでしょ?しかも僕の似顔絵入りの色紙までいただいて……。ジョッキーって、ホント良い仕事ですよね。ケガも多いですけど、それ以上にやり甲斐を感じます。
つ:そうなんだ。でも、障害レースは見ているのが怖いわ~。
高:マキバオーも障害に出てるじゃないですか。
つ:そうそうそう、実はね。
高:もうちょっと詳しく描いてもらいたかったけど、意外とサーッと終わってしまって(笑)。
つ:ほら、よく知らないから。菊花賞の前のステップレースとして障害を使って……、ムチャクチャな(笑)。
谷:マンガだから出来るんだね(笑)。
高:でも、メジロパーマーは、障害を使ってからG1を勝ちましたからね。実際に障害調教をして力が付くことはあるんですよ。最近だったら、障害試験に合格した後に好走したメイショウヤタロウやニシオボヌールとか。メイショウヤタロウは人気薄で2着に来て万馬券になったんです。
谷:それは狙い目だね。
つ:それって一般ファンには分からないんですか?
高:どこかに調教履歴が載っているかもしれないけど、本当に細かく見ないと分からないと思います。
谷:そうだね。いやー、でもこの色紙だけどさ、本当に良いね。羨ましいなぁ。
高:僕が障害と平地で通算100勝して、そのグッズを作るときに先生にイラストを描いていただいて、そのグッズを関係者に配ったんですけど、つの丸先生のイラストが意外に競馬サークル内にはないんですよね。だから珍しさもあって、他のジョッキーも「スゲー!俺も描いて欲しい」ってみんな言ってました。
谷:あれ、前に先生のイラストが入ったグッズが新潟競馬場で配られましたよね。
つ:マークシートケースですね。東日本大震災の被災地応援で。
谷:あの時に「ようやく来た」って思ったもん。それまでつの丸先生のコラボがなかったからさ。
つ:「なんでコラボしてくれないのかなあ?」って(笑)。いや、多分そういうグッズは競馬ファン以外に広げなきゃいけないんで、競馬と関係ないコラボがあった方がいいと思うんですよ。「マキバオーを好き」っていう人は、もう競馬のファンですから。
高:あー、そういう考えもあるか。でも、競馬サークルの人間から言わせてもらえば、競馬グッズのキャラクターといえばマキバオーですからね。
谷:サッカーといえばキャプテン翼、競馬といえばマキバオーでしょ。JRA賞の馬事文化賞をとってもいいと思うけどなぁ。俺が書いた本はハナにも引っ掛けられなかったけど(笑)。
高:僕は中学生のときにマキバオーで競馬に興味を持ちましたし、周りもみんな読んでましたからね。中学生の間でもプチ競馬ブームみたいになって、馬券ではなくスポーツとして競馬に興味を持っている感じで。
つ:マンガだけじゃなくてゲームの影響もあって、血統を語る子供もいたもんね。
谷:そうそう、いたいた。
高:マキバオーは、間違いなく競馬ブームを作るキッカケ、火付け役になっていますからね。
谷:そのマキバオーの連載が終わって、これから先はどういう予定があるんですか?
つ:一年間は、何もしないですね。
高:一年間!?休みすぎじゃないっすか?
つ:いやいやいや、これまで10年ちかくずっと週刊連載をやってきたから。
谷:でも、休んでると、半年くらいでウズウズしてくると思うんですよ。
つ:そうなったら、ですね。やりたくなったらやるっていう感じで。だって今は描きたくないんだもん。机に向かいたくない。連載しているときは人に会わないで、ずっと地下にこもってマンガを描いているだけですから。それを取り戻すように、いまは休んでいろんな人に会って。
谷:確かにこれまでのつの丸先生のツイートを見ると、体を鍛えているか、ドンちゃんの散歩だけだったから(笑)。
つ:ホントそうです(笑)。
谷:ほとんどプライベートの時間がなくて、ずっとマンガを描いているんだなって思っていました。
高:それだけ時間がないと、ツイッターをやってる場合じゃないんじゃないですか?
つ:いや、あれがなかったら本当に誰とも関われなくなっちゃうから。人と顔を合わせることが出来ないのはしょうがないけど、ツイッターで誰かからリアクションがあると「世間と繋がってんだなぁ」みたいな。だから漫画家はツイッターをやっている人が多いですよ。
高:そうなんだ。でも、僕もツイッターやってて本当に良かったです。そのおかげでつの丸先生と知り合えて、NHKの取材まで受けて……。そういえば、そのときも「何で潤さんが取材受けるんですか!俺の方が詳しいっすよ!」っていろんなジョッキーが絡んできましたよ。ジョッキーはマキバオーオタクが多いんで。藤岡康太に至っては「俺の方が絶対詳しい」って、スネ散らかしてましたよ。アイツはホンマしつこかった(笑)。
つ:みんな、そういうことを普段から声を大にして言ってくれないとなー(笑)。NHKから「誰かマキバオーのことを好きなジョッキーはいないですかね?」って聞かれて「うーん……、高田潤くん……、かな。いないだろ、他に」って答えるしかなかったから(笑)。
▲小坂忠士騎手も加わり、記念撮影
高:いやいや、いっぱいいますよ。たまたま放送を観てたときに藤岡康太と川田将雅が一緒にいたんですけど、そこでクイズ大会が始まりましたよ。
つ:「あんまり好かれてないのかな」って思ってたから……、だから近寄れなかったんですよ。「いい加減なこと描きやがって」くらいに思われてんのかなって。
高:全然そんなことないっすよ!ジョッキーだけじゃなくて、競馬サークルの中にはマキバオーの影響を受けたって人がたくさんいますよ。
谷:ホントそうだよね。先生だったら競馬サークルの人間といつでも誰でも会えるよね。え、例えば武豊ジョッキーに会ったこととかないんですか?
つ:ないですないです。恐れ多くて……。だって、そんなに簡単に会える人じゃないでしょう?
高:いや、普通なら簡単には会えないですけど、先生はそれが出来るだけのポジションにいる人じゃないですか。会いたいとは思わないんですか?
つ:いや、怖くて。
高:怖くて、って(笑)。「このジョッキー好きだな」みたいなのはないんですか?
つ:菜七子ちゃんが好き(笑)。
▲藤田菜七子騎手と念願の対面?を果たし、満面の笑みのつの丸さん
谷:あ、じゃあ今度5月にウチでやるバーベキューに来てくださいよ。もしかすると菜七子ちゃんも来てくれるかもしれないし。
高:ちゃっかり自分主催のイベントを告知したな(笑)。
つ:スケジュールが合えば是非。犬を連れて行ってもいいんですよね?
谷:どうぞどうぞ。ドンちゃん可愛いですよね。以前から「ウチに遊びに来てもらいたい」って話はしていたけど、先生もお忙しいから。
高:やっぱり競馬ファンの皆さんも、つの丸先生の馬券の買い方や競馬に対する考えを知りたいと思うだろうし。バーベキューであったりトークショーであったり馬券検討会であったり……、出ていただきたいですね。
つ:週刊連載をやっていると、時間がないですからね。これまではずっと断っていただけなんです。これからも、そういうイベントに呼んでもらえれば。
谷:じゃあ西は潤で、東は俺が先生とガンガン……。
高:谷中さん、辞めちゃうじゃないですか。
つ:え、辞めちゃうんですか?
谷:僕、6月一杯で調教助手を辞めるんですよ。その後は馬主さんの元で仕事をさせてもらいながら、メディアに出たりイベントに出たりしていく予定です。だから、これからは今まで以上に外部から競馬を盛り上げていくことも出来ると思うんですよ。そこでね、是非つの丸先生とも一緒にやっていければ良いですよね。
つ:そうですね。
谷:で、潤には障害200勝をしてもらって、またこの対談を実現させるということで。
高:そういうことか(笑)。そうですね、競馬ラボさんのためにも頑張ります!
-:ありがとうございます。何かちょうど良い感じに締まったんで、対談もこの辺で。皆さんありがとうございました。
【漫画家・つの丸】
1970年、千葉県生まれ。「モンモンモン」で連載デビュー。94年に「みどりのマキバオー」の連載をスタートし、96年、同作品で第42回小学館漫画賞児童部門を受賞。2007年には「たいようのマキバオー」の連載をスタートし、11年にはweb連載で新シリーズ「たいようのマキバオーW」がスタート。17年に同作品が最終回を迎え、「マキバオー」シリーズが完結する。高田潤騎手、谷中公一調教助手とはTwitterを通じて知り合い、今回が初対面。
【高田潤】Jun Takada
1980年11月3日生まれ、大阪府出身。 1999年に松田博資厩舎所属から騎手デビュー。デビュー当初から、平地・障害の垣根を越えた活躍を続けると、2006年にはドリームパスポートで神戸新聞杯を制覇。これが平地重賞初勝利となった。一方、2008年にはキングジョイとのコンビで中山大障害を制し、キャリア初のJG1勝ち。2013年には待望の障害リーディングに輝いた。
また、2009年には師匠である松田博資師の元を離れ、フリーに転向。2012年にも生涯の伴侶を得るなど、公私ともに充実期を迎え、障害競走の次代を担う存在として更なる活躍が期待される。今年2月19日、障害レース通算100勝の節目に到達した。
【谷中 公一】Koichi Yanaka
1965年長野県生まれ。 競馬学校卒業後、1985年に騎手デビュー。JRA通算成績は145勝(平地142勝、障害3勝)。自らの経験を元に、華やかなイメージの強いジョッキー稼業の厳しい現実を書いた名作「崖っぷちジョッキー」を発表し、一躍脚光を浴びる。
騎手引退後は天間昭一厩舎の助手として活躍する傍ら、調教助手という枠にとどまらずドッグガーデン「WANだら~」、コラム執筆など、マルチな才能を活かした幅広い活躍を続けてきた。今年6月20日をもって、調教助手を退職。今後は懇意にしていたオーナー・矢野悦三オーナーのクラウングループのレーシングマネージャーを務めるほか、今後もメディア活動に力を入れていく予定。