今年2月をもって、約10年にわたる連載「たいようのマキバオー」を終えた漫画家のつの丸さん。マキバオーシリーズといえば、1994年から始まった「みどりのマキバオー」も含め、一世を風靡したシリーズだが、大役を終え、かねてからSNS上でやり取りのあった高田潤騎手の応援に中山競馬場へ来場。実は初対面というお二人に、競馬ラボおなじみ谷中公一調教助手も加わり、スペシャル対談が実現した。

取材をせずに描き上げた!?マキバオーのエピソード

-:今日(3月5日)は「みどりのマキバオー」「たいようのマキバオー」の作者・つの丸先生をお招きして、高田潤騎手、谷中公一調教助手と対談していただきます。まずは高田騎手、今日のルペールノエルでの勝利おめでとうございました。

高田潤騎手(以下、高):いやー、今日はつの丸先生に競馬場に来ていただくことが決まっていたんで、メチャクチャ力が入りましたよ!力が入り過ぎて最後は詰め寄られましたけどね(笑)。

つの丸氏(以下、つ):応援馬券を買っていたんで、盛り上がりました。最後に負けていたら、馬券を叩きつけるところでしたよ(笑)。

高:ハナ差でしたからね。勝てて良かったー。

谷中公一調教助手(以下、谷):ホント潤は持ってるよねー、良かった良かった。

高:つの丸先生とはツイッターを通じて連絡を取らせてもらうようになったんですけど、実際にお会いするのは僕も谷中さんも今日が初めてなんですよね。

スペシャル対談

つ:でも、初めて会ったような気がしないですもんね。二人の普段のことも、ツイッターで知っているから。

谷:そうそう、お互いのことを見るからね。でも、潤は俺とはツイッターで絡んでくれないくせに、先生とはよくやり取りしているみたいだからなー。ちょっと嫉妬しちゃったよ(笑)。

高:アハハ(笑)。でも、マキバオーを読んで競馬に興味を持った僕がつの丸先生に会える日が来るとは……。僕が自分でお金を出して買ったマンガって、マキバオーとスラムダンクだけなんですよ。小遣いも中学生のときに1ヶ月500円やったんですけど、マキバオーだけは買っていましたからね。こうしてお会い出来て、本当に感動しますよ。

つ:ちょうど良かったよね。連載も終わって、潤くんにはテレビやイベントで協力してもらっていたし、障害100勝のこともあったから、会うのにちょうど良いタイミングだなぁ、と。

高:僕が競馬の「け」の字も知らないときに、初めて見たレースがナリタブライアンの菊花賞やったんです。で、競馬って凄いなって思った頃にちょうどマキバオーも始まったくらいで。

つ:同じ頃だよね。当時はG1の馬券を買うくらいで、競馬の「け」の字を知っているって程度だったんですよ。

谷:えー、そうなんですか?その頃僕はジョッキーをやっていてマキバオーを読んだけど、よく出来ている話だなぁって思っていたの。どういう取材をしているんだろうなって気になっていましたよ。

つ:いえ、いつ終わるか分からないし、始めるときは何にも取材しませんでした。色々な方にお願いして取材して、それでマンガがすぐ終わっちゃってもアレなんで。だから話も最初はギャグじゃないですか。

谷:それが逆に良かったんですかね。あれ、前にマキバオーが栗東に行ってたじゃないですか?

つ:たいようのマキバオーのときに、ようやく初めて取材に行ったんです。

スペシャル対談

高:たいようで初めてトレセンに取材に行ったってことは、みどりのマキバオー時代は全部資料を元にして描いてたんですか?

つ:そうですね。美浦には一回行ったんですけど、コースには入れずスタンドの上から見るくらいで。いや、資料が欲しいなっていうのが一杯あったんですよ。一番欲しかったのが、コースの向正面からスタンドの方を見る写真で。スタンド側から向正面を見るのはあるんですけど、向正面から見た映像はテレビでもなかったんです。だからグーグルアースを色々な角度から見て建物を描いたりしました。

高:えー!そうだったんですか。

つ:ま、多少違ってても、向正面からの映像を見たことがある人もいないだろ、と思って(笑)。

高:確かに(笑)。

つ:今ならインターネットの検索でいろんな画像を調べることが出来ますけど、昔は素材がそんなになかったですからね。

谷:いや、読んでいてもコースの描き方に違和感がないから、すごく取材したんだろうなって思ってた。

つ:ジョッキーがヘルメットにカメラを着けて撮った映像が動画で載ってないかなって検索したり。あと、コースを走ってる写真が欲しいから、中山コースでマラソンを走れるイベントに参加したり。

谷:イチ参加者として?

つ:そうです。大井や川崎で同じ企画をやったときはゲートからスタートしてたんで、中山もそうかなって思っていたら、中山はゲートを使わず、カメラ撮影も禁止で。

高:えー!

つ:多分、あれは馬場に何か物を落としたらっていうのもあったのかもしれないですけど。写真も撮れず、ただしんどかっただけという(笑)。

谷:ただダートを走っただけ(笑)。これがまたダートが深かったでしょ?

つ:深い深い!メチャクチャしんどかったですよ(笑)。

高:大変ですね(笑)。でも、マンガ家って凄くないですか?絵を描かなきゃいけないし、ストーリーを考えなきゃいけないし。二つの才能がないと出来ないですもんね。天才ですよ。

谷:映画も撮れるんじゃないですか?映画はまさにそういう二つの才能が必要でしょ?

つ:最初は映画を目指していたんですよ。でも、映画は大勢の人と一緒に作らないといけないから。マンガなら一人でお金をかけずに作品を作れるからってことで。

谷:でも、先生もここまで名前が売れたら、今度は自分の作品を映画にすることだって出来るんじゃないですか?

つ:いや、映画にはしたいと思わないです。直接自分でやらないと、何かイヤじゃないですか。自分でやって失敗したら自分が落ち込めばいいだけですけど、他の人たちとやって、あいつのせいで……、みたいになっちゃうのもイヤだなって。


谷中「馬同士が相手を意識するって感じはありますよ。準オープンくらいになるとレースも限定されてるし、同じような顔触れになるんですけど、そうすると馬たちってお互いを覚えてくるんですよ」


高:そうなんですか。観てみたいけどなー。またマキバオーって、キャラが良いじゃないですか。競馬のマンガで、マキバオー以外に馬が喋るマンガってありますかね?

谷:いや、ないでしょ。

高:そこも魅力ですね。僕らからしても「馬って喋れたらこう言ってんのかな」って思うのはありますもん。やっぱり馬と喋れないっていうのは、永遠の課題ですからね。

谷:そうだよね。

高:調子を落としてきた馬に「どうしたんだお前?」とか「走りたくないんか?」とか。聞きたいことは一杯ありますね。何考えてるか分からないんで。

谷:馬にしたら競馬は辛いに決まってるよね。

高:性格的には負けず嫌いな馬もいると思ってますし、競馬を分かってる馬もいると思います。大体はその逆の方が多いんですけどね。

谷:あ、馬同士が相手を意識するって感じはありますよ。準オープンくらいになるとレースも限定されてるし、同じような顔触れになるんですけど、そうすると馬たちってお互いを覚えてくるんですよ。そういうの感じない?

高:ありますね。

つ:じゃあ、馬でも「あいつイヤだなー」とか「あいつ怖ぇーなー」とか思ったり。

谷:ありますあります。ロゴタイプなんかそうだったんですけど、皐月賞のときは周りの馬を威嚇してましたからね。馬体が黒いし、まさにカスケードっぽい感じで。

スペシャル対談(2P)
『ジョッキー人気もピカイチのマキバオーシリーズ』はコチラ⇒