今後の更なる飛躍に向けて
2011/7/30(土)
-:その秋山さんは、海外競馬にも詳しいと耳にしました。これから海外に(長期的に)行こうとは、考えたりはしませんか?
秋山:詳しいんですけれど、行く勇気はないですね(笑)。
リスポリ:なんで、挑戦しないんですか?
秋山:行って、帰って来た時に、また、一からやる(騎乗馬集めなどをやり直す)というのがね…。今くらい、乗せてもらえるという保証があればいいけれど、なんせ、性格が横着ですから(笑)。
リスポリ:スグルみたいに若いジョッキーは、もっと挑戦した方がいい。僕もイギリスに2か月間行った事があるけれども、イタリアでの立場に全く影響はなかったし、日本人のジョッキーは、もっと海外に出てゆけば、いいジョッキーになれると思います。僕はそんなに好きではないけれど、イギリスの競馬はかなりアグレッシブな騎乗をするから、そうゆう意味でも、(控えめなところのある)日本のジョッキーはイギリスの競馬に行ったら、プラスになるんじゃないかな?
秋山:32歳からでも、遅くないかな(笑)?
リスポリ:大丈夫だと思うよ!
-:確かにこれだけ、外国の方々は頻繁に海外に行かれるのに、日本のトップジョッキーが、海外に長期的に行く事はないですね。
浜中:きっと、日本の競馬の環境がいいからなんですよ。賞金面や設備も、ファンもたくさんいますし。そういう意味でも、なかなか出辛いんでしょうね。
-:確かにそういうところを求めて、外国の方も来るわけでもありますね。
リスポリ:ダイサクさんみたいに、若くなくても、もっと出てゆけばいいんです。日本一を目指すなら、何か月行ったっていいだろうし。
秋山:(小声で)ダイサクは、俺と競馬学校同期だ(笑)。
-:浜中さんが行くとしたら、どこの国がいいですか?
浜中:イギリスや、フランスですかね。リスポリがいるから、イタリアでもいいですね。一人じゃ寂しいので(笑)。
リスポリ:来たら助けるし、女の子も紹介しますよ(笑)。だけれど、長い期間いた方がいいよ。
-:秋山さんならどこに行かれますか?
秋山:どこやろうね。ヨーロッパかなぁ。(海外に)行きたい気持ちはずっとあるんですが・・・。
-:海外競馬通でもある秋山さんが、過去・現在含めて、海外で記憶に残るジョッキーを挙げるとしたら、どなたでしょうか?
秋山:よく覚えているのは、中学校の時に、同級生が持ってきた競馬の雑誌に、凱旋門賞のゴール前の写真が載っていたんです。ティエリー・ジャルネ(フランスの騎手。Thierry Jarnet)って、騎手だったんですが、「カッコいいなぁ」って、思ったことがずっと印象に残っていますね。
-:昨年、ジャパンカップの表彰式にも来られたキャッシュ・アスムッセン(※)さんの騎乗も、印象があったと仰っていたと聞きました。
秋山:最近、何気なくDVDを観ていたら、第一回のジャパンカップの映像があって、キャッシュ・アスムッセンが勝ったレースだったんですけれど、カッコいいなぁと思いましたね。当時、彼はまだ10代だったと思うんですが、あんな乗り方が出来るとは思いませんでしたよ。
-:ご自身の当時と比べても。
秋山:今32歳の僕でも負けていますよ(笑)。あんな、カッコよく乗れないから、凄いなぁって。でも、カッコよく乗るとかというのは、個人的に心掛けているだけで、競馬・騎手って結果が第一ですからね…。
ただ、僕は「カッコよく乗りたい」から、そういうモノを求めていきますけれど、そこをファンに評価してほしいとは思っていないし、わからない人はわからないでいいし…。こういうことって、人にわかってもらうのは、難しい話だと思いますけれどね。
-:それを聞いて、浜中さんは自身のスタイルについて、どう思いますか?
浜中:そうですねぇ。騎手は結果を出さないと評価してもらえないですから。僕は(今は勝つ事を第一に)プラスアルファで、自分の騎乗がカッコよくなれば、とは思っています。
-:先ほど、日本の競馬のシステムがいいという話がありましたが、今年、初めて日本の競馬に来られたリスポリ騎手は、競馬の開催日程や、設備の面で、日本の競馬について、どう感じましたか?
リスポリ:初めて日本で勝った時に、もう答えてしまいましたが、日本の競馬のシステムが世界で一番素晴らしいですね。週末だけの開催で、ファンも朝早くから来てくれるし、施設も凄く整っていますからね。アメリカは行った事がないけれど、ヨーロッパよりは、断然、日本の方がいいですね。
-:逆に悪い部分はありましたか?
リスポリ:過去に来たことがないから、昔と比較はできないですけれど、全くないですね。今で十分過ぎます。レースやコース、トレーニングセンターも全ていい環境だと思います。
-:日本でしか騎乗はされていないと思いますが、お二人からみて、日本競馬のシステムの足りない部分はありますか?
秋山:他(外国)がわからないですからねぇ。僕らはもう、これが当たり前になっていますから。
浜中:僕も思わないですね。ただ、外国では、大きいレースのために、仕事や国全体が休日になったりするでしょう?競馬に対する文化のあり方が違いますからね。
日本は日本でいいと思いますけれど、どうしても所詮ギャンブルだと思われるというか・・・。向こう(海外)は、競馬が文化として、社会的に認められていますからね。
家族みんなでレースを観に行く習慣が根付いているところはいいなと思います。日本もそうなってくれたらいいですよね。
-:日本でも、これからそうなるといいですね
浜中:そう思います。僕らがこれからそうしていきたいです。
リスポリ:もし、向こうで見せられるならば、日本の競馬のシステムや、調教師・厩務員・オーナー・マスコミ、みんなが競馬に対する尊敬を払ってやっているところを海外のホースマンにもみせたいくらいですね。日本の競馬は凄いと思いますよ。
プロフィール
ウンベルト・リスポリ
(Umberto Rispoli)
1988年8月31日生まれ、イタリア国籍。
04年(16歳)に騎手免許を取得すると、09年に若干21歳ながら年間245勝を挙げて、イタリア年間最多勝記録を27年振りに更新する記録を打ち立てた(この記録は、あのランフランコ・デットーリ騎手の父であるジャンフランコ・デットーリ騎手が記録した229勝を上回るものだった)。
2011年にJRAの短期騎手免許を初めて取得。日本での初レースとなった1月8日の京都競馬第1Rでは、イイデステップに騎乗して、初騎乗・初勝利をマーク。
3月27日までの短期免許期間で28勝。G1レース・高松宮記念など重賞3勝を収めるなど、目覚ましい活躍をみせた。
過去のインタビューは↓
http://column.keibalab.jp/interview/jockey/289/
秋山 真一郎
(あきやま しんいちろう)
1979年2月9日生まれ、滋賀県出身。
父の秋山忠一元騎手は現在、佐藤正雄厩舎で調教助手。
現在はフリーだが、1997年に栗東の野村彰彦厩舎所属からデビュー。同期には武幸四郎、松田大作、勝浦正樹騎手ら。
デビュー2年目、1998年の神戸新聞杯(カネトシガバナー)でJRA重賞初勝利を挙げると、今年もサンライズベガで小倉大賞典を制し、13年連続重賞勝利を達成中。
09年にはサマージョッキーズシリーズで優勝。同年のワールドスーパージョッキーズシリーズにも出場した。レースリプレイやパトロールビデオの確認を人一倍欠かさないなど、競馬に対する研究心は、トップジョッキーの今も随一。
プライベートではガンダム好きとしても知られる。
過去のインタビューは↓
http://column.keibalab.jp/interview/jockey/76/
浜中 俊
(はまなか すぐる)
1988年12月25日生まれ、福岡県出身。
2007年に栗東の坂口正大厩舎所属からデビュー。同期には藤岡康太、宮崎北斗騎手ら。
デビュー2年目に73勝を挙げて飛躍。同年に地元の小倉競馬場で小倉2歳S(デグラーティア)を制覇。JRA重賞初勝利を挙げた。その翌年にはスリーロールスで菊花賞を制覇。3年目にして、早くもG1ジョッキーの仲間入りを果たした。
今年3月、坂口正大調教師の引退に伴いフリーとなったが、既に重賞3勝をマークするなど、年々騎手としての実績は右肩上がり。次代のリーディングジョッキー争いの筆頭候補として、年々注目度を高めている。
過去のインタビューは↓
http://column.keibalab.jp/interview/jockey/87/