-:逆にお二人からみて、外国人騎手のいいところはどう思いますか?

秋山:いま、外国人ジョッキーだといっても、誰でも来れるわけではなく、制限がありますよね。自分の国でリーディング何位以内で、一時期に5人までとか。例えば、ウンベルトはイタリアのリーディングというように、本当の実力者じゃないと日本に来られない。?僕らは競馬学校に入って、3年間やって、試験に合格すれば騎手になれるけれど、それまで馬に乗った事がない人もいます。

でも、ウンベルトたちは子供の頃から馬に乗っていて、見習いレースもあって、そんな人達が沢山いるわけでしょ?そうしてやってきた人がプロの騎手になって、その中で更にリーディングになったような人が、日本に来るわけだから、言ってしまえば、負けて当たり前なんですよね。僕の個人的な意見ですけれども、負けていて当たり前なんです。やってきた過程が違うわけだから。

僕らがどうしようが、今すぐにはどうにもできない事じゃないですか?もう一度、小学生に戻れるなら、一からやれるけれど…。でも、そういう人達と一緒にレース乗るわけだから、いま、負けていてもちょっとでも近づけるように、なんとかね…。技術を盗むなりなんなりするしか、ないと思いますよ。

-:確かにそうですね。追いつくために何か具体的にされていることは。

秋山:(レースの)ガン見です(笑)。

-:浜中さんが感じられるところはありますか?

浜中:まだまだ、僕自身の技術が低いので、ハッキリとは言えませんが…。でも、外国人ジョッキーが日本に来たら、「日本はレベルが高いよ」って言いますし、逆に僕らが外国人ジョッキーを見ると、巧いなと思う。その差がどこかというと、具体的には言い表し辛いですね。
ただ、外国の方が免許も早くとりますし、スタートの時点から日本は遅れているけれど、だからといって、負けているとは認めたくはない。認めないように、自分の技術を磨くだけなんですけれどもね。

-:浜中さんからみて、リスポリ騎手の印象に残ったレースはありますか?

浜中:色々ありますけれど、日本初騎乗で勝った時は、ダートも初めてだったんじゃないかと思いますけれど?

リスポリ:ダートはイタリアにはありますね(笑)。(1つがオールウェザーで)3つの競馬場でありますね。ローマは5年前まではダートと芝だったのが、オールウェザーと芝になりましたが、残り2つはダートと芝ですね。

浜中:どちらにせよ、日本に初めて来て勝つっていうのがね。

リスポリ:ダートは嫌いだなぁ。蹴り上げた砂がね。

浜中:確かに!顔が痛いですね。砂を投げつけられたような痛さですよ。

-:浜中さんが、秋山さんのレースで印象に残ったレースはありますか?

浜中:いつも印象的です(笑)。最近だとやはり、小倉大賞典でのサンライズベガには痺れましたね。僕も近くで乗っていたんですが、僕の馬は3コーナー過ぎで手応えがなくなってしまって、後ろから「秋山さん、どう乗るのかな?」と、思いながら観ていたんです。レース終わってから、すぐに言いましたよ。「痺れました!完璧でしたね!」って。

秋山:そう、言われたんですけれどねぇ、自分は「(ゴールした直後は)勝ったかなぁ?」って思っていて。

浜中:「えっ?僕も言ったものの負けてたら、どうしよう」って、感じでした(笑)。

リスポリ:僕はそのレースで、リルダヴァルに乗っていて、秋山さんと康太(バトルバニヤン)の間を突いたんだけれども、自分が3着だったのはすぐにわかりました(笑)。

-:リスポリさんから、お二人の印象に残ったレースはありますか?

リスポリ:スグルは京都牝馬Sかな?上手に乗っていましたね。秋山さんは、その小倉ですね。共に人気じゃなかったのに勝たせていましたし。

-:秋山さんはどうでしょうか。

秋山:浜中君は菊花賞ですかね。あの時、たまたま週中に一緒にご飯を食べていて、えらい、自信ありげやったから。

リスポリ:そのレースはみたことないな。

浜中:観ない方がいいよ。恥ずかしいから。

リスポリ:なんで?

浜中:最後の直線で大きくよれましたからね。

秋山:そこを観ないと!あとは早送りでしょ(笑)。

リスポリ:でも、勝ったからいいね。僕は昔、イタリアのダービーで、レース前に調教師が2400m持つかわからないから、馬の後ろで我慢してくれってって。でも、一番外枠で、ポジション獲りに行ったけれど獲れなくて、ちょっと下げて、内にいくところを探したけれど、結局、内に詰まって出られずに、最後13?14番手から、大外を通って2着までに来たんです。オーナーと調教師は満足していたけれど、僕は全然。そんな、もう見たくないレースはありますね。

浜中:あるある(笑)。

秋山:ありますね(笑)。

リスポリ:次の年もダービーで2着でした。その次の年は、直線はミルコと競っていて、自分の馬は手応えで劣って、垂れてしまって、「もう、2着はいやだな」と思っていたら、4着にまで落ちてしまいました (笑)。

-:わかりました。まだまだ色々なお話しを伺いたいところですが、本日は長い間、お答え頂き、ありがとうございました。最後に抱負というか、目標を教えて頂けますか?

秋山:なんか、あるんかなぁ…。特にないですね。怪我せず、カッコよく乗れるようにですね。

リスポリ:日本に来る前は、こんなに乗せてもらえるとも、勝てるとも思っていなかったし、重賞も勝たせてもらって、今年は本当にいいスタートが切れたと思います。残りの2週間、高松宮記念のキンシャサノキセキもあるので、頑張りたいと思います。
イタリアに帰ってからは、どうするかはわからないですね。開催が再開されていないようだったら、フランスに行きたいと思います。でも、イギリスの競馬はタフすぎるから行きたくないな(笑)。

浜中:僕はG1を勝ちたいですね。今年は重賞も2つ勝てて、いいスタートが切れていますし。G1でも勝負になるような馬に乗せていただいていますからね。

リスポリ:できれば、スグルが勝っているところをテレビでみたいな。コントロールするのが簡単な馬じゃないと思うけれど、ショウナンマイティは勝つチャンスがあるよね。

浜中:ありがとうございます(笑)。

リスポリ:京都や阪神、東京みたいな、ロングストレッチなコースだったら、勝つでしょう?

浜中:俺もそう思う(笑)。



被災地へのメッセージ

リスポリ:イタリアでは、あまり地震が起きないので、こうゆう事態には驚きました。テレビを観て、日本で過去最大の地震だと知り、家族を失われた人達には言葉もありません。イタリアの友達からも「イタリアに帰ってこい、帰ってこい」と、沢山、メールも来ました。
しかし、「僕は関西に住んでいるので、それほど影響もなかったし、日本の人達は地震に対する備えをしているので、大丈夫だ」と、答えました。僕の母も、13年前にイタリアで大地震があった時に、ちょうど中心地にいて、大変な経験だったと言っていました。でも、これがイタリアだったら、もっと大パニックになるのに、日本の人達はこれだけ大きい事件があっでも、冷静で、強い心を持っているなと本当に思いました。

-:2年前にもイタリアで大地震があったと聞きました。

リスポリ:イエス。学校が潰れて、沢山の子供たちが亡くなったけれども、今回の日本に比べたら…。本当にツナミが凄かったですね。

-:秋山さんは、関西出身だと思われますが、昔、阪神淡路で震災があった際はどうでしたか。

秋山:僕はあの時、関東にある競馬学校にいましたから、あまり実感はないんです。僕らは騎手ですから、いいレースをして、被災地の方に観て貰えれば…。元気になって貰えたらいいですけれどもね。

浜中:僕も九州出身だったから、今まで地震をほとんど経験していなくて。今回も東日本だったので、僕らに被害はなかったけれども、新潟にも、阪神淡路にも地震があって。今まで、過去最高の方々が行方不明だったり。
僕たち騎手でやれる事には限りがあるけれども、そういう中で、いいレースをして、観て貰ったことで元気になって貰えるかわからないけれど、自分達にやれる事を今、やるしかないので。被災者の方に対してできる事があるなら、率先してやっていきたいと思います。



(取材日3月中旬)