サトノグロワール

▲セレクトセールで落札されたサトノグロワール

今年の開催最後になる28日の新馬戦は、芝がマイル以下で、あとはダート戦。そのため中距離の新馬戦は今週が年内最後となる。クラシックを狙うにはギリギリの時期であり、社台系の良血期待馬が大挙出走。POGファンの中には、有馬記念以上に楽しみにしている人もいるのでは。

まずは土曜日の阪神芝2000m。POGでも大人気になったグレートウォリアー(牡2、栗東・藤原英厩舎)が待望のデビューを迎える。母のプラウドスペルは、ケンタッキーオークスなど北米のGⅠを2勝し、アメリカの3歳牝馬チャンピオンにも輝いた馬である。夏に入厩し、新潟デビューの話もあったのだが、軽い不安が出て放牧。その後は年末阪神開催に向けて調整されてきた。

2週前までは調整のペースも緩かったが、1週前調教(以降、調教タイムは主に1週前のもの)は坂路52秒5-12秒2(一杯)と好時計を出し、新馬戦へ向けて急ピッチに仕上げは進んでいる。夏時期の調教メニューを考えると、本来はCWコースがメインとも考えられるので、直前がCWで速めの時計を出して来たら、準備は整ったと判断して良かろう。鞍上は福永騎手。

こちらもPOGで話題になったサトノグロワール(牡2、栗東・池江寿厩舎)。ちょうどドラフト時期は骨片摘出手術の後で人気は落ちていたが、無事だったら1位で競合になったはずの馬だ。母のシャムロッカーは、AJCダービーを勝ち、豪州の3歳牝馬チャンピオンに輝いた馬。セレクトセールでは1億8360万円(税込)の高額で、里見氏が落札した。「スパッと切れるよりも、追ってから長く脚を使えるタイプ。心肺機能が優れていて、長い条件向きだろう」と川合助手。鞍上は川田騎手。

2週前調教では併せたキタノコマンドール(後出)に遅れたが、大型馬らしく変わり身も目立ち、1週前はCWで6F82秒台、5F66秒台、1F11秒半の好時計をマークし、古馬1600万のカフェブリッツには煽られたものの、1週前に先着されたキタノコマンドールを逆転している。「仕掛けてエンジンがかかるまで時間がかかるタイプだが、加速してからはいい脚を使える」(関係者)というので、内回りコースが不安になるが、そこは川田騎手のレース運びに賭けたい。

上記2頭はディープインパクト産駒だが、このレースには他にもディープ産駒の良血馬が出走を予定している。エールグリーツ(牝2、栗東・角居厩舎)は、母のアーヴェイが北米GⅠ勝ち馬。全兄アンバーグリスキーがセレクトセールで1億円を超えていることから、この馬もかなりの良血であることが窺える。1週前はCWで5F70秒台も、上がりは12秒。2週前には同じCWで5F68秒、上がり12秒を出しており、トレセンの評判も上々だ。鞍上はCデムーロ騎手を予定。

イペルラーニオ(牡2、栗東・矢作厩舎)は、半兄がウインマーレライ(ラジオNIKKEI賞)。岡田繁幸氏関連のコスモヴューFで生産された馬を、吉田勝己氏のノーザンFがセレクトセールで購入し注目を集めた馬だ。調教は坂路54秒0-13秒9(一杯)と、まだまだといった状況。体もしっかりしておらず、トモも甘いという話で、使いつつ成長を待ちたい。

ディープ産駒が続いたが、他の産駒にも魅力のある馬が並ぶ。ジャックローズ(牡2、栗東・斉藤崇厩舎)は、母の姉にローズバド(GⅠ2着3回)、ローゼンクロイツ(重賞3勝)がいるバラ一族の一頭。鞍上は岩田騎手。CW5F70秒台も、上がり1F11秒半ばの時計を出して終いの脚をアピールしている。バレーノロッソ(牡2、栗東・石坂厩舎)は、母が重賞3連勝したイタリアンレッド。CW70秒台、上がり1F12秒半ばの時計を余裕をもってマークし、併せた馬に先着。まだまだ時計は詰められる。クルスブランカ(牝2、栗東・高橋康厩舎)は、母の兄にフサイチホウオー(重賞3勝)、母の姉にトールポピー(GⅠ2勝)、アヴェンチュラ(秋華賞)がいる。坂路55秒5-14秒1は平凡だが、「トビが大きく長距離向き」という話から、坂路では時計が出ないタイプかもしれない。鞍上は幸騎手。

中山ではダート戦が2つ。ダート1800m戦はギャラルホルン(牡2、美浦・高橋文厩舎)がシュミノー騎手で予定。近親にはユートピア(ゴドルフィンマイル)がいる。ダート1200m戦は、ケイアイテディ(牡2、美浦・池上和厩舎)。半兄にクインズウィンダム(現1000万)がいる。ダートのDコースで入念に時計が出されており、準備は万端だ。

日曜日は、阪神、中山ともに豪華な顔ぶれ。まずは阪神芝1800m戦。目玉はダノンマジェスティ(牡2、栗東・音無厩舎)だ。セレクトセール2億3760万円(税込)の高額馬で、全兄は今年の皐月賞馬アルアインである。2週前の坂路ではモタモタしていたが、CWで一変。6F81秒台、5F65秒半ば、3F37秒、1F11秒後半の好時計をマーク。特に3F37秒は、新馬ではなかなか見られない時計だ。兄に続く活躍も見込める。鞍上は和田騎手を予定。

シンハラージャ(牡2、栗東・石坂厩舎)は、半姉がシンハライト(オークス)、リラヴァティ(マーメイドS)、半兄がアダムスブリッジ(ラジオNIKKEI賞)と活躍馬が並び、POGではお馴染みの血統である。CW5F70秒も、終いは12秒と終い重点でいい動きを見せた。鞍上はシュミノー騎手。サンティーニ(牡2、栗東・羽月厩舎)は、半兄がインカンテーション(交流含む重賞5勝)。そのインカンテーションとCWで併せ馬をし、6F70秒を切り、5Fも64秒台、終いも12秒前半でまとめ、重賞ウイナーの兄に先着して見せた。父(ダイワメジャー)から、まずは芝デビューとなったが、しっかりこなすことができれば、かなり有力な存在だ。

ボルティモア(牝2、栗東・宮厩舎)は、半兄がアイアムルビー、トーセンマイティと準オープンまで行った馬が2頭いる。CW6F82秒台、5F66秒前半と水準レベルはクリアし、初戦勝ちを狙う。鞍上は藤岡康騎手。サトノシリウス(牡2、栗東・藤原英厩舎)は、母がオープン馬のパールシャドウ。調教は地味な内容で、もっと詰めていきたい。

中山では芝2000m。堀厩舎期待のウムラオフ(牡2、美浦・堀厩舎)が初陣を迎える。半兄にはウムブルフ(現1600万)がいる。「父がステイゴールドに変わって兄とはタイプが違うが、いい瞬発力がある。スタミナもありそうで距離もあっていい」と森助手。鞍上はムーア騎手。1週前のウッドは5F70秒台、上がりも13秒後半と遅かったが、この日の堀厩舎の馬は古馬も含めて全体的に遅かったので心配なし。2週前はウッド68秒台を楽にマークしており、この厩舎の水準レベルはクリアしている。

池江厩舎からは、キタノコマンドール(牡2、栗東・池江寿厩舎)が遠征。半姉にはデニムアンドルビー(GⅠ2着2回)がおり、セレクトセールで2億520万円(税込)ついた馬。新規一口クラブのDMMドリームクラブの馬ということで話題になっている。「ゲート試験に合格後も順調に調整を消化できた。やはり血統馬でいい走りをするし、芝の中距離以上で良さそう」と池江師。鞍上はルメール騎手。2週前にはサトノグロワールに先着したが、1週前は遅れ。ただしCWで6F82秒台、5F66秒台、1F11秒半ばと、時計は速いものが出ている。サトノグロワールと比べて、「こっちのほうがスパッと行く雰囲気」というから、中山の短い直線にも対応できそうである。

グレンフィナン(牡2、美浦・鹿戸雄厩舎)は、母がベストロケーション(京都牝馬S2着)、母の兄にステージチャンプ(重賞3勝)、母の姉にプライムステージ(フェアリーS)、祖母は名牝ダイナアクトレスと、社台きっての良血一族だ。坂路54秒3-13秒3と普通レベルだが、まだ太目で変わり身の余地は大きい。バスクインザサン(牝2、美浦・大竹厩舎)は、母の兄に4戦無敗のフジキセキ(朝日杯FS)。ウッド6F83秒台は、時計の出にくい美浦ウッドでは速い。さすがに終いは13秒後半とかかったが、まだ余力があり、十分詰められる。アルスラーン(牡2、美浦・小西厩舎)は、近親にダイワキャグニー(オープン特別2勝)。1週前は坂路53秒5も、2週前には52秒台。美浦坂路で、これだけ時計を出せれば大丈夫だ。

さすがに、この時期になると新規入厩で目立った馬は少なくなってくる。再入厩組では、サトノディード(牡2、美浦・国枝厩舎)に期待。秋にゲート試験を合格し放牧。まだ体質が強くないので放牧先で時間をかけて調整されてきた。吉田照哉氏が里見氏に奨めたとも言われる馬。デビューが楽しみである。ダノンアモーレ(牝2、栗東・高野厩舎)は、5月に坂路で56秒台の時計を出し、早期デビューを見込みPOGで指名した人もいるだろう。その後放牧に出され、ここまで遅れてしまった。この先は順調に行ってほしいものだ。

ダノンマジェスティ

▲セレクトセールで落札されたダノンマジェスティ