初めての個人所有馬ジャスタウェイがレーティング世界No.1の評価を獲得し、種牡馬に。
人並み外れた馬運の持ち主が脚本家という本業のキャリアを活かし、馬主ライフを書き下ろします。
『デジモンアドベンチャーについて その3』
2020/2/14(金)
皆さん、こんにちは。ライター大和屋です。今回も『デジモンアドベンチャー ラストエボリューション絆』について書かせていただきます。
先日、試写を見てきましたが僕の想像をはるかに超えるクオリティだったと言っておきます。戦闘シーンはぐりぐり動きまくりますし、作画はどこを見渡しても超美麗。内容については僕が脚本を担当してはおりますが真面目に書きましたので、いつもの僕のテイストではありませんのでご安心を。とにかくすごい映像です。
監督はじめスタッフの皆さんがぎりぎりまで頑張り続けた成果です。こんなに良い作品が出来上がったことを感謝します。僕的には作品に参加できたことで大満足なのですが、できることなら大ヒットとなってほしいと思っています。興味のある皆さま、是非劇場に足を運んでみてくださいませ。皆さまの口コミがたよりでございます。
さて、劇場公開を前に何か宣伝を兼ねて面白いことをしなければと考え、何が良いかといろいろ考えた結果、今までの脚本家の誰もがしたことのなかったこと、動画マンデビューを果たそうという野望を思いつきました。
世の中には企画、原案、監督、脚本など、いろいろな所で名前を兼ねている人間は多々います。しかし脚本と動画を同時にこなしている脚本家はいまだ一人としていないはずだということに思い至ったのでございます。まともにお願いすれば断られるのはわかっています。こういうお願いは主要メンバーがいる時の飲みの席に限ります。というわけで打ち合わせ終わりの飲み会の席にて、宴もたけなわなその時にさりげなく話を持ち掛けます。
監督もプロデューサーもスーパーバイザーもゆめ太カンパニーの山口さんもいるその時に、動画を描かせてほしいという旨のことを言ってみる。酒の勢いも借りてか皆笑いながら即オッケーしてくれました。どうせ酒の席の冗談だろうと思っていたのがほとんどと、言ったことすら覚えてなかった人なんかもいましたが、しっかりと言質はとりましたので実行に移すことにしました。
実際に動画を描きにいったのは去年の暮れのことです。皆さんは本気にしていなかったようですが、しっかりとゆめ太カンパニーの社長であり、僕の競馬友達でもある山口さんにアポをとり、会社へと突撃します。ゆめ太カンパニーのある町の名は清瀬。渋谷からだとFライナーという電車に乗るとなんと一本で行けるのです。
しかも一時間もかかりません。なんという利便性、電車に揺られて駅に降り立つとなかなかに住みやすそうな街でした。会社への道のりでテイクアウトの焼鳥屋さんが三軒もあるというのがその一端を示してくれているといってよいでしょう。他にも美味しそうなお店がいろいろと連なっておりました。
さて、駅から10分ほどでしょうか、てくてくと歩いていくと見えてきましたゆめ太カンパニー、約一年ぶりの再訪です。インターホンを押し中へと入れてもらうとさっそく山口さんが出迎えてくれました(忙しい中すみません)。その山口さん、僕が本気で動画を描くとは思っていなかったようで、見本となる動画なんかを用意し、動画の書き方をレクチャーして終了というつもりだったようです。
まあこちとら生まれてこのかた一度として動画を描いたことがないので教えていただかなければできません。鉛筆の削り方から、そして線の引き方から教えていただくことになりました。
まず、最初に鉛筆削り器で鉛筆を削り、さらにシャープにするために紙で鉛筆をしゅりしゅりして鉛筆の芯の一辺を平らに削って芯を細くキープする必要があるそうです。それができたら次は原画に紙を重ねてトレース台の上に乗せます。
トレース台は下から電気が点灯するようになっていて、下から光をあてることによって原画が透けてみえるようになるのです。それを写していくことによって動画となるのです。本当の動画は、二つの原画の中間の絵を描いていき(中割というそうです)、それをどんどんと繰り返していってアニメーションにするのですが、まずはズブの素人ということで、これを書いてみろと出されたお題がこちらです。
はい、主人公の太一君の横顔です。中割とかではなく、まずは上手に線を引けるか、みたいので写してくださいとのことです。さらには、影の部分は別の色で描いてくれとの指示を受けると、一人の時間の始まりです。線を引き、はみ出したら消しゴムで消す。曲線で線がぶるぶるしないように注意です。力を均一にして線を一定に保たなければなりません。
線と線は彩色の都合上できるだけきっちりと繋がるようにするのがお約束。影の部分は色を変えて線を引き、原画と同じように線を引きつづけた結果がこちらです。
最悪山口さんが直せばいいやと思ってくれたのか、では大和屋さんにもかけそうな動画があったらキープしておきますので、また日を改めてきてくださいとの言葉をいただきました。この日は山口さんと会社の近くのイタ飯屋さんでワインをたらふく飲みました。
さて、数日後に山口さんから連絡がありました。動画を用意したので都合の良い日に来て欲しいとのこと。ですからすぐに駆けつけました。僕に用意されたのはこの原画です。
今回のゲストキャラの井村京太郎です。止め絵ですので中割の必要はありません。ですので、引かれている線の通りにきっちり写していけば問題なしです。前回でとりあえずやり方は覚えておりますので、またしても一人の時間を開始します。黙々と作業をすすめて完成です。しかし動画チェックの小澤さんに見せたその時、事件は起こります。
「あ、これレイアウトですね」
「え?」
レイアウトです。原画はこっちです。
なんと!今まで必死に写していた絵は原画ではなくレイアウトだったのです。レイアウトというのは原画の前段階、コンテを参考にし、その場面がどんな絵になるかの設計図のようなもので、それを参考に原画が描かれるのです。とまあそういうことで僕がやっていたことは無駄だったということです。このままではまたしても時間切れとなってしまいます。
急いで作業に取り掛かります。レイアウトで練習した甲斐があって、結構さくさく完成です。またしても小澤さんにチェックしてもらい、足りない線などを足してゆき、ようやくオッケーいただきました。完成したのがこの動画です。こうして動画マンとしてのデビューを果たした大和屋なのでした。しかし、それだけでは終わりません。
なんとなんとこの動画、最新版の予告編に使われているではありませんか!実際に自分でそれを見て驚愕したのと同時に、何か忖度があったのではないかと思い確認を取りましたが、そういうわけではなかったようです。
普通に予告編にそのカットが入っていたのだそうで、僕が描いたからとかそういうことではありません、とプロデューサーじきじきに言われたのでそういうことなのでしょう。では、皆さん、その映像を確認してください。
《外部リンク》大和屋さんが脚本を担当!映画『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』公式サイトはコチラ
http://digimon-adventure.net/
わかりましたでしょうか?色がつくとなんだかそれっぽく見えますね。まあ、原画さんの絵を写しただけという話もあるかもしれませんが、それでも動画デビューには違いありません。というわけで皆さん、エンディングにも注目してください。スタッフロールの動画でも大和屋暁の名前が出ておりますので映画館で要チェックです!
なんというか良い経験をさせていただきました。動画マンとして次回があるならば中割りを経験したいと思っているのは秘密です。というわけで「デジモンアドベンチャー、ラストエボリューション絆」2月21日上映です。
さて、そんなラスエボのことを知ってか知らずかエオスモンが今週の小倉に出走します。土曜の1Rの牝馬限定の未勝利戦となるようです。放牧し成長し力強さが増したとの報告もありますので期待しています。劇場公開のタイミングですので是非、恰好をつけてほしい。頑張れ!エオスモン!メノアも応援しているはずだ!
そして競馬情報をもう一つ。カリボールは続戦の予定でしたが、一転放牧となりました。もう少し暖かくなるまで休養とのことです。残念ではありますが、休養してしっかりリフレッシュして戻ってきてほしいです。
そしてオツウの初仔についてですが、早い段階で移動できるとの報告がノーザンファームよりあがってきております。動いているそうなので期待が膨らんでおります。名前をはやくつけなければと思っている今日このごろなのでした。
了
プロフィール
大和屋 暁 - Akatsuki Yamatoya
脚本家・作詞家・ライター。若くして一口馬主に出資を始め、クラブ馬主歴2年目にハーツクライと運命的な出会いを果たすと、有馬記念、ドバイシーマクラシックを制す大活躍。しかし、ノド鳴りによるアクシデントに見まわれ、突如として引退したことに一念発起、馬主になる決心を固めた。個人馬主としては、初めてデビューを果たした所有馬ジャスタウェイが大活躍の強運ぶりを発揮。遂には、目標であったドバイ遠征を実現させ、ドバイデューティーフリー(現在のドバイターフ)を圧勝。「自らの馬でドバイを勝つという」夢を実現させたばかりでなく、そのパフォーマンスが評価され、2014年度のワールドベストレースホースランキングでは、日本馬史上初の1位を獲得している。
現在の現役所有馬はカリボール、マジカルステージ、ジャスコ、キングロコマイカイ。一口馬主や共有馬ではアウィルアウェイ、ルーツドール、イストワールファムなどに出資している。
本業ではアニメ版「銀魂」、「スーパー戦隊シリーズ」などの脚本を手がけ、2020年公開の映画「デジモンアドベンチャー」も担当。愛馬との数年間に及ぶ足跡を綿密に綴った『ジャスタウェイな本』などの執筆も手がけた。