
初めての個人所有馬ジャスタウェイがレーティング世界No.1の評価を獲得し、種牡馬に。
人並み外れた馬運の持ち主が脚本家という本業のキャリアを活かし、馬主ライフを書き下ろします。
『ジャスタウェイ』
2014/12/24(水)
ジャスタウェイ
あっというまに今週は有馬記念です。取材やなんかもほぼほぼ終わり、出走前に何か更新をしなければと思いつつ、競馬ラボさんでもインタビューやっていたんで、内容が被ってもあれだなあ、どうしようかなあ、という感じでネタがない。なんだかバタバタしています。年賀状も書かなければ……。
とまあそういう訳ですので、切り口をかえて少し専門的な話をしつつジャスタウェイのラストランについてを語ろうかと思います。
シナリオライターという仕事、特にシリーズ構成をする人間は話数ごとのシナリオを書くだけではなくシリーズ全体を見渡して、全体の設計図を作ります。例えば最初の一話、どんな番組で主役は誰で、その周囲にはどんなキャラクターがいて、敵対する勢力はなんなのか?更には主人公達の目的、シリーズ通しての縦線をはっきりと明示しつつ売りはなんなのかを示し、かつ来週もまた見ようと思わせなければなりません。つまり設定もろもろをはっきりわからせた上に、面白いと思わせないといけないので結構大変です。
オリジナルの場合は大抵、どんなところに着地するのはなんとなく想定しているのですが、そうでない場合もあったりなかったり。それは番組ごとに異なります。第一話が終わると、主人公の周囲のキャラクターなんかにスポットを当てたりしつつ、世界観の定着と必要な設定やキャラクターの掘り下げを行いつつ、ワンクールめが終了するあたりで大きな盛り上がりを持ってくる。
更には2クールめ突入したあたりでマンネリを打破するために新キャラなんぞを投入。風呂敷を広げつつ、主人公らに変化を与えながら、大目標へ適度に近づけつつ……。まあシリーズ構成というのはこれだけではないのですが、そんな感じでシリーズを積み重ねつつ大抵の番組は最終回を迎えます。前フリが長くてすみません、つまりは最終回についてです。

皆さんはドラマやなんかの最終回にはどんなものを求めるでしょうか?すっきりとした答えと爽快感、謎の解明と、大目標の達成。色々あるとは思いますが、どうせ終わるならスッキリ終わって欲しいと思うのが常でしょう。たまにそうでない番組もあったり、原作が終わってないので終わらせられなかったり、半年後に再開なんて番組もありますが、基本的には最終回というものはシリーズの落とし前をつけるのが最終回の役目だと僕は思います。
アニメの場合、口数の少ない監督が暴走しこちらのシナリオを台無しにしてしまう、なんてことが多々ありますが、結果はどうあれシリーズ構成としては今までの積み重ねの集大成、自分の分身であるキャラクター達の結論や未来の指針をすべて出し切り、すっきり表現して終わりたいと思います。それがシリーズ構成の醍醐味であり役得のはずなんですけどね。
ではジャスタウェイにとって、どんな最終回が理想的なものなのでしょうか?そりゃあ勝ってくれればそれが一番、勝ってくれたとしたらその勝ちっぷりも問題になってきます。壮絶なたたき合いでの勝利か?他馬を突き放した圧勝か?これが自分の番組の最終回だったら色んなことを想定し考え、自分がしたいようにシナリオを書きます(決して自分だけで決めてるわけではありませんけどね)。
僕の場合、大抵は主人公が勝利して、いい感じで終わるようにはしています。ですが今回は作り物ではない真剣勝負、どの陣営も勝つためにここに出走してくることは言うまでもありません。馬の実力は勿論ですが、それぞれの陣営にはドラマがあります。有馬記念はそういう想いをのせやすい大きなレースだと思います。
例えば僕ら、ジャスタウェイ陣営にしても様々な想いやドラマが詰まっています。僕の想い、須貝先生の想い、榎本君の想い、そして福永さんの想い。他陣営に負けないぐらいの強い想いを持って、有馬記念には挑みたい。今はそう思っています。
というわけでジャスタウェイにとっての最後のレース。悔いの残らない良いレースを期待しています。皆さん応援よろしくお願いします!
元町ステークス
前走、前々走で逃げて大敗していたオツウ、リフレッシュし調整をして今度は格上条件ではなく準オープン、距離を少し短くして1600mの元町ステークスに照準を定めました(須貝先生が)。
レースは良いスタートを決め先行、離れた5番手くらいでレースを進め、勝負どころの3コーナーでは次々と他馬が仕掛けていく中、内目で我慢、直線に向いたころには後方、外に出しました。良いとこなしかと思われたその時、外にいたオツウはいつのまにか内目に進路を取り猛然と伸びて来ました。が、僅差の4着。スムースな競馬をしていた上位馬には少し届きませんでした。
今回は負けてしまいましたが、収穫のあるレースだったと須貝先生も僕も認識しています。精神的な部分のダメージも回復したようで真面目に競馬に取り組んでくれたことがまず第一に嬉しい。そして第二に差す競馬ができたこと。そして第三に距離短縮に対応できたこと。あとブリンカーが少し浅くなってましたね。なくても大丈夫じゃないか、という意見も出ていたのでそこも良かったのかもしれません。ちょっとちぐはぐな競馬でしたが、男馬相手の準オープンでこれだけやれればこのクラスでのめどは立ったと言ってもいいのではないでしょうか?

久しぶりの大阪でしたので大阪名物を堪能してきました。なかでも特筆したいのは、生まれて初めてたこ焼きを自ら焼きました。結果はなかなか残念な感じでしたが、焼きたてアツアツでおいしかったです(言うまでもなく口の中の皮はめくれました)。お好み焼きも食べて、串揚げも食べて、久しぶりに楽しかったです。個人的にはカスうどんまでたどり着けなかった自分が心残りでしたが……。

とまあそんなこんなで次走は出られるかは不透明ですが、もう一度格上挑戦なんかを狙っていたりしています。出られると嬉しいんだけど……。そこもそうですが、オツウちゃんにはこれからも頑張ってもらって、来年の春には府中で見てみたい。頑張れオツウ!
了
プロフィール
大和屋 暁 - Akatsuki Yamatoya
脚本家・作詞家・ライター。若くして一口馬主に出資を始め、クラブ馬主歴2年目にハーツクライと運命的な出会いを果たすと、有馬記念、ドバイシーマクラシックを制す大活躍。しかし、ノド鳴りによるアクシデントに見まわれ、突如として引退したことに一念発起、馬主になる決心を固めた。個人馬主としては、初めてデビューを果たした所有馬ジャスタウェイが大活躍の強運ぶりを発揮。遂には、目標であったドバイ遠征を実現させ、ドバイデューティーフリー(現在のドバイターフ)を圧勝。「自らの馬でドバイを勝つという」夢を実現させたばかりでなく、そのパフォーマンスが評価され、2014年度のワールドベストレースホースランキングでは、日本馬史上初の1位を獲得している。
現在の現役所有馬はカリボール、マジカルステージ、ジャスコ、キングロコマイカイ。一口馬主や共有馬ではアウィルアウェイ、ルーツドール、イストワールファムなどに出資している。
本業ではアニメ版「銀魂」、「スーパー戦隊シリーズ」などの脚本を手がけ、2020年公開の映画「デジモンアドベンチャー」も担当。愛馬との数年間に及ぶ足跡を綿密に綴った『ジャスタウェイな本』などの執筆も手がけた。