初めての個人所有馬ジャスタウェイがレーティング世界No.1の評価を獲得し、種牡馬に。
人並み外れた馬運の持ち主が脚本家という本業のキャリアを活かし、馬主ライフを書き下ろします。
『いわきの温泉にいってきた』
2017/6/15(木)
皆さんこんにちはライター大和屋です。気がつけば春のG1シリーズも宝塚記念を残すのみ。プロソフトクリーマーの森川さんのダービー制覇や丸山担オーナーのG1挑戦、自分主体の話題ではないものの、今年もいろいろなことがあったような気がします。
ダービーが終わればすぐに新馬戦が始まり、今年の二歳馬の動向も気になり始めます。そして一口馬主の募集なんかも始まったり、あたふたしているとセリのシーズンになっていたりと、ほんとにもう競馬をしていると息つく暇もありません。とまあそんな風に忙しげにしている僕ではありますが、先日福島県のいわきに行く用事がありまして、さらにはJRAのリハビリ施設、馬の温泉を見にいったりなんかしましたので、そのことについて書こうかと思います。
伺ったのは今月の頭のあたり、もちろん温泉のために行ったわけではなく、行った場所の近くに馬の温泉があったのでついでに覗いてみましょうかということで行ってみました。馬の温泉といえばオグリキャップやミホノブルボンなど過去の名馬たちがリハビリや放牧をしていたイメージがありますが、最近ではあまり聞きません。地震があって閉鎖されたのは知っていましたが、その後どうなったのかは知らないでおりました。
いわき馬の温泉は徒歩でいくのは難しいと思わせるくらい山の中にありました。正式名称は恐らく競走馬リハビリテーションセンターというのだと思います。HPを確認すると観光スポットみたいな感じになっているように見受けられます。せっかくなのでいってみようと連れていってもらったそこには山一個が丸ごと施設のようなイメージで立派な門があったかと思うと、同じ敷地内かと思われるところに普通に民家やレストランがあったりしたかと思うと、その横にいきなり馬道が出てきたりなかなかカオスな雰囲気がただよっております。
どこに施設があるのだろうと進んでいくと、ありました。山の中にはあるものの、さすがはJRAの施設です。立派な門から施設に車でかなりの距離があり、その途中は桜やつつじなど様々な木や花が植えられていて、地元の皆さんの花見スポットになっているらしいです。入口にはゲートがあって、そこには守衛さんがおりました。とりあえず見学させてもらうのと、できれば軽く取材でもと思って守衛さんと話をしてみると、見るのは構いませんが土曜の午後はほぼほぼお休みなんですわ。とのこと、しかも案内できるような人も今日は帰ってしまいまして、ご要望には応えかねます的なコメント。仕方ないので見学だけでもさせてもらうことにしました。
進んでいくとなかなか牧歌的な風景が広がってきました。途中で気付いたのですが見学者用のエリアと関係者用の作業エリアが完全にわかれていて、見学者に邪魔されることなく作業ができるようになっています。そのせいかどうかは知りませんが、各所に立ち入り禁止の看板がありました。見るべき施設は馬の温泉、ウォータートレッドミル、そして調教用馬場、さらにはプールもありました。噂にはきいていたあの施設たちを目の当たりにして僕はかなり満足したうえに楽しかったのですが、一緒にいた人たちはいまいちだったようです。
何故かというと馬が一頭たりともいなかったから。土曜の午後は調教やリハビリなど馬の運動はすっかり終わってスタッフの皆さんお風呂場の掃除をしていました。遠くに見える厩舎からは馬のいななきなんかは聞こえてきますが姿は見えず。ちょっと残念ではありましたが、そんな一行をいわきの温泉マスコットのポニーのミミちゃんが出迎えてくれました。とまあそんな感じで馬がまったく見ることのできない馬専用施設の見学でしたが、僕としてはあのオグリキャップが入っていたという温泉なんかを見学できてとても満足だったと言っておきましょう。守衛のおじさんが馬をまったく見られなかった僕らを憐れんでか、資料やクリアファイルなんかをお土産で持たせてくださいました。ありがとうございました。
なんというか、僕らの世代にはかなり有名な馬の温泉、オグリキャップがここで疲れをいやしたせいで長期の不振に陥ったことはあまりにも有名ですが、足を負傷した馬たちにとって、この施設があることはとても有意義なことなのでしょう。いまだにこの施設に入厩している馬がいるということが何よりの証拠です。次にこの施設に行くことがあるとすれば、馬が温泉に入っている姿をゆっくり見てみたいなと思う大和屋なのでした。皆さんも施設案内をよく確認して行ってみてください。
というわけでいわきの温泉についてはここまでです。ここからはこれからのこととか近況についてです。まず最初に明日(16日)、現在プロソフトクリーマーの森川さん所有のイイナヅケが笠松三勝目をかけて出走します。ジョッキーがかわってしまうことになりましたが、出来は今までの中で一番とのこと。前走も余裕の勝利、この勢いで三勝目を決めてほしいと思います。三勝目をあげることができれば中央に復帰ということになるでしょう。僕も森川さんも現地に応援に行こうということになっています。勝って祝勝会ができればいいなと今から妄想しております。
それからすっかり書くことを忘れていたのですが、オツウの初年度はモーリスをつけました。かなり前の話になってしまうのですが、僕もつけたことをしばらくの間、聞かされておりませんで、どうしようかと思っているあいだにもう六月、来年には元気な仔がきっと生まれてきてくれることと思います。
さらにもうひとつ、今年の二歳馬、ヘニーヒューズ産駒のカールファターレの15、名前が『マダムジェニファー』に決まりました。名前の由来は昔やっていた番組のキャラクターから引っ張ってきました。イイナヅケの次だからあんな名前やこんな名前と、つけるまでにいろいろと悩んだりもした結果、本当にいろいろ悩んだ結果。こんな名前でいいのではとなりました。ミスエルテやミセスワタナベに続き、なかなか印象に残る名前になったのではないかと思います。現在まだノーザンファームに滞在中ですが、あと1秒坂路のタイムがつまれば入厩へ向けて移動できるようになるはずです。牧場からのコメントではスピードがあると言ってくれているのでダビスタ的に考えると期待してもよさそうです。入厩がいつになるかはわかりませんが、今から楽しみで仕方ありません。
ダービーが終わってひと段落と思う人もいるかもしれませんが、馬主はこの時期が一番忙しいのではないかと思います。馬主一大イベントセレクトセールがありますし、一口馬主の募集も各クラブで始まっているのは言うまでもありません。今年も丸山担オーナーとセリの下見に弾丸北海道旅行に行くことになりました。名古屋のあとには大阪の親戚と一緒に甲冑サバゲーなるものを体験してくる予定です。プロソフトクリーマーの森川さんのダービー優勝記念飲み会、今年もやるぞ身内POG大会の収録など、やらねばならないことが沢山あったりなかったり。我ながらネタ満載で楽しい毎日を送っているなと思います。なんというか忙しい。
おそらく次の更新は明日の笠松遠征の様子を書くことになります。なるべく時間があかないようにと思ってはおりますが、更新遅くなっても怒らんといてください。今回の旅行ではきしめんをいただこうかと思っております。
了
プロフィール
大和屋 暁 - Akatsuki Yamatoya
脚本家・作詞家・ライター。若くして一口馬主に出資を始め、クラブ馬主歴2年目にハーツクライと運命的な出会いを果たすと、有馬記念、ドバイシーマクラシックを制す大活躍。しかし、ノド鳴りによるアクシデントに見まわれ、突如として引退したことに一念発起、馬主になる決心を固めた。個人馬主としては、初めてデビューを果たした所有馬ジャスタウェイが大活躍の強運ぶりを発揮。遂には、目標であったドバイ遠征を実現させ、ドバイデューティーフリー(現在のドバイターフ)を圧勝。「自らの馬でドバイを勝つという」夢を実現させたばかりでなく、そのパフォーマンスが評価され、2014年度のワールドベストレースホースランキングでは、日本馬史上初の1位を獲得している。
現在の現役所有馬はカリボール、マジカルステージ、ジャスコ、キングロコマイカイ。一口馬主や共有馬ではアウィルアウェイ、ルーツドール、イストワールファムなどに出資している。
本業ではアニメ版「銀魂」、「スーパー戦隊シリーズ」などの脚本を手がけ、2020年公開の映画「デジモンアドベンチャー」も担当。愛馬との数年間に及ぶ足跡を綿密に綴った『ジャスタウェイな本』などの執筆も手がけた。