平林雅芳の目

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いつもいつも馬券のオッズの事ばかり言ってしまうが、ダービーが近づくにつれてディープスカイの単勝オッズだけが、どんどんと下がって行く。
3・5倍の瞬間もあったぐらいに、ファンの期待が一身に集まっているのが判る。
そして、12万も入ったスタンドが固唾を呑む今年のダービーのゲートが開いた。

最初のカーブを過ぎて2コーナーへ向かうあたりで、内目の好位グループがやや窮屈になるシーンがあったが、それ以外はおおむねすんなりした競馬となった。
アグネススターチが大逃げを打つと思われたいたが、レッツゴーキリシマが先手を主張して、アグネスは2番手。
押していったスマイルジャックが折り合っての3番手、レインボーペガサスが4番手ぐらいに位置づけして、淡々とペースは流れる。

モンテクリスエスの後ろで、行き場が狭くなり、やや馬がつっかえ気味になったブラックシェルだが、その後はまずまず折り合っている。
しかし、武豊Jが描いていた最内の1頭分だけ青々としたベストルートは、モンテがいるだけに通れず、その外めに出して進む。
その後方では、さらに馬を下げて前の馬との差を開けた四位Jディープスカイが淡々と進んでいた。

殆ど動きのないまま直線入り口へ進み、3番手のスマイルジャックがスルスルと先頭に踊り出た。
その後ろではマイネルチャールズレインボーペガサスが追いかけるが、前との差が詰まらない。
馬場の真ん中に出して、さらに馬首を外に向けたディープスカイが、四位Jの最初は右ムチそして持ち替えた左ムチに呼応して、伸びが1頭だけ違う感じでグイグイと伸びる。
あっという間にスマイルジャックとの差を詰めて、逆に1馬身以上の差を開けていた。

鞍上の四位Jは、相手を見ずに一心不乱に下を向いて追って、ゴール過ぎてからふと後ろを振り向き「ああ、勝ったのだ」と思ったようなシーンであった。
これは後日是非聞いてみたいものである。
ガッツポーズもだいぶ過ぎてから出たものであり、おおむね昨年と同じようでいて同じはなかったようだ。
3着にはスマイルジャックレインボーペガサスの間を、ブラックシェルが何とか3着に出てきたといった感じであった。

実に冷静に、クールにディープスカイを導いた四位J。
前回NHKマイルCは、内が悪くないとみて、進路を切り替えてのあの楽勝劇。
今回は内を狙わず外に出して、と本当に馬を信じきっての王道競馬っぷりであった。
この中間に四位Jに「どこが違う?」と聞いたことがあるが、その答えが

「伸ちゃん(藤田J)からも豊さんからも『硬くないか?』と聞かれたことがあるけど、僕が乗ったこの2回は全然そんなことがなく、本当にいい感じなんですよ」

と、武豊Jが乗った頃とは、馬が全然別な馬になってきているのだろう、とは思っていたが、前走NHKマイルC以上の強いパフォーマンスが出来るとは本当に脱帽でした。

今回も前走の着差と同じような差をブラックシェルがつけられたのも、現時点での力量差でしょう。
そして3番手からの正攻法の競馬で、一瞬は先頭と夢を見た思いのスマイルジャック
でも小牧Jも、桜花賞といいダービーといい、今年は今までの鬱憤を晴らすような仕事ぶりで、何かメリハリが出たような吹っ切れたような競馬っぷりですね。
いろんな意味で、この春をそのまま表わしているような、今年の総決算のダービーではありました。
でも清々しい競馬を観させてもらった感じでありまして、僕も素直に四位Jに『おめでとう』の言葉と共に、握手もしておきました。