三冠牝馬の新たなる伝説が幕を開けた…平松さとしのジャパンCレポート

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11月25日、快晴の東京競馬場で第32回ジャパンCは行なわれた。
なんと言っても最大の注目を集めたのは凱旋門賞の再戦。すなわち凱旋門賞馬ソレミアをホームに迎えたオルフェーヴルがどのような戦いをみせてくれるのか?という点だった。
凱旋門賞では思わぬ差し返しを喰らったものの、負けて強しという内容をみせたオルフェーヴルを、日本のファンは1番人気に支持した。地元・日本でやる限り負けないだろうという思いと願いが単勝2・0倍というオッズにみてとれた。

宝塚記念以来、レースでの手綱をとる池添謙一。少し緊張した面持ちで日本最強馬の鞍上に跨ると、馬場へと向かっていった。
オルフェーヴルの日本での復帰戦以外にも、注目される要素は揃っていた。
凱旋門賞馬ソレミアの参戦で、奇しくも凱旋門賞の1、2着がホームとアウェーを逆にして再戦することになった。
また、3歳牝馬ジェンティルドンナの参戦は、史上初の牡牝の三冠馬対決を実現することになった。
大外17番枠にオルフェーヴルが収まり、世紀の一戦のゲートが開いた。

2番人気のルーラーシップがまたしてもアオるように出遅れた。対照的に最内枠からハナを切ったのはビートブラック。ジェンティルドンナも先行策に出る。15番という外枠にも関わらず、最初のコーナーではすでにインをとっての3番手。その直後に凱旋門賞馬ソレミア、ダービー2着のフェノーメノが続き、オルフェーヴルは中団のやや後ろという隊列となった。
勝負どころでまず動いたのはビートブラック。春の天皇賞を勝った時のように2番手との差を一気に広げて直線コースに向いた。
オルフェーヴルはそれをみて自ら進出。4コーナーを回る時には既にビートブラック以外の馬は全て呑み込むように上がってきた。
ラスト500メートル。後は逃げるビートブラックをどこで捉まえるか?という態勢にみえたその時、しかし、1頭だけ、内で息を潜めて勝機を待っていた馬がいた。

ジェンティルドンナだ。

内にササりながら、それでもビートブラックも完全に射程圏に入れたオルフェーヴル。しかし、すぐ横にジェンティルドンナが並びかけてきた。
ラスト200メートルで馬体のぶつかった両馬。その時、攻守が逆転した。ぶつかって怯んだのは、牡馬のオルフェーヴルの方だったのだ。3歳牝馬のジェンティルドンナは強かに、内をこじあけて伸びてみせた。
最後の200メートルは文字通り雌雄を決する叩き合いとなった。結果、勝利したのはジェンティルドンナ。ハナ差の2着がオルフェーヴルで、3着のルーラーシップは上位2頭から2馬身半、離されてゴールラインに辿りついた。外国勢で最先着したのは8着のレッドカドー。ソレミアは13着に沈んだ。

「最後にぶつかってしまったのは僕のミス。それでもオルフェーヴルという怪物を、ジェンティルドンナが破ったのは事実。彼女は素晴らしい馬です」
2年連続でジャパンC勝利騎手となった岩田康誠はそう語った。

「今後は海外遠征も視野に入れたい。それほど素晴らしい馬であることを、今日、証明できたと思う」
管理する石坂正調教師はそう言った。

三冠牝馬の新たなる伝説が幕を開けた。

(文中敬称略)

平松さとし
ターフライター。1965年2月生まれ。
昭和63年に競馬専門紙「ケイシュウNEWS」に就職。その後、2紙経た後、フリーランスに。現在は雑誌や新聞の他にテレビの台本書きや出演、各種イベントの演出などを行う。