週末の海外競馬はみどころ一杯[和田栄司コラム]

25日、英ドンカスター競馬場で行なわれた2歳馬によるG1レーシングポストトロフィーで2014年の英国競馬は終了した。アンドレア・アツィーニ騎乗のエルムパーク(牡2歳/父フィーニクスリーチ)が前々から2ハロン後に先頭に立ち、ゴールでは2馬身4分の3後続を振り切って優勝した。デビュー戦こそ3着に敗れたものの、前走G2ロックフェルSを含む目下4連勝中である。

英国競馬が終了して来月早々に発表される年度代表馬の選考が気にかかる。G1の数だけなら、愛2000ギニー/セントジェームズパレスS/サセックスS/ジャックルマロワ賞を勝った既に引退を発表したキングマン(牡3歳/父インヴィンシブルスピリット)だが、こちらも追うように引退を発表した英愛ダービーにインターナショナルSを勝ったG1・3勝馬オーストラリア(牡3歳/父ガリレオ)の存在も忘れてはならない。

古馬では先のチャンピオンSでフランケルの全弟ノーブルミッション(牡5歳/父ガリレオ)が3つ目のG1を勝ったが、これら3歳馬2頭に比べると影が薄い存在である。年度代表馬と最優秀3歳馬争い、どちらが選ばれるにせよ片方は歴史の中で忘れさられる運命にある。勝負ごとの厳しさに打ち勝つには、種牡馬で活躍するしか道は残されていない。カルティエ賞の発表が気にかかる時期になって来た。

ハロウィーンの31日、米ロサンジェルスのサンタアニタパーク競馬場ではワールドサラブレッドチャンピオンシップ~ブリーダーズカップ2014が開幕する。11月1日との2日間で行なわれるG1レースは13、その内訳は金曜日4レース、土曜日9レースが組まれることになっている。

金曜日のG1は、ジュヴェナイルフィリーズターフとジュヴェナイルターフの2歳戦、他古馬のダートマイルと牝馬によるディスタフが組まれ、土曜日は、ジュヴェナイルフィリーズとジュヴェナイルの2歳戦、牝馬によるフィリー&メアスプリントとフィリー&メアターフ、恒例の各カテゴリーのナンバー1を決めるスプリント、マイル、ターフ、クラシックは目が離せない。

一方、豪州メルボルン春のカーニバルは、コーフィールド競馬場、ムーニーヴァレー競馬場を経て今週から最後の舞台フレミントン競馬場に移動する。優勝賞金180万豪ドルのG1コックスプレート(芝2040m)は、ライアン・ムーア騎乗の愛バリードイルが送り出したアデレード(牡3歳/父ガリレオ)が最後方からレースを進め、直線先頭に立った人気のフォークナーを50m残して捕え優勝した。

アデレードは夏の米シカゴでセクレタリアトSを勝っており、これが2つ目のG1勝利、通算成績は8戦4勝、2着3回、3着1回と底を見せていない。それにしても見事なムーア騎手の手綱捌きだった。バックストレッチから動いて中団に押し上げ、直線200mを考えて3コーナーから4コーナーにかけて外から捲り、4コーナーで前団に取り付き、切れ味鋭く差し切った。

馬齢重量戦で3歳馬のアデレードは56キロ、対して7歳セン馬のフォークナーは59キロと3キロの斤量差があった。直線アデレードの内からフォークナーを強襲して写真判定に持ち込んだ6歳牝馬のサイレントウィナーは、57キロだったが短頭差で3着、その後ろは英国から遠征した昨年のG1マッキノンS勝馬サイドグランスがクビ差で4着、大激戦のゴール前となった。

今週からメルボルン春のカーニバルはフレミントン競馬場に舞台を移して熱戦を繰り広げる。そして1週後の4日は、11月の第1火曜日、メルボルンカップデー、国民の祝日になる。フルゲート24頭に1週前の現時点で40頭が登録、その中には18日のG1コーフィールドカップを勝ったアドマイヤラクティが名を連ねている。アドマイヤラクティはメルボルンカップで1番人気が予想される。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。