充実のラブリーデイ、天皇賞も完勝!!着差以上の楽勝だ!

ラブリーデイ

15年11月1日(日)4回東京9日目11R 第152回天皇賞(秋)(G1)(芝2000m)

ラブリーデイ
(牡5、栗東・池江厩舎)
父:キングカメハメハ
母:ポップコーンジャズ
母父:ダンスインザダーク

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直線のラスト1ハロン。まだエイシンヒカリを交していないラブリーデイの鞍上の浜中J。横をチラっと見る。その瞬間にラブリーデイの勝利を確信した。この時点でまだ追ってもいないのに、後続の勢いを見る余裕。それ程までに手応え、感触が残っているのだ。
クラレントが逃げエイシンヒカリが2番手とやや予測外の展開だったが、その3、4番手のインを追走するラブリーデイ。外を追走する馬が掛かっている流れでの内で折り合う姿。今年になって完成の域に達したラブリーデイ。ゴール前はステファノスイスラボニータショウナンパンドラが猛追して来たが、半馬身差以上のものを感じるゴール前であった…。


どんどんと人が埋まって来るのが見て判る。さすがに1角あたりの府中本町駅口の入り口の方にはまだ隙間があるが、それでも関西圏とは違う、大都会の凄さを感じるものだった。
いつもお邪魔させて貰っているスペースも、お馴染みの報道関係者らが集ってきた。そして恒例の手拍子。10万人近い人が見つめる秋の天皇賞だ。
パドックを早めに切り上げて、返し馬を待つ。誰よりも先に入って来たエイシンヒカリ。パドックの前半は落ち着いていたのに、今見る姿は前回よりも手こずらせている。馬場の内側からダートを横切って本馬場に入って行くのだが、相当に入れ込んでいる。ラチの端っこに尻をぶつけてもいた。何とか入れて返し馬に去って行ったが、走りだしたら大人しく去って行った。気負いが出過ぎていて、嫌な予感がする。

続々と本馬場入場して、2コーナーあたりまでキャンターで行く各馬達。エイシンヒカリはもうゲート奥のポケットで落ち着かせているのだろう、姿はゲート入りするまで観れなかった。
スンナリと大人しくゲート入りする各馬。そしてゲートオープン。エイシンヒカリの姿を一番前で観るはずであった。ところが、数頭が横並びになっている先頭グループの馬に重なって見えない。そのうちに内から赤い帽子に赤系の勝負服が前に出た。クラレントだ!そしてエイシンヒカリも姿を現したが、前に出る勢いでない。スンナリと2番手に納まった様子だ。最初の1ハロンを急がせていく鞍上ではないのは百も承知している。いわゆる馬任せなのである。ラブリーデイが内の3番手に納まり、カレンミロティックが来て4番手にいるのが見える。

淡々と流れる。3角手前で1000m通過を大画面で確認する。ほぼ1分ぐらいだ。やはり予測された遅い流れだ。ヴァンセンヌがかなり掛かっているのが判る。3角から4角の間に、外を掛かって前へと行く馬が2,3頭いた。馬群の中でアンビシャスもかなりの勢いになっているのが見える。4角手前で後続がどっと差を詰めて、隙間がないぐらいになっている。そしてこちらへ姿を現す。どうしてもエイシンヒカリを中心に見る。その手応えは悪くない。逃げているクラレントに並びかける様に少しだけ出てくる。しかしその後ろにいたラブリーデイが嫌でも見える。そしてエイシンヒカリの外へと出してくる。
クラレントを交したかの様に見えたエイシンヒカリ。実際には一度も交していないのだと思う。そんな内を見ずに、浜中Jは外へ視線をやる。《ああ、手応えがいいんだ…。これは敵わない!》と思った瞬間である。少し行ってから追い出した浜中Jのラブリーデイ。一気に差を離したラブリーデイ。楽勝と思っていたが、さすがに後続も強者。イスラボニータにステファノスが、そしてショウナンパンドラも怒涛の脚を使って寄せて行った。

クラレントにも先着を許したエイシンヒカリ。最後は馬群に飲まれそうになってゴールしていた。上がってきた武豊Jに坂口師が『ハナに行かないと固くなるだろう?』と訊くが、『いや~そんな事はありませんよ。折り合ってもいましたが、最後は伸びなかったですね~』と言う。形ではなく距離なんだろうかと思いながら、PVを見に行く。
最初のカーブに入るあたりで菱田Jの進路の取り方で、後ろのジョッキー達にだいぶ迷惑があった様だ。特にダコールは危ない瞬間だった。大きなレースでこの乗り方はないなと素人でも判る現象だ。
それにしてもラブリーデイの充実ぶりだ。パドックで見ていても馬体の重厚さが違う。エイシンヒカリの前を歩いているのだが動じない気持ち、内に秘める闘志。さすがに今年、重賞をG1を獲り続ける馬の感じが判る。お客さんの1番人気支持も当然の雰囲気である。

重賞ウイナーが全頭の豪華な顔ぶれ。だがG1で戦ってきている馬の凄さをも感じたレースであった。エイシンヒカリは今回が初めての体験。これからだろう。ステファノスの好走も、戦歴を見れば当然なのかも知れない。そしてサトノクラウン。やはりダービー以来の実戦となるのは厳しいもの。ここらもまた、いつもの事ながら勉強させられる事実であろう。
それにしても池江厩舎。《金子真人オーナーは凄いな~》と感嘆の言葉しか出ない、そんな瞬間でした。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。