伏兵のロジクライ ジュエラーの鬼脚を退けて戴冠!

ロジクライ

16年1月10日(日)1回京都3日目11R 第50回シンザン記念(G3)(芝外1600m)

ロジクライ
(牡3、栗東・須貝厩舎)
父:ハーツクライ
母:ドリームモーメント
母父:Machiavellian

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1番人気のピースマインドの逃げから始まった今年のシンザン記念だったが、勝ったのは好位の4番手、インで脚をためていたロジクライだった。途中から先手を奪ったシゲルノコギリザメが抜け出して「勝ったか!」と思えた直線1ハロン。そこをゴールに入る少し前で交わしたロジクライ。大外からのジュエラーの怒涛の寄せもしのぎ切っての勝利。
鞍上の浜中Jは、この6年間で4回目のシンザン記念の優勝。相性が抜群にいいレースであるのは間違いない。

パドックで馬を見渡しても、何かヒラメかない。リオンディーズの時はその風格に圧倒されたものだが、今日はさすがにそんなオーラを出す様な馬は見当たらない。ラルクと同じ牝馬のジュエラーは、堂々たる馬体で数字が10キロとさらに増えている。ラルクは少し腹目が上がった感じで、少しいらつく感じも見受けられる。関東からの刺客、アストラエンブレムは、独特の毛の刈り方だ。関西ではあまり見かけないもの。悪くはないが…の印象だ。ピースマインドが1番人気は、デビュー戦でそのリオンディーズの2着馬だし、前走中京戦が楽勝の逃げ切り劇。マイルになるが、その戦歴が買われたものなのであろう。


ゲートが開いた瞬間には、ファインニードルがポンと出た。ピースマインドも悪くない。内からメイショウシャチキングライオンがダッシュがついて前に出てくる。外からシゲルノコギリザメも出てきた。1ハロンでは4頭が横並びとなる。その後でキングライオンとピースマインドが前に出る。2ハロンを過ぎたあたりで、今度はピースマインドが先手となっていく。3ハロンを通過するぐらいで、外のシゲルノコギリザメが前に出て離していった。みるみるうちに4馬身ぐらいの差がつく。ピースマインドが2番手、ファインニードルが3番手で、ロジクライが4番手に上がってきていた。ここらで《行く馬がいないものな。1200を主体に使っている馬だし、この馬の先手はよく判るな~》と思う程度だった。

ところで、ここでゲート入りの事を書かねばなるまい。一番先にラルクが入っていた様に記憶する。確かデビュー戦でゲート入りがあまり良くなかったはずだ。それで今日は奇数枠でも、いの一番に入っていた。そしてゲートオープン。イメージとしてはポンとデビュー戦の様に出て、後は好位でじっとしているのだろうと描いていた。ところが肝心の出が芳しくなかった様だ。PVで見ると、出た瞬間にまっすぐに出れていない様子。内へもたれる感じで出て、モタっとしてしまった。その時に内側が狭くなって、ジュエラーも位置が後ろ目になったのかも知れない。何せ、牝馬の2頭の出が芳しくなかったのは確か。ラルクはその後でも左右の馬の間で頭を上げる始末。およそ考えられるスタート直後のポイントとしては、最悪に近いものだろう…。

…さて流れに戻ろう。坂の下りを離して逃げるシゲルノコギリサメ。2番手グループがだいぶ固まったきていた。3列目の最内にはロジクライ。その列の外の真ん中ぐらいにアストラエンブレムも馬群の中を順位を上げてきていた。ラルクとジュエラーは後方のままであるが、ラルクが少し外目に進路を取っているのに、ジュエラーはまた内目に入って行っていた。脚がないのかと思えた瞬間でもあった。

そして4角に入っていく。内を通る馬と外へ廻る馬群との差がけっこう差が開いた。シゲルノコギリサメは当然に内ラチ沿い。ピースマインドの間が空いた処へ、後ろのロジクライがすっと入って、前との差を一気に詰める。馬場の真ん中をアストラエンブレムが伸びてきている。ラルクはと見るが、前との差がなかなか詰まらない、と言うか外の馬の勢いに自分の進路が狭くなっていく。むしろ内を廻ってきていたジェエラーが、外へ出してラルクのすぐ横をすり抜けて行く。そして前を追っていく。その勢いや、1頭だけ違うエンジンをつけているかの様である。前の内では、逃げるシゲルノコギリサメを交わすロジクライ。しかしシゲルノコギリサメもなかなかバテない。アストラルエンブレムがジワジワと伸びている間に、外からジュエラーが一気に加速してゴール前で襲いかかってきた。

しかしロジクライが先に入ったのは見えていた。ジュエラーがクビ差の2着。シゲルノコギリサメがクビ差の3着で、アストラエンブレムをハナ差凌いでいた。
1番人気のピースマインドは、直線で失速して14着。ラルクがその前の着順であった。前半の3ハロンが34.8。ここはまず普通の入りだろうが、1000mが58.1のやや速い流れである。だがそれは逃げたシゲルノコギリサメのペースである。ピースマインドが2番手で失速する理由が判らない。ラルクは馬の中で気を遣ったのか、まったくの内容となった。ここらがデビュー1戦だけでは判らない処でもある。

ロジクライは、前走時はやや腹目がもっこりしていたのを記憶している。稽古では動くが実戦では、と思ってしまった。今回も僚馬のショウナンアヴィドと併せて相手の方が良かった様だが、でも50.4や50.5でのタイムだから、稽古は凄く動く馬と言える。道中、内々の好位でレースを進めて脚をためられた分での直線での伸び。そう言ってしまえばどの馬でもそれが出来るはず。だがそこをサラリとやってのけるのだから、持っている馬なのだろう。そして2着のジュエラー。印象としてはこちらが凄かった。あの4角の位置、まるで昨年の皐月賞のドウラメンテみたいな脚であった。牝馬でまた凄いのが出てきたぞ!と言う印象でありました。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。