ゴール前一閃!秋の電撃戦を制した異色の二刀流ホース・レッドファルクス!

レッドファルクス

●10月2日(日) 4回中山8日目11R 第50回スプリンターズS(G1)(芝1200m)

春の王者ビッグアーサーが1.8倍の1番人気に支持され、一強ムードの様相が漂った今年のスプリンターズS。各ステップレースを振り返れば、最大の前哨戦であるセントウルS(G2)こそビッグアーサーが制したものの、夏の2重賞は3歳牝馬が制し、CBC賞(G3)はダートから転じてきた5歳馬が重賞初制覇。例年、顔ぶれが代わり映えしなかった感のあるスプリント路線だが、今年は新陳代謝が進んだ中で行われた秋の電撃6Fを鮮やかに制したのは、CBC賞勝ち馬レッドファルクス(牡5、美浦・尾関厩舎)だった。

レースはビッグアーサーが好位に控え、ミッキーアイルがペースを握る格好に。ポジション争いが平穏だった故に前半3F通過は33.4秒の先行勢有利な流れ。末脚が武器のレッドファルクスにとっては、決して理想的なペースではなかっただろう。尾関知人調教師も「気持ち速いのかと思った」と本音をこぼしたが、そこは百戦錬磨の鞍上ミルコ・デムーロだ。序盤からペースを察知して中団につけると、早目早目のスパート。直線半ばまではジワジワといった伸びだったが、坂を登りきると、矢のような伸び。ゴール寸前でミッキーアイルをとらえると、デムーロ騎手も言葉にならないような咆哮と共にガッツポーズを決めた。

「スタートがそんなに速くない馬だけど、ゲートを出てくれて、3コーナーでもいいポジション。ズブい馬なので、早目にいったほうがいいと思っていた」と鞍上。「最近(G1を)、あんまり勝ってなかったから」と口にしたように、フラストレーションも溜まっていたのだろう。桜花賞以来となるG1の勝利の美酒に酔いしれた。

尾関知人調教師はこれが開業8年目にしてのG1初制覇。「さすがに力が入りましたね。G1を勝つ馬をやらせていただけたことに……これまでの色々な経験を思い出して……」と、思わず言葉を詰まらせ、むせび泣く。

レッドファルクスは左トモに疲れが溜まりやすい体質で、左回りばかりを狙ったレース選択をしてきたため、通算18戦中右回りは3戦目というサウスポーだった。準オープンを連勝した辺りから強い調教にも耐えられるようになり、着実に地力をつけてきたものの、ちょうど1年前の当時はダートの1400m戦を制していたことを思えば、この1年の出世街道は誰が想像出来たことだろう。「右回りがどうかな、とも思っていたのですが、常識の枠を超えた馬ですね」と師が語れば、ジョッキーも「初めて乗った時はここまで成長するとは思いませんでした」と評するのも無理はない。

これで、芝で4勝、ダートで4勝のキャリアとなったが、コンビ成績は芝で3戦3勝と好相性のデムーロ騎手も「ダートの走りも合いそう」と語るように砂路線での可能性もまだまだ秘めているよう。国内のスプリントG1は来春までおあずけだが、芝の香港スプリント、ダートの重賞など、考えられるローテーションは枚挙に暇がないだろう。

「CBC賞を勝った時には、来年の高松宮記念を勝たせてあげなくて、と思ったものですが、それよりも先にG1を勝てるとは……。G1を勝つまでの馬だとわからなかったことに、馬に謝りたい思いですし、今後はチャンピオンとして恥ずかしくない競馬をさせてあげたいです。それこそ、二刀流といいますか、選択肢を見極めていきたいです」とトレーナー。

近年屈指といえるバラエティに富んだ秋のスプリント王決定戦を制するにふさわしい異色のキャリアを持った芦毛の5歳馬。今をときめく球界の大選手同様、今後も常識の枠に留まらない活躍をみせてくれることだろう。

レッドファルクス

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プレゼンターを務めた女優でUMAJOイメージキャラクターの清野菜名さんと