女王健在!ソウルスターリングがオークスを快勝!!【平林雅芳の目】

ソウルスターリング

●5月21日(日) 2回東京10日目11R 第78回 優駿牝馬(G1)(芝2400m)

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馬場が好転して、外の差しは日曜9Rのゼウスバローズ1頭だけと、内ラチ有利の流れが続く。 好発からすっと3番手を進むソウルスターリングが、4角を廻る時には前の馬のすぐ横に出して、後ろからの馬の進出で蓋をされるのを防ぐ様に外へ出して行く。直線半ばでは一旦、内からモズカッチャンに出られたシーンもあったかも知れないが、それでも脚勢は見劣るものでなく、ステッキを入れて追い出したルメールに呼応して、グイグイと最後には2馬身近くも離しての完勝とした。
母スタセリタでフランス・オークスを勝ったルメールには、その子供で日本のオークスを勝つ縁の深い勝利であった。

今日も暑い一日となった。パドックで馬を見るには、直射日光をモロに受けて汗だらけ。何とかうまく立ち回って影から見ていた。だが、どう見てもリスグラシューは脚の長さが目立つほどに、腹めがあがっている。それに反してモズカッチャン、ソウルスターリング、そしてアドマイヤミヤビの堂々たる馬体である。ソウルスターリングが、若干だけ汗のかき様が多いが、落ち着きがある。パドックを早々に切り上げての返し馬の見学とした。

馬場に入って右に来る馬は、僅か3頭ばかり。ほとんどの馬が、そのまま4コーナーの方へといきなりキャンターで去って行く。馬をジックリとは見させてくれない。 そして輪乗りが始まるスタンド前のゲート後ろだが、スタンドからの歓声でも動じない馬が多い。続々とゲートインして、もうすぐ切られる少し前にリスグラシューがゲート内でモジモジとしだして、体勢を悪くする。
案の定、上へと飛び上がる様なゲートの出で、いきなりハンデを背負う。それでも内へともっていく武豊J。さすがに内ラチ沿いまでは持っていかない。ソウルスターリングはいいスタート。すっとフローレスマジックが先手を主張して行く。レーヌミノルは、好位どころかだいぶ前に馬を置く格好になっている。ソウルスターリングは、絶好の3番手のラチ沿い。その少し後ろをモズカッチャンが続く。やはり内枠は俄然有利である。アドマイヤミヤビは馬群の中団。そこら辺にリスグラシューもいた。

実はモズカッチャンに注目していた。トライアルのあのインから抜け出てくる脚が印象的。今回も最高の枠順を引いて脚を温存すれば、頭まであるのではないかと見ていた。実際、インの経済コースで無理なく行けている。何もしなくとも、この内を行けるハンデはかなりの優位であると見受ける。当然にその少し前にいるソウルスターリングは、これ以上ないポジションであろう。

淡々とレースは流れて、気がつけば最後のコーナーまで何も変化なく来ている。ルメールが早めに前に出て、最後のカーブはほぼ先頭気味で廻る。その開いた内を狙うモズカッチャン。そして馬場のいいところを選ぶ様にソウルスターリングを導くルメール。
ラスト400が過ぎても、まだそう追ってはいなかっただろう。内からモズカッチャンがグイグイと伸びだして前に出たかの、ラスト1ハロン。ここらからルメールは右ステッキを入れてゴーサインを出した。
一気に加速していくソウルスターリング。最後の3ハロンが11.3~11.2で最後が11.6と、後塵を浴びる馬達にはつけ入る隙を与えない。逆にモズカッチャンを離して行くゴール前。ディアドラが伸びて3着かと思うところへ、アドマイヤミヤビがキッチリと差して交わしたところがゴールだった。

リスグラシューはその後ろの5着、直線半ばで一旦追い出していた手綱を止めるシーンがあった。そこらで左右から挟まれたか、狭くなったのだろう。この時間帯でのそんな現象は致命傷でもある。スタートと直線半ばでと、二度ものアクシデントのリスグラシュー。馬体も淋しく見せていた。桜花賞の1,2着馬は、距離や自身の悪い部分がモロに出た感じでの結果。勝ったソウルスターリングも2着のモズカッチャンも、力のかぎりを最高に出したものである。
アドマイヤミヤビも、あの外枠から良く突っ込んできた。ディアドラは内々で脚を貯めて最後こそアドマイヤミヤビに差されたはしたが、3着かの勢いまであったのだから、やりとげた感はあろう。

火曜朝、坂路からスタートしたが、角馬場にはダービー出走馬ゼッケンを着けた馬が朝から周回する。音無厩舎の3頭、池江厩舎の4頭と元気一杯である。水曜朝の調教を打ち合わせなどをした後に、スタンドへと向かう。
札幌でトレーニングセールがあるせいか、調教師室はかなりまばら。ふと外の席を見ると鮫島調教師が座っていた。傍にお邪魔して、聞きたいと思っていたことを口にする。《一旦は前に出ましたか?》である。師は『ほんの一瞬だけど、前に出ましたね。だが向こうは手前を替えて、そこからビューンと伸びて行きました』と述懐してくれた。そして『強い相手に強い競馬をされて負けたんだし、良く走ってくれましたよ…』と清々しい顔で語ってくれた。

桜花賞の1番人気、いや2歳女王は、その持てる力を発揮する舞台なら負けないと言うことなのだろう。スタートセンスが良く、すぐに好位置につけていけるだけの操縦性。そして折り合い面でも心配のない性格であり、機動力なのであろう。おそらく良馬場でなら、3歳で一番強い馬なのかも知れない。

かくしてルメールは、G1を2週連続での勝利。この勢いはダービー、安田記念と続くのかも知れない。いやいや、競馬はそんなに甘くはない。ダービーは、もっとも運のある馬が勝つのだから…。でも勢いには適わないか~と、火曜の朝でした…。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。