3日間開催で8勝 デムーロがテン乗りに強いワケ…こちら検量室前派出所(仮)

毎日王冠をリアルスティールで制したミルコ・デムーロ騎手。右はノーザンファーム・吉田勝己代表

毎日王冠をリアルスティールで制したミルコ・デムーロ騎手。右はノーザンファーム吉田勝己代表

東京・京都開幕週の3日間開催も終わり、いよいよ秋のG1シリーズがスタートする中央競馬。毎日王冠(G2)が終わった直後の検量室前は報道陣でごった返しており、G1シリーズに向けて注目度の高さがうかがえた。

豪華メンバーが集結した毎日王冠を制したのがリアルスティール(牡5、栗東・矢作厩舎)。騎乗していたのは今年リーディング2位につけるミルコ・デムーロ騎手だった。毎日王冠が行われた8日は、5R・2歳新馬戦ブラゾンダムール(牡2、栗東・松永幹厩舎)から騎乗機会4連勝を果たすなど、5戦4勝の大活躍を見せた。

鷹巣山特別を勝ったデムーロ騎手とボーダーオブライフ

鷹巣山特別を勝ったデムーロ騎手とボーダーオブライフ

この日2勝目となった9R・鷹巣山特別をテン乗りのボーダーオブライフ(牡3、美浦・金成厩舎)で制したデムーロ騎手が、レース後にこんなことを言っていた。

「過去のレースは全部観ました」

ボーダーオブライフの過去6戦を全てVTRで観て、予習していたらしい。以前ライアン・ムーア騎手などがレース前にVTRを観て研究すると聞いたことがあるが、なるほど、さすがデムーロ。トップクラスの騎手は予習も怠らないんだなぁ…。そんなことを思っていたら、さらにこう続けた。

「前走(500万下1着)は、後方から、前の馬を全部交わしました。この馬はいい末脚がありますし、力があると思いました。だから先行しました」

……最後、一瞬何を言っているのかよく分からなかった。

どうやらボーダーオブライフの前走では、その後ろにつけたスカルバン(5着)に騎乗しており、後方から前を全部交わした姿を目の当たりにしていたとのこと。力があると分かっていたから、強気の積極策を講じたようだ。

ボーダーオブライフは500万での3戦全てで、中団や後方から差す競馬をしているが、未勝利を勝った時は先行策から早め先頭の競馬だった。しっかり過去のVTRを未勝利戦までチェックしていた『予習』が活きた結果だろう。そして、この先行策は簡単に実行できることではない。まして昇級戦。この強気な部分と、力を正確に把握する能力、そして勉強熱心な部分が、毎年リーディング争いに絡む要因ではないか。

テレビ静岡賞を勝ったデムーロ騎手とダノンフェイス

テレビ静岡賞を勝ったデムーロ騎手とダノンフェイス

実際に10R・テレビ静岡賞でも初騎乗だったダノンフェイス(牡4、栗東・大久龍厩舎)を見事1着に導き、毎日王冠のリアルスティールも乗り替わりだった。この3日間開催はテン乗りで9戦4勝(6連対)。検量室前パトロール隊員は、彼のテン乗りにこれから注意しなければいけないと肝に銘じた次第である。

さて、このレースを勝ったボーダーオブライフはまだ3歳。レース上がり3F33.3秒の流れを、自身の上がり3F32.9秒という強烈な末脚で制した。レース後、管理する金成調教師が馬の状態を確認したところ、「すでに息が入っていた」とのこと。デムーロ騎手も「まだまだ余裕がありました」と話していた。昇級初戦でこの内容。末恐ろしさを感じる。この馬には、ヴィクトリアマイル(G1)を勝った半姉エイジアンウインズを超えるような活躍を期待したい。