蛇行Vで調教再審査になった美浦の大器が秘める将来性…こちら検量室前派出所(仮)

サトノティターン

ハイレベルの1000万下で4着に入ったサトノティターン

久々に晴天に恵まれた11月4日(土)の東京競馬場。暖かく陽気な天気の影響で、うどんを食べたら逆に汗だくになってしまった検量室前パトロール隊員。「こいつ、いつもうどん食べてるな……」と思われる読者の皆さんもいるだろうが、本当にいつもうどんばかり食べている。体の半分がうどん、もう半分が甘いもので構成されているくらいの偏食から、あと10年後には通院生活が待っていると容易に推測できる。

そんな話はどうでもいいとして、『このレースはレベルが高い』と戦前から話題になっていたレースが行われた。メインの京王杯2歳S(G2)……ではない。東京12R・3歳上1000万下(ダート2100m)のことだ。

1番人気は前走、東京ダート2100mの勝ち時計としては歴代9位、GⅠ並みの好時計で500万下を圧勝したマイネルクラース。安定感があり、前走好時計で現級2着だったネイビーブルーが2番人気。昇級初戦も500万下を圧勝してきた素質馬マジカルスペルが4番人気に推された。

これだけでも強力メンバーだが、ここに前走、6月の500万下で直線で盛大に蛇行しながら勝った2戦2勝のサトノティターン(牡4、美浦・堀厩舎)までいるのだから、メンバーは優に準オープン級とも言える。

そんな豪華メンバーが揃った一戦を制したのは3番人気のストライクイーグル。現級で2着はあるものの、昇級初戦だった同馬。残り200mでまだ先頭と5馬身近い差があったが、「強かった!楽な競馬でした!」とレース後に笑顔で語ったM.デムーロ騎手の右ムチに反応すると鋭く伸びて快勝。昇級してもいきなり勝ち負けできそうだ。

2着ネイビーブルーの武豊騎手は「やりたいレースができたし、完璧だった」と、これで差し切られたら仕方ないという納得顔。3着マジカルスペルに騎乗したC.ルメール騎手も「止まっていないのですが……。しょうがないです」と勝ち馬に白旗を揚げていた。

さて、納得とも悔しそうとも取れる表情で検量室出口にやってきたのが、4着だったサトノティターンに騎乗した石橋脩騎手だ。「とにかく力は凄いですし、乗り味も本当にいいんです!」と切り出した後、慎重に言葉を選ぶ。「デビュー戦も、前走の2戦目も、直線で癖を出してしまって調教再審査になってしまいました。ステッキなどに対して敏感な馬で、今日は慎重に乗りました。ガンガン追っていたらもっと良い着順だったかもしれませんが、また蛇行していたと思います」。そう話してくれたところに、調整ルームに引き上げようとしていた内田博幸騎手がやってきた。

「ああいう(直線で蛇行する)馬は、慎重に乗らないとダメなんだよね。ガンガン追ったら勝てていたかもしれないけど、蛇行してまた再審査になったら終わり。難しいね。教えていくしかない。馬は生き物だから」という内田博騎手の意見に、石橋脩騎手も深く頷いていた。

競馬の難しい点は、生き物相手のスポーツという点だろう。馬と意思疎通を図り、呼吸を合わせないといけないのが競馬。馬に競馬を教えていく作業は地道で困難なもので、ジョッキーはそこに結果も求められる。改めて競馬の難しさ、そしてジョッキーの大変さを感じる一幕だった。

そんなサトノティターンについて、石橋脩騎手は最後にこう語った。「砂を被っても我慢できていましたし、プレッシャーを受ける競馬もしてみたかったのですが、それもできました。レースの中身は良くなっています。まだ緩いですし、遊んで競馬していますが、本当にいい馬なんです。オープン馬みたいで、このクラスにいる馬ではありません」。

ティターンとは、ギリシア神話に登場する巨人族の神のことだが、いずれレースを覚えて、体が完成された時、どこまでの活躍を見せるのか。今回フルパワーを発揮していないにも関わらず、強力メンバーの中4着。将来が今から楽しみでならない。

最後に、8着に終わったマイネルクラースについて触れておこう。柴田大知騎手は、敗因について「ゲートは元々出ない馬で…あれでも未勝利を勝った時の出遅れよりはまだいいほう。今日はメンバーも強かったですし、有力馬が前に行って、かつスローペースになってしまったのが良くなかったです」と悔しそうに唇を噛んだ。「この馬は脚を溜めないと爆発力に繋がらないのですが、今日のような展開だと早めに動くしかないですし、エンジンがハマるまで時間が掛かる馬。このクラスで勉強です」と続けた柴田大騎手。強いメンバー相手に戦った経験を糧に、更なる高みに行くことだろう。